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第124話 酒場

 学内武道会が終わり とある日の夕方。


 ハンゾーとミラとの稽古後、帝都の中で夕食になりそうなものを探しながら大通りを歩いていた。


「何食べようか~」


『今日はおさかな気分~』


 まん丸からのリクエストは、お魚らしい。


 私自身もさっぱりしたものが食べたかったし、丁度よかった。


「だって。アクア」


『北部海岸に戻りますか?』


 近海の魚が欲しい時は、アクアが凍らせて砂浜に打ち上げてくれるわけだが、すでに日も暮れ、また北部海岸まで行くのは気がすすまなかった。


『ぇ~、早くご飯食べたい~』


 正直私も空腹状態なので、戻るくらいなら、どこかでご飯食べたい気分だった。


「ん~、じゃあ、どこかお店でだべようか~」


『やったっ~! じゃあ、こっち!』


 まん丸は、そういうと今まで来た道を引き返すように先導し始めた。


 そして少し戻ったところにあるお店の前で止まった。


『ここ~』


 ん~、見た目的にも酒場といった感じだし、お店から出てきた人から少しアルコールの香りが漂ってるけど……。同伴している大人の人いないんだけど……。


「ねぇ、まん丸? ここって私入れるのかな?」


『多分大丈夫じゃない~?』


『大丈夫やないやろ!』


『ここは大衆食堂じゃなくて、今は酒場ですよ……』


 今は?


 アクアの発言が少し気になった。


『だな、追い返されるのがおちだぞ』


 ミント、アクア、グレンから総反対をくらっている。


『ぇ~~、ここでデビルフィッシュの揚げ物おいしいみたいんだよ~』


 デビルフィッシュが何かわからないけど、まん丸がおすすめするものにハズレはないから気になった。


 さっぱりしたものじゃない気がするけども、まん丸おすすめだし入ってみたいけど……。


「入れなきゃ意味が……」


「ん? 何やってんだこんなところで」


 背後から声をかけられ振り向くと、そこにはファラが立っていた。


「ぇ?」


「なにやってんだ?」


「いや、まん丸がデビルフィッシュの揚げ物がおすすめって言ってって……」


「まん丸?」


「あっ、地の精霊さんです。ファラ先輩は何でここに?」


「夕飯を食いに来たんだが、ははん、そうか、一人で入って追い出されたってやつか」


 ファラはなにか一人で納得していた。


「違います! まだ入ってないです!」


「んじゃ、入るか、おごってやるよ」


「ぇ?」


「ほら、行くぞ!」


 ファラに手首をつかまれ店内に入った。


 店内は多くの人たちで埋め尽くされて騒がしかった。


「ん~テーブル席は全部埋まってるか」


「先輩、空いてるところないなら……」


 正直今日じゃなくてもいいし……。私としては混んでるところは好きじゃない……。


「大丈夫だ」


 店内を進んでいくと、ふくよかな女性がファラによって来た。


「おや、ファラじゃないか」


「あぁ、おばちゃん、二人なんだけど空いてるところない?」


 おばちゃんと呼ばれた女性は、私をちらりと見ると。


「悪いねぇ~。カウンターでもいいかい?」


「あぁ」


「それじゃあこっち来な」


 私の意志関係なく進んでいく……。


 カウンターまで来ると、ちょうど端の二席が開いていた。


「ここでいいかい?」


「あぁ、ありがとな」


「はいよ、注文が決まったらまた呼んでおくれ」


「あぁ、ラミナは端っこな」


「あっ、はい!」


 カウンター席に頑張って座って思う。高い!


 大人が座る前提だからかちょっと高い!


「おぉ? ファラか、今日は別の女の子を連れてきたな」


 カウンターの中にいる男性が、ファラと私を見た後、ファラに質問していた。


 別の女の子?


 頻繁に誰かと来てるのかな?


「あぁ、今年の一年だよ」


「ほぉ、ってか、嬢ちゃんには高いだろう、ファラ」


「あぁ」


 ファラは私の側から離れてどこか行ってしまった。


 見知らぬところで、私を放置するのはやめてほしい……。


「お嬢ちゃん名は?」


「ラミナです」


「ほぉ、そうか、お嬢ちゃんが聖女の再来と呼ばれてる子か」


「ぇ?」


 なぜ知ってるんだろうか?


