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第136話 変異種

 空堀と土の塀を作り終えた頃には日も落ち辺りは暗くなっていた。


「おつかれさん」


「これで大丈夫なんですかね?」


「さぁな、魔物にしろ、魔族にしろ、あいつらたまに予想の斜め上に行くことがあるからな」


『ファラの言うとおりですね』


 ファラと精霊からも安心出来るような言葉は聞けなかった。


「他の奴らと見張りをしとくから、おまえは休んどけ」


「はい」


 そう言われてもどこで休めば良いのだろうか?


『壁際に休めるスペース作ろっか~』


 私の心情を読んでくれたのだろうか?


「お願いしていい?」


『こっちきて~』


 まん丸に誘導された先で、2m四方の小さな部屋を作ってくれた。


「ありがとう」


 今の私には横になれるスペースもあるし狭いけど良いかもしれない。


 カバンから布団を取り出し敷いてから横になった。


◇◇◇


 目を閉じてからどれくらいのと気が立っただろうか?


『ラミナ起きてください』


「ん……」


 体を起こすと横でファラが寝ていた。


「どうしたの」


『オーク達がこっちに向かっています』


「ぇ」


 カバンから時計を取り出しグレンの明かりを元にみてみると、現在の時刻は午前3時前、どうやら私はぐっすりと寝ていたらしい。


「先輩!起きてください」


 横で寝ているファラを揺さぶる。


「なんだ、どうした……」


 眠そうというより、目が開かない状態で体を起こすファラ。


「オーク達がこっちに向かっているって……」


「今何時だよ……」


「3時前です」


「はぁ……、あいつらも休めっての……、状況的にサーベルタイガーを退けたってとこか?」


『いえ、オーク達が変異種のサーベルタイガーから逃げている状態です』


 変異種ってなに?


「変異種のサーベルタイガーから逃げているって……」


「おいおいマジかよ……、どんな感じで変異しているんだよ……」


『体高が2m越え身体能力は相応やね』


 体高2m……、私の身長を越えている。


「体高2m越えで身体能力は相応だって」


「レジェンドかよ、最悪じゃねぇか!ラミナ外で寝ている冒険者を起こせ!」


 レジェンド?


「はい!」


 ファラに続き外に出ると、近くで焚き火が焚かれ火の番をしている冒険者と目が合った。


「どうした、何か騒いでいたようだが」


「オーク達と変異したサーベルタイガーがこっちに向かっているって」


「マジか!」


 火の番をしていた冒険者が鍋を持ち木の棒でバンバンと叩きだした。


「なんだ……」


 次々と冒険者達が体を起こし始め、近くの小屋からも女性冒険者達が出てきた。


「何かあったの?」


「オークとサーベルタイガーがこっちに向かっているらしい!」


「全員戦闘準備!」


 火の番をしていた男が伝えると、リーダーとおぼしき冒険者が叫んだ。


 その場にいた冒険者達がすぐさま準備に取りかかっていた。


「ラミナ上がってこい!」


 塀の上に上がっていたファラから声がかかり、ファラの塀の上に向かうと松明が並んでいた。私が寝た後に設置したのかな?


というか異様なくらい獣臭い。


「臭いですね……」


「今は風下だからな、こいつはブラックディアの匂いだが……」


『ディアはこの近くには居ませんよ』


「居ないって」


「だろうな、サーベルタイガーの群れにやられたか、オーク達がサーベルに気を取られている隙に離れたかだろ」


『後者ですね、南の崖上に逃げています』


「後者で南の崖上に逃げているって」


「そうか、なんにせよオークがこの壁を登るとは考えにくいが、サーベルタイガーが村の中に侵入することだけはなんとしても防げ」


「ん~?それだけで良いんですかね?」


 グレンでもアクアでもバーンやってしまえば直ぐ終わりそうな気がするのだけど、


「それだけ?」


「グレンかアクアがバーンとやってしまえばすぐでは?」


「グレンって火の精霊だろ?アクアは水の精霊だったよな?」


「うん」


「そんなことしたら、この森が死ぬぞ」


『そうですね、下手すると森が焼けるか、水没で大半の植物が腐るか……』


 火は分かる、水も大雨で作物が腐って駄目になったのを見たことがあるから分かるけど、氷はだめかな?


「一瞬だけ凍らせるとかもダメかな?」


「サウスラーベンを知らないのか?」


「ん?」


『サウスラーベンは、強すぎる氷魔法を使った影響で常に雪が降り続ける町なんですよ』


「ぇ」


 初めて聞いた。


「雪が降り続ける環境になっちゃうの?」


『あそこは魔素が湧き出ていますからね、大気中の魔素をつかって魔法を放ったために、魔法の効果が消えることが無くなってしまったんですよ』


「ここは?」


『ここは湧き出ては居ませんが、キラベル火山からの魔素が流れ込んでいるので、強い魔法はおすすめは出来ませんね』


「精霊から聞いたか?」


「うん、雪が降り続ける町だって」


「そういうことだ、ヒーリングレインはそもそもおまえの魔素のみで構成しているからやんだが、大気中の魔素を使うような大魔法や継続魔法を撃つときは注意しないとその地域の環境を変えちまうんだよ」


「知らなかったです……」


「一つ賢くなったなら良いんじゃね?使うなら植物の精霊と地の精霊の力だろ」


「だって」


『この谷間を深さ1mくらいの沼地にする~?』


「それでお願い」


 それくらいなら影響が無いと思った。


「なにするんだ?」


「深さ1m位の沼にするんだって」


「木は大丈夫なのか?」


『根の周りはそのままにしとくよ~』


『この辺の奴らは地中深く根を張ってんで』


 それなら大丈夫なのかな?


「大丈夫みたいですよ」


「そうか、匂いも濃くなってきたし、じきにここにも来るだろうな」


『もうじきオーク達が見えてくると思いますよ』


 そこまで近くに来ていると聞いて少し緊張してきた。


読んでくれてありがとうございます!


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