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第139話 虫垂炎手術

 ロゼッタが近くの部屋に入っていった後思ったことがある。


 どこでやるかだ、見渡す限りこの家でやるのは難しい、かといって治癒院は使っても良いのかが分からない、そうなると、西門近くに建てたあの場所だろうか?


 あとは相棒のミアンにも手伝って貰いたいが、どこに居るかアクアに聞いて探す必要があるかな?


 しばらくすると、ロゼッタが入っていった部屋の扉が開き、ロゼッタと若いエルフの男性が出てきた。


 男性は下腹部を押さえて苦しそうな表情を浮かべていた。


「彼は、リンジェの里のクロウって子なんだが頼めるかい?」


「良いんですけど本人は?」


「頼む……」


 同意って事で良いのかな?


「えっと治癒院って使えます?」


「難しいねぇ、無事な部屋は少ないねぇ」


「それなら西門外にある建物でいいですかね?」


「あぁ、早く案内してくれ」


「はい」


 家をでると日が落ち真っ暗になっていた。


カバンからランタンと取り出すと、グレンが火を着けてくれた。


私は二人の前を歩き治癒拠点を目指して歩きはじめた。


「そういえばミアンはどこに居るの?」


『これから向かう場所にいますよ』


 探す必要はなさそうだ。


 時々後ろのクロウを気にかけながら西門外にある治癒院に到着。


 到着して分かったことがある。


 治療拠点は被災した人たちの一部が寝泊まりしている場になっているらしい。

 

 同級生達が夕食の炊き出しをして被災した人たちに配っていた。


「どこでやるんだ……?」


「ん……」


 思っていた以上に活用されていた。


『外に新しいの作ろうか~?』


「小さくて良いからお願いして良い?」


『は~い』


 まん丸が土壁の外に小さな建物をささっと作ってくれた。


 部屋の中に入ると。天井がガラス板なのか満天の星空が広がっていた。


「こりゃ贅沢な部屋だねぇ」


 私もそれは思う。これからやることに適切な部屋かと問われればちょっと疑問に思うが。


 月明かりでも大分明るいが、これからやる事を考えれば暗い。


「どこかに蝋燭台ある?」


『こっち~』


 まん丸に案内された場所に蝋燭を立てていく、立てた蝋燭にグレンが火を着けていった。


ん、なんか真っ白な部屋?


天井がガラス張りで、すごく真っ白な部屋で、中央には台が置かれていた。


 お部屋の次はミアンだろうか?


 ホープが付いているし、アクアにお願いすれば良いかな?


