お友達?
「……どこいくの? 彩氷」
「ああ、もう少しだ。流石に疲れたか?」
「あっ、ううん大丈夫!」
それから、一時間ほど経て。
農業のお手伝いを終え少し休憩した後、再び外に出て彩氷と共にゆっくり歩みを進めていく。……それにしても、楽しかったなぁ農業。こうなったら、将来は家庭菜園なんかで自給自足の生活を……うん、そんなに甘くないかな? 人生。
ともあれ、和やかに会話と共に歩いていくと見えてきたのは凛と立つ数多の樹々。視線で問うと、ニコッと微笑み頷く彩氷。どうやら、この森の中を進んでいくようで。
「……はぁ、やっぱ良いなあここも。なあ真昼」
「……うん、すごく」
それから、10分ほど経て。
森の中を歩みつつ、ほのぼのとそんなやり取りを交わす僕ら。凛と立つ緑豊かな数多の樹々、その隙間から差し込む柔らかな光、そして優しく鼓膜を揺らす鳥達の囀り……うん、そのどれもが心地好い。
その後も、穏やかな心地で豊かな自然を噛みしめ歩いていく。彩氷と歩くその一歩一歩が、平時とはまるで違う。それは、さながら自然と一体化したような不思議な感覚で……もう、このままずっと――
「――あっ、遅いよ彩氷!」
「…………へっ?」
すると、不意に届いた明るい声にハッと我に返る。そして、開けた視界に映るは笑顔でこちらに近づいてくる五人の男女の子ども達。……えっと、彩氷の知り合い? それにしても、随分と幼いと言うか……恐らくは、小学生くらいの――
「ねえ、彩氷。こっちのお兄ちゃんは?」
「……へっ? あっ、えっと……」
「ああ、こいつは真昼。そうだな……まあ、俺の弟だと思ってもらえばいい」
「……へっ?」
「そっか、彩氷の弟か! それじゃあ、お兄ちゃんも俺達の友達だな! 友達の弟は友達って言うし!」
「…………えっと」
そう、晴れやかな笑顔で告げる男の子。見ると、他の子達も同意を示すように笑顔を向けてくれている。……いや、まあ分かるよ? 僕のことをどう説明すべきか判断しかねるのは。でも、もっと無難な……それこそ、友達とかで良かったのでは? あと、友達の弟は友達なんて聞いたことな――
「――そういうわけで、よろしくな真昼! あっ、俺は太一だから!」
「……へっ? あっ……うん、宜しくね、太一くん」
すると、続けてそう言い放つ天真爛漫な男の子、太一くん。……うん、まあいっか。別に困ることもないわけだし。