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神様と呼ばれた精霊医 ~その癒しは奇跡か、祝福か~ 【原作完結済】  作者: 川原 源明
第15章 サバイバル学習 ルーベトトレック編

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第254話 地下都市ルーベトトレック

 足音が反響する。どこまで続いているのだろうか——


 そして、奥から——何かの気配を感じた。


 いや、気配というより——光?


「あれ、何か明るくなってきてない?」


 ミアンが不思議そうに言う。


「確かに……」


 洞窟の奥から、微かな明かりが漏れている。


「誰か住んでるのか?」


 ジョーイが警戒しながら進む。


---


 洞窟の奥を進んでいくと、急に開けた場所に出た。


 そして驚いたことに、そこには町が広がっていた。


 石造りの建物が立ち並び、通りには明かりが灯っている。人々——いや、ドワーフたちが行き交っている。地下にこんな町があるなんて——


「うわぁ~大きな町だ」


 ミアンが目を輝かせる。


「ですわね、ここがルーベトトレックの町ですのね」


 ミッシェルが感嘆の声を上げる。


『この地は、昔帝都から撤退した先住民たちが作り出した新しい町なんですよ』


 アクアが説明してくれる。


「ってことは、帝都の地下都市と同じ?」


『えぇ、彼らが撤退してこの地に都市を作ったのです』


『ここはね~様々な鉱石が取れるから、鍛冶や彫金を得意とするドワーフたちにとっては天国なんだよ~』


 まん丸が嬉しそうに言う。


「はぁ~、そうなんだ……」


 地下に広がる町——想像もしていなかった光景だ。


「精霊さんは何て?」


 ミアンが私に聞いてくる。


「帝都の地下都市に住んでた人達がここに逃げ込んで作った町なんだって」


「歴史の授業でそんなこと言ってたっけ?」


 シーアが首を傾げる。


「いや、聞いていないが……」


 ジョーイも記憶にないようだ。


 だいぶ前に、なるがスペルン遺跡が絡む授業の時にもアクアがそんなことを言っていた記憶がある。


 授業とは関係ないから、ミアンや、ミッシェル、シーア、ラミィー達との勉強会では一切触れていなかった。あくまで授業外の知識だ。


「とりあえず中に入ろうぜ」


 ジョーイが先頭を歩く。


---


 町に入ると、ドワーフ達が多く住んでいた。獣人やエルフ、人間も少ないが生活をしているようだった。


 石造りの家々、鍛冶屋の煙突から立ち上る煙、彫金屋の看板——活気のある町だ。


「すごいですわね……」


 ミッシェルが周囲を見回す。


「本当に町がある……」


 ラミィーも驚いている。


「ここを拠点にするのはありなのか?」


 ジョーイが尋ねる。


「ダメだな。先の洞窟内なら問題ないが、街中はダメだ」


 ジョーイの疑問に対して答えてくれたのは、護衛についているハンゾーだった。いつの間にか近くにいる。


「まぁ、街中を拠点にしたら、サバイバル学習の意味がないよね……」


 ミアンが苦笑する。


「そういう事だ」


 ハンゾーが頷く。


「とりあえず、洞窟内は安全なのが分かったから入り口近くに戻るか」


 ジョーイが提案する。


「そうですわね」


 ミッシェルが同意する。


---


 町を出て、来た道を引き返しつつ、拠点として使えそうな場所を探していた。


 松明の明かりを頼りに、洞窟の壁を確認していく。


「どこもごつごつとしてゆっくり休めそうにないな……」


 ジョーイが壁を撫でながら言う。


「そうですわね、岩だから平らにするわけにもいきませんし……」


 ミッシェルが困った表情を見せる。


「じゃあ、洞窟出てすぐの場所かな~?」


 ミアンが口にする。


「それしかなさそうだね」


 シーアが同意する。


---


 再び洞窟の外に出て拠点となる場所を探した。


 雪はまだ降り続いている。風も冷たい。


 洞窟を出てすぐの所で地面が平らなところがあり、そこを拠点とすることにした。洞窟の入り口から少し離れた、岩陰になっている場所だ。風を避けられそうだ。


「ここらへんですかね?」


 ラミィーが雪を払いながら確認する。


「そうですわね、風も避けられそうですし」


 ミッシェルが頷く。


「よし、じゃあここに拠点を作ろう」


 ジョーイが決断する。


「了解~」


 みんなで協力して、拠点作りを始めることになった。


---


 テントを張り、焚火の準備をする。


 ジョーイとシーアがテントの設営を、ミアンとラミィーが焚火用の薪を集め、ミッシェルと私が周囲の安全確認をする。それぞれが役割を分担して動く。


 雪を踏みしめながら作業を進めていく。冷たい風が吹き抜けるが、動いていると少し体が温まる。


「テント、これでいいかな?」


 ジョーイがテントの最後のロープを固定する。


「大丈夫そうですわね」


 ミッシェルが確認する。


「薪も集まったよ~」


 ミアンとラミィーが薪を抱えて戻ってくる。


「じゃあ、火をつけよう」


 焚火に火をつけると、暖かな炎が揺れる。周囲がほんのり明るくなる。


 一通りの準備が終わる頃には、すでに日が暮れ始めていた。空が紫色に染まっている。


「スノーロックって、夜行性だったよね?」


 スノーロックについての授業の事を思い出しながら聞いてみた。


「そうですわね」


 ミッシェルが頷く。


「早めに休んで、日が暮れたら行動のほうがいいかもしれないね」


 シーアが提案する。


「ですね」


 ラミィーも同意する。


『スノーロックだけではありませんが、この辺りの魔物や動物は基本夜行性ですよ』


 アクアが教えてくれる。


「そうなんだ……」


「うん?」


 ミアンが私を見る。


「この辺りの魔物たちは基本夜行性なんだって」


「へぇ、そうなんだ」


 ミアンが感心したように頷く。


「とりあえず、飯にしよう」


 ジョーイが提案する。


「だね」


 その後は皆で協力して夕食を作り、のんびりとした時間を過ごした。


 焚火の周りに集まり、温かいスープとパンを食べる。寒い中での温かい食事は、格別に美味しい。


「明日から本格的に狩をするわけだね」


 ミアンが言う。


「そうですわね。くちばし3つずつ——頑張りましょう」


 ミッシェルが決意を込めて言う。


「うん!」


 みんなで頷き合う。


 夜はまだ始まったばかり。


 長い夜が、待っている。



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