「アクア、ミアン呼べるかな?」


『えぇ、ホープに誘導させましょうか』


「お願い」


 ミアンが来るまで、道具の準備をしていく。


「僕はこの台に横になれば良いのか?」


「そうですね、この辺りを切るので、上に着ているものは脱いでもらってもいいですか?」


 完全内蔵逆位の彼の場合切る箇所は左に下になるので、自分の左下腹部を見せて切る箇所を伝えた。


「あぁ……」


 返事をしたものの脱ぐ気配が無い。


「なに恥ずかしがってんだい!一時の恥と命どっちが大事なんだい!さっさと脱ぎな!」


「あぁ……」


 ロゼッタに促されて、クロウは渋々といった感じで上に着ている服を脱ぎ始めた。


道具の準備が終わる頃にはホープに誘導されミアンがやってきた。


「あれ……?」


 ミアンは部屋に入ると、“何ここ?”みたいな表情を見せた。


「これから手術するから手伝ってくれない?」


「ぇ?あっ、うん、着替えるね」


「うん」


 再びホープがミアンを更衣室まで誘導していた。


「それじゃあ、私も着替えてきます」


「えぇ」


 更衣室に入ると、ミアンが着替えているところだった。


「ねぇ、ラミナ」


「うん?」


「何をするの?」


「んと虫垂が炎症を起こしているから、その部分の切除かな」


「虫垂……、あ盲腸のあたりにあるちょこっと出てるやつ?」


「そそ、だから開いたら付け根をクリップで止めて大腸とかにある物が出てこないようにして、切除して、ポーションで回復かな?」


 始めてやる手術だが、体の構造や理論を考えたらそうなると思う。


 アクアあたりが突っ込みを入れないとなると、多分これで良いはず……。


「やったことあるの?」


「ないよ?」


 ミアンの問に対してきっぱりと返した。


「スムーズに答えるからやったことがあるのかと……」


「体の構造とか勉強すれば多分これで行けるはずみたいな?」


「そんなんでやるんだ……」


「大丈夫じゃない?アクアが何も言わないあたりこれで行けるはず」


『えぇ、私もラミナの考える手順で良いと思いますよ』


 ほら!


「アクアも私の考える手順で良いと思っているみたい」


「そう、私は何をすれば良いかな?」


「ん~今回は特にないかな?切る箇所もちょっとだけだから、傷口を広げておいてくれると助かるかな?」


「うん、わかった」


 とりあえず、ミアンにこれからやることとやってほしいことは説明した。


 お互いに着替え終わって、ロゼッタ、クロウが待つ部屋に戻るり、改めて二人に手順を説明した。


「えっと、先ほども伝えたように切る場所はここです」


 今度はクロウのお腹をなぞった。


「あぁ……」


「で手順なんですが、カブリトの成分を吸って貰い、意識がなくなり麻痺状態になったら、この蔦部分を気道に伸ばして呼吸サポーターで呼吸をサポートします」


「あぁ……」


 クロウはさっきからずっと不安そうにしている。


「で、さっき言った場所を切って、問題の部分を切除してからヒールポーションで回復させます。切除箇所の回復を確認したら、切った場所を回復させてから、カブリトの成分を抜いておしまいになります」


 クリップで挟んでとか細かいことを伝えてないけど、理解して貰えるか不明だし省いて良かったかな?


「お腹を切るって事は痛みは大丈夫なのか?」


「そのためにカブリトの成分を吸って貰うんです」


「なるほど……」


「何を心配してる!子どもを産む人なんかはカブリト使わずに腹をバッサリ切るんだよ!」


 あっ、それを知っているんだ……。


「そんなことしたら痛みで死ぬじゃないか!」


「死なんよ!子の命がかかっているんだからね、女達ががんばれるんだからあんたなら大丈夫だよ!」


 痛みに関してはカブリト使うから大丈夫なはずなんだけど、ロゼッタの説明ってカブリト使わない前提?


「分かった……、じゃあ頼むよ、台の上に横になれば良いんだろ?」


「はい」


 私が返事をすると、クロウが台の上に横になった。


「わたしゃどこに居れば良いかね?」


 ん~どこが良いだろうか?


「クロウさんの右側なら居てくれても大丈夫です」


「分かったそうさせて貰おうかね、ところでライトボールはいるかい?」


 ロゼッタは、光属性適正なのかな?


「あ、出せるなら1個お願いしても良いですか?」


「何十個だって構わないよ」


「えっとじゃあ、3つくらいで……、切る場所の真上に展開させてくれるとうれしいです」


 実際グレンと視覚共有するからそこまで明かり要らないけどミアンのことを考えたら、明るい方が望ましいかな?


