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第165話 Aランク

 砂浜では、すでにクラーケンの切り身を手にした住民たちが、思い思いに散っていた。


 私が海から上がると、ヴェネスがこちらを見ていた。


「アクア、お願い」


『はい』


 アクアの返答と同時に、私の服や身につけていたものが一瞬で乾き、不快だった海水のべたつきもすっかり消えていた。

 

 それを見て、ヴェネスが私に問いかける。


「もしや、先ほどのクラーケンは演出ですか?」


 濡れていた私が瞬時に整ったことに驚いたらしい。


「人が多かったので、地味にやるよりは派手な方が良いかなぁと思って……」


「なるほど、そうでしたか。Aランクのカードの準備ができていますので、ギルドまでご足労願えますか?」


「はい」


 私はヴェネスのあとに続き、冒険者ギルドへと向かう。


 ギルドに着き、どこのカウンターに行くべきか迷っていると──


「私の部屋でお渡ししますので、このままついてきてもらって良いですか?」


「はい」


 そのまま階段を上り、三階の部屋へと案内された。


「それではこちらに腰掛けてください」


「はい」


 椅子に腰掛けると、ヴェネスが机から冊子とカードを手にして戻ってきた。


「まずは、ラミナさん。Aランク昇格、おめでとうございます」


「ありがとうございます」


「Aランクに昇格されたことで、あなたには新たな責任と権利が与えられます。まず、Aランクはより高難度の依頼を受ける資格を持ちます。たとえば、王国からの直命、禁断の地への探索、クラーケンのような魔物の討伐などです。


さらに、Aランクはギルド内での発言力が強化されます。方針の決定、新たなルールの策定、若手の育成など、指導的な立場も期待されます。


もちろん、それに伴い、ギルドの名誉を守る義務も生じます。Aランクとしての言動は、常に模範となるよう求められます。


──ここまでが概要となりますが、質問はありますか?」


 めんどうで大変そう、という印象だけは、しっかりと伝わった。


「あの……、国からの依頼とか、断ってもいいんですよね?」


「えぇ、構いません。中には戦争への従軍といった過酷な依頼もありますからね」


 それはできる限り避けたい。


「禁断の地って、どこなんですか?」


「代表的なのは魔大陸です。ポートリタの外縁部は、Aランク以上でなければ探索できません。他にも、蓬莱国の鬼城や、パルティア王国のネクロヴェール地方などがあります。いずれも、生半可な実力では帰還が難しい地域です」


 魔大陸は名前だけ知っていたが、それ以外は初耳だった。


『ネクロヴェールとか懐かしいな』


『やね』


 グレンとミントはその名に覚えがあるようだ。


「なるべく行かないように気をつけます……」


「いや、むしろ行ってもらいたいくらいです。こうした地域では定期的な掃討が必要で、放置すれば周囲の住民に危害が及ぶ恐れがあります」


「はぁ……」


 蓬莱国もパルティア王国もよく知らないし、無縁でありたい。


「あとは、世界中すべてのダンジョンに入れるようになります」


 それは今後、何かの役に立つかもしれない。


 ふと、あることを思い出した。


「この近くにあるダンジョンって、どこですか?」


「海中宮殿に向かわれるのですか?」


「海中宮殿?」


「えぇ。ロシナティスの沖合、約10メートルの海底に入口があります」


「そんな場所に、行く人いるんですか……?」


「意外に多いですよ。世界中の海底に沈んだ財宝がそこに集まっているという噂があるんです」


 海底となると、食料栽培には適さないかもしれない。改めて飢饉対策の方法を考えないと……。


「海中宮殿以外で、この近くにあるダンジョンは?」


「ロシナティス北部の磯の近くに、“水の神殿”と呼ばれるダンジョンがありますよ」


『キラーウェールを助けた場所ですね』


 そんなところにダンジョンがあったとは。全く気づかなかった。


 とりあえず、まずはそちらを探索してみよう。


「ありがとうございます」


「いえ。ラミナさんは、ダンジョン攻略に興味が?」


「ダンジョン攻略というより、センターリタの薬草園のように、ダンジョン内で作物が育てられるなら、この国の飢饉の解決になるかと思って」


「なるほど。確かに、現実の1日でダンジョン内では24週間が経過しますから、麦の栽培と流通ができれば──」


「はい。そのためには、まず栽培スペースを確保する必要があり、つまり攻略が必要で……」


「よく考えられていますね。ただ、水の神殿は名のとおり、潜水を必要とする場所がいくつもありますが、大丈夫ですか?」


『呼吸の問題なら、私とミントで解決しますので大丈夫ですよ』


 アクアが言うなら安心だけれど、ミントも関与するということは、別の方法もあるのだろう。


「精霊さんがなんとかしてくれるみたいなので、大丈夫だと思います」


「そうですか。では、攻略が終わったらギルドにお知らせください。収穫物の運搬人員を派遣します」


「お願いします」


 ロシナティスに長居するつもりはないし、町の人たちで運用できるようになるのが理想だ。


「こちらからは以上です。ラミナさんの方から、何か?」


「いえ、大丈夫です」


「では、以上でお開きとしましょう」


「はい」


 私はヴェネスの部屋を退出し、そのままギルドを後にした。


 これから、“水の神殿”と呼ばれるダンジョンへ向かってみよう――。


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