第104話 確実な予防対策
片付けを進めていると、ヴィッシュと学長が入ってきた。
「ミアンは今どういう状態なのだ?」
学長が私のもとに来るなり質問してきた。
「彼女はいま寝ているのと変わらない状態ですよ。じきに目を覚まします」
学長の問いに対して、アクアが答えていた。
「そなたは水の精霊か?」
「えぇ、水の精霊ウンディーネのアクアと申します。以後お見知りおきを」
アクアがそう答えると、学長がアクアの前に跪いた。
なぜ?
「そなたらのおかげでミアンは助かったのだな」
私のおかげではなく、アクアのおかげで助かったと思われているってことかな?
「……それは違いますよ。ラミナが居たから助かったのです。ラミナでなければ、メフィーのように、いずれ命を落としていました」
「だが……」
「いいですか? 最初はドライアドには反対をされていたんです。ですが、ラミナの常識にとらわれない発想に私は賭けて、共にベストを尽くしてきただけです」
確かに最初の頃、ミントは気が進まない様子だったのを思い出した。
『せやなぁ、先週の子の件といい今回の事といい、今までじゃあり得ない事やし』
『まぁそうだな。だが、前回と今回のことで大きく変わっていくだろうよ』
『そうだね~。いつかは僕らがいなくても、一つの道として確立していくと良いね~』
アクアと学長が何かやりとりをしているが、アクアの方からちょっと圧を感じた。怒っているのかな?
私としては、アクアのおかげとか精霊達のおかげと思われても別に構わないのだけど、実際みんながいたからこそ成し得たことだし。
「いいよアクア。早く片付けてミアンの所に行こう?」
「そうですね」
残っている物を片付けて、さっさと着替え、ヴィッシュと学長を置いてミアンの居る病室に向かった。
ミアンの居る病室へはグレンが案内してくれるようで、グレンの後に続いて向かっていた。
向かっている途中、ちょっと思ったことを聞いてみることにした。
「ねね、ミアンの病気って進行していたの?」
切除するときに、私が思っていた以上に大きかったからそう考えていた。
『進行はしとったけど、入学した頃よりは、そこまででもないやんな』
「そうですね。体内の魔素を動かすというのはあくまで遅らせるだけですからね。数ミリほど大きくはなっていましたよ」
やっぱり大きくはなっていたんだ。
「再発する可能性はあるかな?」
「無いとは言い切れませんね。どこか別の場所に出来る可能性もありますし」
『こればっかりはしゃあないやんな』
『だな。無限魔素持っている以上、可能性は高いだろうな』
やっぱりそっか。先週サウススペルンでの男性患者の話を思い出していた。設計図を変える話があったが、スキルなんてそもそも変えたり無くしたり出来る物じゃないし、どうすればいいんだろうか?
そんなことを思いながら病室に向かっていた。
病室が近くなると、イリーナがこっちに向かってきたのを見てひらめいたことがあった。
イリーナを始め、ヴィッシュやマリベルには精霊が着いている。ミアンに精霊を付けて常に魔素を吸い上げてもらえば、体内の魔素が常時動き続けるから発症を防げるのではないだろうか?
「ねね、錬金科の卒業生みたいに精霊を派遣して常時魔素を吸い上げて貰ったらダメかな?」
『良いかもしれないね~。それなら硬化する間もないからね~』
「そうですね。常に魔素が流れている感覚に慣れるまでは眠れなかったりするかもしれませんが、慣れてしまえば問題なくなりますね」
精霊達の話を聞くに、OKを貰えるってことだろうか?
「それじゃあ――」
『うちは賛成やな』
「えぇ、私も良いと思いますよ」
『ぼくも~』
『俺もだ。本人に誰の子がいいか確認して派遣と言ったところか?』
「そうなりますね。まぁ、中位と下位の子を生み出せる上位の子を派遣する感じですかね」
『せやなぁ』
精霊達の間で話がまとまったようだった。
イリーナが出てきた部屋に向かうと、ベッド上に居たミアンは既に目を覚まして体を起こし、家族と話をしていた。
「あっ、ラミナ!」
私に気づいたミアンが、家族との会話を中断させ、ベッドから飛び降りてこっちに駆け寄り、そのまま抱きついてきた。
「えっと……」
「ラミナ、ありがとう! ほんとうにありがとう!」
ミアンは私を強く抱きしめながら言った。
「あっ、うん。体調はどうかな?」
「いいよ! 深呼吸しても胸が痛くないの!」
あぁ、やっぱり自覚症状はあったんだ。あまりそういった話をしなかったから、自覚症状はあまりないのかと思っていた。
「そっか。良くなって良かったよ」
「うん! ほんとうにありがとうね、ほんとうに……」
ミアンの声が泣き声に変わっていた。私の顔の横にミアンの顔があるため、ミアンの表情が分からなかった。
「うん、あのね、大事な話があるんだけど良いかな……?」
精霊派遣の話をしないとだ。
ミアンを離すと、思っていたように涙でぐしゃぐしゃになっていた。
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