表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/18

幻想的な夜空

「――悪いな、真昼まひる。こんな時間に、わざわざ付き合ってもらって」

「ううん、気にしないで。彩氷あやひと出かけるの、すっごく楽しいし」

「……そっか、ありがとな」



 それから、数時間ほど経て。

 真っ直ぐに続く畷にて、隣から穏やかに微笑みそう口にする美青年。だけども、当然のこと謝る必要なんて何処にもない。こうして彩氷といるだけで、僕はとても楽しいのだし。


 徐に、空を見上げる。そこには、果てしなく広がる黒のカーテン――そして、燦々と瞬く数多の星。そんな美しい夜空の下を、彩氷と二人並んで歩いているわけで。



「……それにしても、本当に優しいよね、元輝げんきさん。見ず知らずの僕にまでここまでしてもらって、本当に申し訳ないし……本当に、すごくありがたい」

「……まあ、あの人はそういう人だからな。それに、そんなに気にすんなよ。あの様子だと、随分と気に入ったみたいだしな、真昼のこと」

「…………そう、なの?」

「ああ、俺が保証する」


 澄み切った空気の中、心地好い風に包まれつつそんな会話を交わす。既に説明した通り、元輝さんには大変良くしていただいた。本当、僕なんかには勿体ないくらいに。

 だけど、実は森から戻った後もなんと夕食――三人で収穫したトマトをメインとした、栄養満点の美味しい夕食まで用意してくださり、のみならず泊まっていけば良いとまで仰ってくださり……本当に、何から何まで申し訳なさと感謝しかない。いつか、僕もあんな人に……うん、なれるかな?



「……ねえ、彩氷。さっきも言ったかもだけど、本当にありがとう。今日一日、ほんとに楽しかったから」

「まあ、本当にさっきも聞いたけどな。でも、そう言ってもらえると嬉しいよ、真昼」


 その後も、歩みを進めつつそう伝えてみる。まあ、もう言ったのだけど……それでも、僕としては何度伝えても足りないくらいで。すると、彼は辟易する様子もなく穏やかに微笑み答えてくれて。 


 その後も、しばし閑談に花を咲かせつつ歩いていく僕ら。そして、到着したのは小高い丘の上。……えっと、ここは――


「…………ふぅ」

「……あの、彩氷?」

「お前も寝転がってみろよ、真昼」

「……へっ? あっ、うん……」


 すると、ふとバタリと仰向けになる彩氷。少し困惑しつつ声を掛けると、彩氷は何処か悪戯っぽく微笑み答える。まだ少し戸惑いつつも、彼の言葉に応じ徐に草の上へ仰向けになる。すると――



「………………あ」



 思わず、言葉を失う。と言うのも――茫然とする僕の視界に映ったのは、今にも降ってきそうな星の煌めく幻想的な夜空そらだったから。



「……綺麗だろ、真昼」

「……へっ? あっ、うん、すごく……」


 ふと響いた柔らかな声に、ハッと我に返る僕。視線を移すと、穏やかに微笑み僕を見つめる彩氷。……綺麗な顔だなぁと、改めて思う。まあ、言わないけど。言ったら気持ちがられるだけだろうし。


「……ここが好きなんだよ、俺。夜空そらを近くに感じれるこの丘が。この世界が――お前のいるこの世界が、わりと近くに感じれるから」

「……彩氷」


 すると、僕の心中を知ってか知らずかそう口にする彩氷。……いや、まあ知らないだろうけど、それはともあれ……心做しか、少し言い方には違和感が――


「――おっ、あれはへびつかい座かな。それから、あれは――」


 そんな思考の最中さなか、夜空を指差し滔々と話す彩氷。そんな、少年のように目を輝かせる彼の話を微笑ましく聞いていた。


 


 


 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