第172話 ハイウェン桟道
7月も末になり結構気温が高いはずなのだが、今肌寒い思いをしていた。
現在、ハイウェンの町に繋がる崖を降りている最中だった。
「なんか寒くない……?」
『この谷を吹き抜ける風は、トロランディアとの国境をまたいでるエルダーヴェール連山に当たる風がこの谷を抜けてますからね』
「もしかして、この谷の奥が……」
『ハイウェン風穴洞やね』
反対側の崖を見ると、崖に家があったりと斬新な町の作りになっていた。
「なんでこんなところに町が……」
『ハイウェン風穴洞は、もともと神聖な地として崇められ風穴洞に続く休憩所としてこの町が作られたんですよ、あそこを見てください』
アクアが指さした先は、以前峠で見たような道だった。
「また崖に穴をあけて杭を差し込んで板を乗せただけの道……」
『ハイウェン桟道(参道)って呼ばれてるんやで』
「へぇ……、もしかして風穴洞まであの道?」
『せやで』
雨の日には絶対に行きたくない!
滑ったら谷を流れる川に真っ逆さま!
『とりあえず、もうちょっと降りると、対岸に渡るつり橋があるので頑張りましょう』
崖を降りる階段も結構幅広く作られているし、すれ違う人も多い。
「というか、崖の町なのに結構人いるね……」
『この辺りはクリスタルが取れるからね~、それが目当ての人もいるんだよ~』
『あとは谷底の方にダンジョンがあるからな、色々な意味で活気があるってことだ』
「はぁ……」
階段を降りると、吊り橋があった。
「これ渡るの……?」
なんか、ボロボロに見えるんだけど……?
『渡らないと風穴洞に行けませんよ?』
「途中で切れたりしないよね……」
『大丈夫や』
何かあって落ちたらミントを恨もう……。
そっと、そっと一歩ずつ歩くも、地元人と思しき人が私の横を駆け抜けていった。
めちゃめちゃ揺れる吊り橋怖っ!
地元民が実際に恐る恐る渡っている私を見て笑っているし!
趣味わるっ!
やっとの思いで対岸にたどり着いたが、この先は杭の上に板が乗っただけの道……。
行くのやめようかな……。
「これさ……、帰りもだよね……?」
『当然だろ、嫌なら泳いで王都に向かうって手もあるぞ?』
『時期的にも気持ちいいですよ』
川を泳ぐのが好きだった私としては、また怖い思いをする位ならそっちの方がいいが、どう見ても川の流れが激しい……。こういう場所って基本的に深いから何か浮くものがあればいいんだけど、何かあったかな……。
『ほれ、帰る時のこと考えてねぇで行こうぜ』
「はぁ……」
グレンに急かされるまま、仕方なく……、仕方なく……、険しい桟道を歩き始めた。
手すりなんてないから、崖に手を添えながら歩みを進めていく。
幸いすれ違う人なんていないから、崖側を譲ったりする必要もなく、歩き続けた。
気づけば日が暮れ始めている?
大分暗くなってきた気がする。
「これ、風穴洞までどれくらいかかるの……?」
『このペースだと途中の休憩所で一泊して明日の朝じゃねぇの?』
『そうですね、この先に参拝者用の休憩スペースがありますし、今夜はそちらで一泊するのが良いかと』
そうなるよね、夜中にこんなところ歩きたくないし!
アクアの言う通り、少し進んだ先に、崖に大きな穴が掘られただけの休憩スペースにたどり着いた。
「はぁ……、なんか疲れたんだけど……」
いつもはこんなに疲れることはないけど、吊り橋から桟道とずっと気を張ってたせいかすごく疲れた。
『ずっと無駄な所に力が入ってたからな』
『ラミナはあまり高い所が得意じゃないですかね?』
それは違うと思う、単に足場が不安定だから怖いだけであって、城壁の上とか、寮とかの高い所は怖くないし!
「足場が不安定だから……」
『ボクもつり橋とか歩きたくないよ~怖いよね~』
まん丸だけが味方か、なにごとも慎重になれるしっ!
『まん丸は臆病なだけやん』
「臆病な事は大事だよ、何事も慎重になれるし……」
私はそう思っている。
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