「分かった」


 ミント用のウッドゴーレム、まん丸のゴーレム用のミスリル粒子を鞄から出して二人にゴーレムになってもらい、アクアに魔素を与え普段のサイズで実体化して貰った。


「水の精霊様、リタ先生と一緒に居た方かね?」


「えぇ、ロゼッタお久しぶりですね」


「お久しぶりです」


「ちなみにですが、そこでゴーレムをやっているドライアドも、ノームもそして姿を見せていないイフリートも皆リタと一緒にいた精霊達なんですよ」


「ほぉ、それはそれは、皆様お久しぶりですいつぞやは本当に世話になりました」


 ロゼッタの言葉に、まん丸とミントは2度頷いたりして応えていた。


「ふふふ、大丈夫です。私達はあなたがリタの意思をついで沢山の子を導いてきたのは知っていますから」


「全てを知っておられたのですか、お恥ずかしい」


「いえ、それよりも始めましょうか」


 アクアとロゼッタの話を聞いていた。


「んじゃ、私の右にまん丸、左側にミアンでいいかな」


「わかった」


『ほーい、状況をみて位置を変えるね』


「うん、お願い、じゃあミントお願い」


『いくで~』


 ミントがクロウの口に布を当て、カブリトの麻痺薬をしみこませていく。


「それでは、意識がなくなるまでカウントダウンしますね」


「うん」


 しばらくすると、


「意識がなくなるまで5・4・3・2・1・今!」


 今って言葉にミントが筒状になった蔦をクロウの口に入れ呼吸サポーター起動させた。


「それじゃあ切っていきます」


 指で改めて切る場所を確認してから、慎重にナイフを入れた。


 いつもの通り、グレンが切断面を即焼いて止血していく。


「ミアン押さえてて貰って良い?」


「うん」


 ミアンに傷口を広げた状態にしてもらい。


 グレンと視界を共有し患部の虫垂部分を確認。


 何も言わなくても、まん丸がトレイの上にピンセットとクリップを用意して私が取りやすい位置に出してくれていたので、ナイフをトレイに置き、ピンセットでクリップを掴み、虫垂の付け根にクリップを挟んだ。


「それじゃあ、患部を切除します」


 トレイの上にある小さなはさみを受け取り、ピンセットで虫垂を掴み、はさみでクリップの付け根を切除。


「切除はOK、切除部分を回復させます」


 はさみとピンセットを一度トレイにもどし、ハイヒールポーションを使い切除した箇所の回復を待った。


回復を確認すると、ピンセットを使いクリップを回収。


「大丈夫かな?」


「えぇ、問題ないですね」


 アクアがOKを出したので、お腹を閉じて残っているハイヒールポーションを使い傷口を消し、カブリトの成分を抜くために、穴の開いた針をお腹に刺した。


 アクアが淡く光りクリーンを使ったのを確認して針を抜くと同時に、ミントが呼吸サポーターを取り外した。


「これでおしまいです」


「ずいぶん手際が良かったが、やったことがあったのかい?」


「いえ、始めてやりました」


「……、体のことを熟知してるんだねぇ」


「精霊使いを授かってからミントとアクアから色々教えて貰っていましたから、体の構造がわかれば、これで行けるはずって思えるので」


「なるほどね、その考えは私もよく分かる」


 ロゼッタはそういうと、ポケットから小さな包みを出して私に差し出してきた。


 私はそれを受け取り確認すると金貨が3枚入っていた。


「これは?」


「私がクロウから受け取った治療費さ」


「これを私が貰って良いんですか?」


「あぁ、治療したのはあんただからねぇ」


 個人的にあまり報酬を受け取ったりしてなかったけどいいのかな?


『好意なんだからええんちゃう?』


「わかりました。ありがとうございます」


「うん、私も良い物を見せて貰ったよ」


 これが良い物ってどうなんだろうか?


「そういえば出産の時の事知っているって、ヴィッシュ先生から?」


「いや、治癒院にイリーナが時々来て私らに教えているのさ」


 なるほど、それで知っていたのか……。


「ねぇ、ラミナ」


「うん?」


「男の子を女の子にすることって出来る?」


『出来んやろ!』


 ミアンがとんでもないことを言い、ミントが突っ込んでいた。


読んでくれてありがとうございます!


「面白い!」「続きが気になる!」「応援したい!」と思っていただけたら、

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みなさんの応援が、次回更新の原動力になります。

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