第106話 公爵家のおもてなし
夕暮れの光が寮の窓を淡く染める中、ミアンの術後は、ポーション作りや日用品や薬草の購入等に当て、闇の日の夕方を寮で迎えた。
「何着ていけば良いかな……?」
『制服でええんちゃう?』
『そうですね、私も同感です』
ん~いいのかなぁ?
制服以外の服と思っても、たいした物は持ってなかったりする。
夏にミネユニロントに行くし、ガーネットに相談してみようかな。
そんなことを思いながら、制服に着替えた。
身支度を済ませていつでも迎えが来ても良い状態で待っているのに、来ない。
「こないね~」
『ついさっき、ミアンが自宅を出てこちらに向かっとるで』
「あっ、そうなんだ」
もう少しポーション作りしてれば良かったかな?
早く来ないかなぁとかこの格好で良いのかなとか、そわそわしながら待っていると玄関がノックされた。
玄関を開けると、ミアンが居たのだが、制服姿じゃ無くドレスを着ていた。
「あ、まっていたよ~」
「すいません、お待たせしました」
あっ、言うこと間違ったかな?
「表に馬車を待たせているのでそちらまでご足労願えますか?」
「うん……」
“ご足労願えますか?”って、私を友人としてでは無く、お客様としてなんだろうか?
「それではこちらへ」
ミアンの後に付いていくと、寮の前に黒塗りで家紋とおぼしきものが付いた馬車が止まっていた。
馬車のドアの横には執事と思われる年配男性が立っていた。
年配男性が、馬車の扉を開けると。
「ラミナ様お先にどうぞ」
ぇ、“様”って言われるとなんだか寂しい気がした。
馬車に乗ると、ミアンの父が居た。
「やぁ、いらっしゃい、そっちに座って」
「こんばんは」
ミアン父に促された場所に腰を下ろすと、ミアンも乗り込んできた。
ミアンは父親の横に腰を下ろした。
馬車の扉が閉められ、馬車が動き出した。
「ところでラミナ君、娘に失礼なところは無かったかな?」
失礼なところと言われても、正直こういった場面のマナーなんてしらない。
「えっと、たぶんなかったと思いますが……」
「が?」
「なんか普段友人として接しているので、“様”を付けられると他人行事みたいでちょっと寂しい気持ちになりました」
「っふっふっふ、ミアンの言ったとおりだったね、もう普段通りで良いよ」
「はぁ~、だから言ったじゃ無いですか~」
やらされていたのかな?
「ラミナごめんね、お父様に言われてあの接し方をしていたの」
「あ、そうなんだ」
「ところで、ラミナ君は苦手な食べ物とかはあるかな?」
「んと、多分大丈夫です」
村から出てきて1ヶ月だし、まだ食べたことの無い食材も存在するだろうから、“大丈夫です”とはっきり答えられなかった。
「そうか、難しいようなら残してくれて構わないよ」
「わかりました」
『残さず全部食べよ~』
『まん丸無理言わへんの』
『そうですよ』
食いしん坊のまん丸らしい発言だった。
少し雑談をしていると、窓の外に豪華な家が並んでる事に気づいた。
「ここって、貴族街って言われている場所ですか?」
「そうだよ」
「はぁ……立派な家ですね~」
私とは無縁としか思えない建物ばかりだった。
窓の外を眺め続けていると、これまでの家とは段違いに立派なお屋敷が見えてきた。
「もしかして……」
「そうですよ」
『代わり映えせぇへんね』
『そりゃボクが作ったんだから当然だよ~』
ぇ?
「まん丸が作ったの!?」
貴族嫌いのリタがなぜ貴族の家を手がけたんだろうか?
『そうだよ~』
「ぇ、なんで!?」
『寝たきりになったメフィーの部屋を改装するつもりだったんですが、ついでだからと言うことで、全体的に改装したんですよ』
「あぁ~そういうこと」
親友のためだったのか、それなら納得できた。
「っふっふっふ、ミアンから聞いていたが、君は突然独り言を始めるんだね」
「精霊が思っても無かったことを言ったのでつい……」
「そうか、それでは着いたし場所を移そうか」
「はい」
馬車を降り玄関を入ると、右側にメイド、左側に執事の方が並んで出迎えてくれた。
なんというか、場違いな気しかしなかった。
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