第281話 合流
翌朝——
目を開けると、目の前にまん丸のお尻があった。
どうやら私の顔の上で休んでるらしい。
実体がないとはいえ、こころなしか息苦しい気がする。
「まん丸……」
『ん~、起きた~?』
のんきな声だ。
『おまえもやろ』
ミントが突っ込むと、まん丸が私の顔からふわふわっと飛んでどいてくれた。
「おはよ~」
『おはようございます。ヴィッシュが昨夜到着されて、治癒院で待ってますよ』
「ん、了解」
体を起こす。
窓から朝日が差し込んでいる。
清々しい朝だ。
顔を洗い、髪を整え、服を着替える。
さっと身支度を整えて、すぐに宿を出た。
---
外に出ると、朝の冷たい空気が肺に入ってくる。
気持ちいい。
空は青く澄んでいる。
「治癒院の場所ってどこ?」
『こっち!』
フゥが前を飛んで案内してくれる。
早朝だからか、人が少ない。
商店はまだ閉まっている。
パン屋から、焼きたてのパンの匂いが漂ってくる。
お腹が鳴りそうだ。
静かなマッシュの町の中を歩く。
石畳の道を、コツコツと靴音を立てて進む。
鳥のさえずりが聞こえる。
平和な朝——
すると、大きな白い建物が見えてきた。
二階建ての立派な建物だ。
壁は白く塗られていて、清潔感がある。
入り口の上に、治癒院特有のエンブレムが掲げられている。
二枚のヒール草がクロスし、その上から白い鳥が両翼で包み込むようなシンボルマークだ。
『ここ!』
フゥが建物の前で止まる。
「フゥ、ありがとう」
---
扉を開けて中に入る。
ギィ——
木の扉が軋む音が響く。
中は広々としていて、清潔だ。
白い壁、木の床——
薬草の匂いが漂っている。
消毒液のような、でも優しい匂い。
奥に、ヴィッシュと治癒院の職員と思われる女性が話をしていた。
女性は30代くらいだろうか。
白い治癒師の服を着ていて、髪を後ろでまとめている。
優しそうな雰囲気だ。
「おはようございます……」
声をかけると、ヴィッシュが振り返る。
気づいて、駆け寄ってきた。
「ラミナ君、来てくれたね。すまない、待たせてしまったね」
ヴィッシュが申し訳なさそうに言う。
「いえ、大丈夫です」
「昨夜遅くに着いてね、宿を探すのが遅くなってしまって」
「ヴィッシュ先生、そちらの子が?」
女性が近づいてくる。
柔らかい足音——
穏やかな笑顔だ。
「えぇ、ラミナ君、紹介しますね。マッシュの町の院長をしているアメリア君です」
ヴィッシュが私とアメリアを交互に見る。
「ラミナです。よろしくお願いします」
頭を下げる。
「アメリアです。よろしくね」
アメリアが優しく微笑む。
温かい目——
安心感がある。
「まだ若いのに、いろいろな治療法を考えた子って聞いて驚いたわ」
「いえ、まだまだです」
「謙遜しなくていいのよ。ヴィッシュ先生から色々聞いているわ」
アメリアが目を細める。
「さて、それでは本題に入りましょうか」
ヴィッシュが真剣な表情になる。
「アメリア君、状況を説明してもらえますか?」
「えぇ」
アメリアが頷く。
三人で、奥の部屋に向かう。
廊下を歩く——
足音が静かに響く。
部屋に入ると、テーブルと椅子が置いてあった。
シンプルだけど、清潔な部屋だ。
窓から朝日が差し込んでいる。
「座ってください」
アメリアが促す。
椅子に座る。
ヴィッシュとアメリアも座る。
「さて、どこから話しましょうか……」
アメリアが考え込む表情になる。
これから、どんな話が始まるんだろう——
緊張が走る。
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