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神様と呼ばれた精霊医 ~その癒しは奇跡か、祝福か~ 【原作完結済】  作者: 川原 源明
第14章 メレス王国へ

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251/284

第251話 帰路の護衛 ウリッシュへ

夕方——精霊たちの声で目が覚めた。


『ラミナ、起きて!』


『武道会が終わったよ~』


『そろそろ行く時間だぞ』


「ん……」


 身体を起こすと、窓の外はオレンジ色に染まっていた。もうこんな時間か。


「何時?」


「3時半くらいだよ」


 クゥが答える。


「そっか……」


 顔を洗い、身支度を整える。マントを羽織り、鞄を確認する。ポーション、食料、必要なものは全て入っている。


「じゃあ、行こうか」


『うん』


 ルナにまたがり、王城へ向かう。


 夕暮れの帝都は、まだ武道会の余韻に包まれていた。通りには観客たちが溢れ、酒場からは笑い声が聞こえてくる。華やいだ空気が街全体を包んでいる。


 王城に着くと、すでに馬車の準備が整っていた。


「お待ちしておりました、ラミナ殿」


 ゼクトとクロウが頭を下げる。


「国王陛下は馬車の中でお待ちです」


「はい」


 私は馬車に近づく。


「ラミナ殿、待っていたぞ」


 馬車の中から、メレス国王の声が聞こえる。


「帰りも世話になる」


「はい、王都ノルトハイムまでお送りします」


「頼んだぞ」


 馬車の周りには、騎士団長のゼクトと、宮廷魔導士のクロウ、メレス王国の数名の騎士たちが並んでいる。


 行きと変わらないメンバーだった。皆、完全武装で警戒している。


「それでは、出発いたします」


 ゼクトの声が響く。


 馬車がゆっくりと動き出す。


 私もルナで馬車に並走する形で進む。


---


 帝都の門を出ると、景色が一変した。


 広大な平原が広がり、夕日が地平線を赤く染めている。


 風が心地よい。


「いい天気だね」


『だな、このまま何事もなく着けばいいが』


 グレンが警戒している。


『周囲に怪しい気配はないよ~』


 まん丸が報告してくれる。


「そっか」


 馬車は街道を進む。


 騎士たちは馬車の周囲を固め、警戒している。緊張した表情だ。


『ラミナ、あの騎士たち、結構疲れてんで』


 ミントが心配そうに言う。


「国際武道会の警備とかで忙しかったんじゃない?」


『だろうな、もう少し休ませてやりたいところだが』


 グレンが呟く。


『国王の護衛ですからね、ずっと気を張り詰めたままなんでしょうね』


 アクアの言葉を聞いて、私もできればこの手の依頼は受けたくはないと、改めて思った。気楽な冒険の方がよっぽどいい。


---


 2時間ほど進むと、日が完全に沈んだ。


 月明かりが街道を照らしている。


「大丈夫そうだね」


『今のところは問題なさそうやねぇ』


「そっか」


 順調に進んでいる。このままいけば——


『待って~』


 まん丸ののんびりした声が届く。


「うん?」


『盗賊やね』


『ボク行ってくる~』


 フゥはそう言うと、あっという間に姿を消した。


『あいつはずっと暇を持て余してたからな』


『せやなぁ』


『何も起きないねって、ずっと言ってましたからね』


 フゥらしいと思いながら精霊たちの会話を聞いていた。往路と同じように、精霊たちが先回りして処理してくれている。


 それから2時間ほど進むと、遠くに町の明かりが見えてきた。


「ウリッシュだ」


 騎士団長のゼクトが言う。


 教皇国唯一の町、ウリッシュ。


 ここで一泊して、明日メレス王国領へ入る。


「無事に着いたな」


 メレス国王の声が聞こえる。


「はい」


 私は答える。


『お疲れ様、ラミナ』


『よく頑張ったね~』


 町の門が近づいてくる。


 長い一日が、ようやく終わろうとしていた。


---


 ウリッシュの町は、巡礼者が多く夜でも賑やかだった。


 宿屋、酒場、商店——明かりが灯り、人々の声が聞こえる。往路で見た光景とあまり変わらない。


「この宿に泊まります」


 クロウが案内する。


 立派な宿屋だ。3階建てで、看板には「旅人の宿 月光亭」と書かれている。


 行きとは違う宿を使うようだ。何か理由があるのだろうか?


「ラミナ殿の部屋も用意してあります」


「ありがとうございます」


---


 部屋に案内されると、私は荷物を置いてベッドに倒れ込んだ。


「疲れた……」


『お疲れ様』


『ご飯食べる?』


「うん、食べる」


 私は鞄からマジックコンテナを出し、セレスの言う新作を取り出した。


 ふわふわのパンに、香ばしく焼かれた魚——美味しい。疲れが癒えていく。


 食事を終えて、ベッドに横になった。


『おやすみ~』


「おやすみ、みんな」


 柔らかいベッドに身を沈め、目を閉じる。


 明日はメレスとの国境を越える。


 また長い一日になりそうだ——


 そんな考えが頭をよぎったが、すぐに意識は闇の中へと沈んでいった。



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