感謝の念
「……………うわぁ」
ほどなく、呟きを零す。そんな僕の視界には、水色の風鈴が心地好く響く縁側。そして、左手には種々の木や草花が彩る穏やかな庭が広がって――
「……いいところだろ? 真昼」
「……彩氷……うん、とっても」
すると、僕の心中を察したように尋ねる彩氷。その表情は、この空間に優しく溶け込むように穏やかで。視線を移すと、元輝さんもニカッと快活な笑顔を浮かべてくれていて……うん、良いなぁこの雰囲気。
「二人とも腹減ったろ。ほら、遠慮せずに食べな!」
「ありがと、元輝さん。ほんと、もう腹ペコで」
「……あ、ありがとうございます……元輝さん」
「おう、気にすんな!」
それから、数十分経て。
桧木の香り漂う和の居間にて、太陽のような笑顔でそう口にする元輝さん。僕らの前には、ご自宅の畑で採れたという野菜をふんだんに使った料理の数々。どれもとても美味しそうで、恐縮しつついただきますと手を合わせる。そして――
「…………美味しい」
「おっ、嬉しいねえ! そう言ってもらえると作り甲斐があるってもんよ!」
そう、声を洩らす。すると、本当に嬉しそうな笑顔で告げる元輝さん。……うん、ほんとに美味しい。僕なんかが通ぶるのもどうかとは思うけど……それでも、食材の質からして普段食べているものとはまるで違う気がする。彼が、いかに丹精込めて作っているかが見なくても分かるようで。そして、料理もあれこれ手を加えるわけでなく、素材の味を最も生かす形で最低限の……うん、何を語っているんだろうね、僕は。
「……ご馳走さまでした。改めてですが、本当に美味しかったです」
「ごちそうさま、元輝さん。今日も美味かったよ
「おお、お粗末さま。気に入ってくれて嬉しいぜ!」
それから、数十分後。
他愛もない会話に話を咲かせつつ、楽しく美味しい食事を終えた僕ら。まあ、僕はコミュ障ゆえほとんど話せていないと言うか……彩氷と元輝さんのお二人が会話をリードしてくれたので非常に助かりました。
その後、しばし縁側にてのんびりする僕ら。そっと鼓膜を揺らす風鈴の音が、何とも心地好く眠気を誘う。だけど、眠っているわけにはいかない。パシッと自身の頬に手を当て、すっと立ち上がる。そして――
「……あの、元輝さん。僕に、なにか出来ることはありますか?」