第137話 衝突
いつ見えてくるかと思っていたら、別の冒険者が矢を放った。
「来たぞ！」
体の半分が地上に出ているオーク達が私の視界にも入ってきた。
「ふと思ったんだけど、今地面固めたら良くない？」
「身動きが取れないオークの集団か、いいんじゃね？」
ファラは賛成のようだけど、精霊達は？
『良いと思いますよ』
『普通のサーベルタイガーは木の上を伝って来とるで』
『固めちゃう～？』
「やっちゃって！」
動き回るのが普通のサーベルタイガーだけならどうにでもなるだろう。
地面を見ると、既に固まり多くのオークが身動き取れなくなっていた。
「精霊は何か言っていたか？」
「普通のサーベルタイガーが木の上をって言ってました」
「なるほどな、そうなると村に侵入する可能性が高いな」
「じゃあ」
「あぁ、降りて戦う！お前はそこに居とけ」
ファラはそう言い放つと塀の上から飛び降りていった。
「ん～結構高いと思うんだけどなぁ」
三～四メートルはある高い壁だ、さすがに私は飛び降りる勇気はなかった。
他の冒険者達も動けないオークを確認すると、ファラに続くように地面に降りていく。
そんな様子を見ていた一人の冒険者が私の元にやってきた。
「ファラ君が降りたのはオークのためかい？」
ファラを知っている冒険者って事だろうか？
「いえ……、木の上を伝ってきてるサーベルタイガーのためだと思います……」
動けないオークを蹴り飛ばしたりしているファラが居るが仕留めてないあたりそういうことだろうと思っている。
「なるほど、数名残して我々も行くべきだろう」
冒険者はそう言うと、私を含めて5名残し下に降りていった。
『動けなくなったオークにサーベルタイガーが襲いかかったよ～』
ちょっと可愛そうだななんて思いつつ、ふと気になったことがある。
「普通のサーベルタイガーってどれくらい居るの？」
『十匹もおらんくらいや』
『既にファラが二匹仕留めていますね』
早、さっきまで見える範囲に居たのに既に見えなくなっていた。
「変異したのは大丈夫なのかな？」
『大丈夫だよ～もがいているけど、足三本地中に取られているからね～』
このまま平和に終われば良いな、そんなことを思いながら行く末を見守っていた。
塀の上でしばらく待っていると、周囲が明るくなり始めた。
カバンから時計を出すと、午前四時前、起こされてから一時間が経っていた。
「終わらないね」
『オークはほとんど処理済みですね』
『変異したサーベルタイガーだけやね』
「ファラ先輩なら殴って終わるとかじゃないの？」
『そんなんで終われば良いがな、埋もれていた足が2本千切れたんだよ』
千切れた？
「えっと……？1本埋まった状態で千切れた足で攻撃とかしているとか……？」
『両方とも後ろ足だから攻撃手段としてはあまり使ってないがな、体がでかいだけあって体力と回復力はあるからな』
「気のせいかな……、あまりいい話じゃない気がする……」
『実際良い話ではありませんよ、前足は片方埋まり、片方無事ですからね』
両方の後ろ足は千切れたけど、埋もれてない前足と噛みつきなんかで攻撃していると……。
『あとね～埋まってる1本ももうすぐ抜け出しそうなんだよね～』
「ダメじゃん！というか、前足埋もれてる状態なら簡単に後ろに回れそうなんだけど……」
後ろからスパッと切ったり出来そうなのに出来ないのかな？
『埋もれている前足なら体をひねったりした弾みで既に骨折しとるで』
千切れた後ろ両足に、骨折した片方の前足、人なら動き回ったりする気力なくなりそうなんだけどなぁ。
「ん……、グレン燃やして？」
『いいのか？冒険者にとって横からトドメをさすのはマナー違反だぞ』
「抜け出してこっちに来たら？」
『それなら構わねぇが』
どうするのが一番安全なんだろうか？
「怪我人はでてる？」
『ちょっとした怪我ならいますが、たいした怪我ではありませんね』
なら大丈夫なのだろう。ファラ達が無事戻ってくることを祈って再びしばらく待つことに。
数分後
『抜けた～』
『こっちに来ます！』
まん丸とアクアが立て続けにしゃべると、目の前の木々から大きな牙と赤と黒の模様が綺麗な魔物が飛び出してきた。
「グレン！」
『あぁ！』
グレンが返事すると同時に、目の前まで迫ってきていた大きなサーベルタイガーが燃え上がり真っ黒になった。そのまま地面に落ちると、その場に崩れ落ちた。
先ほどまで戦っていたであろう冒険者達が真っ黒に焼けたサーベルタイガーの周りを囲んでいた。
「ラミナー！おまえか～？」
真っ黒に焼けたサーベルタイガーの近くに居たファラがこっちを向き尋ねていたので頷いて返した。
「これで、この村は大丈夫そう？」
『そうですね、問題ないと思いますよ』
その後は、魔物やオークの解体処理や、村の復興支援等をした後、翌日には冒険者達と一緒に、キラベルへ帰還した。
変異したサーベルタイガーの牙を一本貰ったけど、自分の身長とほぼ同じ位の牙をどうしろと……。
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