第144話 はじめの一手
「提案とは?」
「まずは、明日の朝までに、船長と信用できる水夫を別の所に移します」
「なぜそのようなこと……?」
「トロランディア帝国の者達から守るためと言ったところでしょうか」
「ふむ、続けてもらってもよろしいですか?」
「別の所に移した後、ラミナが例の偽装している船と、本来乗る船を回収します」
「そんなこと出来るのか!?」
「えぇ、ラミナが持っている鞄には船2隻位どうってことありませんからね」
確か既に船が1隻入っていた気がするけど……。
「そんなに大容量なのか……」
「えぇ、カバンには生きた者は入れることが出来ないのでトロランディアの者達は海に落ちるでしょうね、それがまず第一段階です」
「ふむ、それで水夫は足りるのか?」
「大丈夫でしょう、最悪はまん丸が子ども達とゴーレムとして活動すれば良いだけなので」
「まかせてよ~」
「なるほど、水夫の代わりは居るのですな、第一段階と言うことは、向こうに着いてからが第二段階ってことですか?」
「えぇ、既にあちらにも多くの諜報部の手の者達が居ます。そちらには人物鑑定や追跡者、伝達持ちが居ることを把握しています」
さすが精霊達だ、すでに調べ尽くしているのかな?
「追跡者に伝達か、これはやっかいですな……」
追跡者はなんとなくわかるけど、伝達ってやっかいなスキルなのかな?
「えぇ、そこでラミナに囮になって貰うのです」
「ぇ!?」
アクアの言葉に思わずすっとんきょうな声が出た。
「ラミナには明日の朝から鑑定妨害の付いたローブを着て行動して貰います」
そんな物持ってないけど……、もしかして先祖が持っていた?
「追跡者の目をそちらに向けると」
「えぇ、そのため王国領ではミッシェルとミアン、ラミナと別行動します」
「姫様の身は大丈夫なのですか?」
「えぇ、そちらはホープに任せます」
アクアがそう言うと、ミアンの髪からホープが出てきて頷いていた。
「もしやそちらも精霊で?」
「えぇ、水の上位精霊です。ホープの任務はミッシェルとミアン離ればなれにならないこと、二人の命を守ること、二人に敵意を持つ者は遠慮無く排除すること」
排除って、殺すって事だろうか……。
『了解でありまっす!』
ホープは頷いていた。
「ミッシェルとミアンは通常通り王都に向かって貰い、ラミナに追跡者が付いてきた場合ですが、一度北の国境を越え国境の町ラックバードで振り切り、関所を通らずにミネユニロント王国王都に向かいます」
「なるほど、トロランディア帝国領内に滞在していると思わせると」
「えぇ、追跡者のスキルは痕跡を見つけなければ追えませんからね、私達がフォローすれば振り切ることが出来るでしょう」
「それならある程度離れたところで、始末すれば良いのではないですか?」
「そうはいきません、どうやら伝達持ちが定期的に生存確認をしているようなので、追跡者が死んだ場合、ラミナがミネユニロント王国領内に戻ってきている事がばれてしまうんですよ」
「なるほど、謎の人物がミネユニロント王国内に居るとわかれば警戒の種になりますからな」
「えぇ、現時点でですが、ミッシェルの友人に精霊使いがいる事は知られていますが、旅に同行していることは知られていません」
「少しでも欺くためですな」
「えぇ、知られるのは少しでも遅れることに越したことはありませんからね」
「今の時点で話せる事はここまでです。アルドあなたの部下のスキルで国王のみに伝えて貰っても良いですか?」
「仰せのままに、これ以上話せないと言うことは、王の側近に裏切り者がいるという認識でよろしいか?」
「えぇ、その通りです王を殺害するという意思はありませんが情報が筒抜けになっていますからね」
ん?
それって、筒抜けになること前提で話したのかな?
「では最後に、トロランディア帝国の狙いは何だと思われますか?」
「調べ始めて数時間なので確かなことは言えませんが、ミネユニロント王国北部の穀倉地帯でしょうね」
「やはりそうですか、かの国が飢饉に襲われている噂は本当でしたか」
「えぇ4月から比較すると既に国民の3割が飢えで亡くなり、1割が病で亡くなっています」
「そんなにひどい状況なのですか?」
「えぇ、だからこそ穀倉地帯がほしいんだと思いますよ」
ん……、それなら食料を他国から買えば良いような気もするけど、余裕がないって事なのだろうか?
昔精霊達から聞いたルマーン革命の始まりもこんな時期だった気がする。
たしか麦の収穫とかだから6月くらいだったかな?
「そうですか、わかりました。このことを含めて王にお伝えさせて貰います」
「えぇ」
「さて、この話はここまでとしましょう!我が家のご飯を堪能し、今日はゆっくり休んでください」
この後ゆっくり美味しいご飯を堪能し、シャワーを浴び、寝室に戻った。
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