「ここは酒場だからね、いろいろな話が集まるのさ」


 学生とか先生が利用しているという事だろうか?


「そうなんですか、ファラ先輩みたいに学生でも来る人いるんですか?」


「そりゃね、とくに週末は夕方まで食堂として営業してるからね、その時は学生のほうが多いくらいだ」


「そうなんだ……」


 週末に来ればよかったかな……。


「ラミナ、ちっとどきな」


 背後から声がし、振り向くとファラが椅子を持ってきていた。


「あ、はい」


 ちょっと椅子から降りると、ファラが元の椅子の代わりに持ってきた椅子を置き換えてくれた。


「これでどうだ?」


 椅子が高くなり少々座りにくかったが、さっきよりはましになった。少し低い気もするがこれでもいいかな?


「大丈夫です」


「そうか」


 そういうと、元あった椅子を片付けに行ったのか再び私の前から姿を消した。


「今度はちょっと高いか?」


「いえ、大丈夫です」


「そうか、すまないな、カウンター席は子どもが使うには向いて無くてな、その椅子はリンクル族かドワーフのお客さん用なんだよ」


 リンクル族のイリーナを考えると、私より背が低いし、今の椅子ならちょうどよさそうだな、なんて思い納得してしまった。


 しばらくすると、ファラも戻ってきて隣の席に腰を下ろした。


「うっし、何か食べようぜ」


「はい!」


 やっとご飯にありつける!


 カウンターの中の男性が問いかけてきた。


「なにがいいかね?」


「えっと、デビルフィッシュの揚げたもので」


「了解、ファラは?」


「いつものと私もそれでいいや、こいつにもいつもの奴を」


「はいよ」


 男性は返事をすると、大きく息を吸い込むような動作を見せた。


「デビルフィッシュのから揚げ、森と海の盛り合わせセット二つ!!!」


 いきなり大声で叫びびっくりした。


 というか、森と海の盛り合わせセットってなにがくるんだろうか?


 男性の声に対して、どこからか「はいよ!」という返事が返ってきていた。


「まぁ最初はびっくりするよな、飲み物は何にする?」


「何があるんですか?」


「そうだなぁ、私のおすすめとしてはラマンサのアーポォジュースとかか?」


 ファラのおすすめはアーポォジュースと、ラマンサってどこかで聞いた気がするけどどこだったっけ?


「そうだね、甘い物が苦手じゃないならおすすめだね」


 甘いものは好きだし、ファラと男性が進めてくれるなら。


「じゃあそれで」


「ファラもそれでいいか?」


「あぁ」


 ファラが返事をすると、すぐさま男性が下から瓶を取り出し、コップに注ぎ私達に出してくれた。


「ありがとうございます」


「君は珍しいね」


 カウンターの中の男性に言われ、“何が?”と思ってしまった。


「ぇ?」


 あれ? そうなのかな? お店でも商品受け取ったりしたらお礼を言ってたけど違うのかな?


『まぁ、店側としては対価をもらったサービスだから、お礼を言われるものでもねえんだよ』


『そうですね、支払いをした後にお店の方のほうがお礼を言うのが一般的ですからね』


「ふつう、お店側からものを出されてお礼を言うやつは少ないからな」


 アクアとグレンの話を聞いて私は少数派だったことに今気づいた。


「そうなんだ……」


「まぁっ、いいんじゃね?」


 その後、しばらくファラと雑談をしていると、カウンター中の男性に食事を持ってきた。


「おまちどうさま」


 私の前には、緑色の葉物がきれいに並べられその上に香ばしいキノコの料理と、周囲が焼かれ中はピンク色の何かの肉が薄切りにされたもの。そして山菜と思われるものの天ぷらの皿と、なにか白い円形のものと、エビ、白身魚を焼いたようなものに、茶色いごつごつしたものが出てきた。


 食べきれるのかなこれ……?


『ホワイトシェルの貝柱にスウィートシュリンプ、ルマーンフラウンダーですね』


『おいしそ~』


『この時期の山菜のサラダに、レイムマッシュのバター焼き、ブラッドディアのロースやね』


 聞いたことのあるものと、聞いたことのない物が混じっているけれど、すごくおいしそうだった。


「ほれ、たべろよ、熱々が一番うまいんだからさ」


「わかりました。いただきます!」


 ファラに促され手を合わせて食べ始めた。



読んでくれてありがとうございます!


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