表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/44

第9話 狐男との出会い2

「何者かと聞かれたら、占い師と答えるしかないわな。まあ僕はちぃ〜とばかし変わってるけど」

 不敵な笑みを浮かべて、狐男は言った。

「ロザリア様…」

 アイナが不安からか私の手を強く握った。

「大丈夫、アイナ。少し話をするだけだから」

「わかりました。でも、危なくなったら逃げましょうね」

「おじょーちゃん、僕は全然危険な輩やないで。むしろ品行方正、獣人族一安心できる男と言われるほどや。安心第一、安全第一で生きとる。いやーほんまなんて安心できる男なんや、僕。一家に一台ならぬ、工事現場に一人は欲しい! いや、そんなこと言うても労働はさせんといてくれや」

 ペラペラと早口でまくしたてるが、やはり逆に怪しい。本気の言葉とは全く思えない。

「べっぴんさん、あの子に聞かれたくないのはわかるで。あんたの魂の器には火ぃが2つ見える。1つは随分小さな灯火や。もう1つは元気よく燃えてるで。それがあんたやろ。普通、そんな風になっとる人間はおらん。乗っ取ったな?」

 狐男が、私にだけ聞こえるように耳元で囁いた。 

「乗っ取ってはいないわ。正しく言えば、突如この状態にさせられた、って感じ。私の意思でなく、ね」

 私も彼に囁く。それを聞いて狐男は、ふんふん、なるほどなぁと一人で頷いている。

「ねえ、占い師ってそんなことまでわかるの?」

「僕は特別製や。まあ、そういう変なのが見えるから占い師やってるわけですわな。僕を多少は信用してくれた?」

「信用ーーかはわからないけれども、もう少し話を聞きたいと思っているわ」

「なるほど、よっしゃ! ええ感じや! 僕の名前はキキリ。覚えてくれや」

「じゃあ、キキリ、聞きたいのだけどーー」

「待ちぃや!」

 キキリは突然遮り、親指と人差し指で丸を作り、それを私に対して強くアピールしてくる。お金のマークだと思うが、それはこの世界でも同じなのだろうか?

「お金?」

「そうや! 地獄の沙汰は金次第、天国の沙汰も金次第っちゅーありがたーい言葉があるやろ。金は天下の回り物っちゅーことや! いや違うな。金はいくら持っていても困らない! ……まあそれも間違ってはないけど、なんか違うな。まあええ。とにかく、銭がいるってことや。三途の川を渡るにも銭がいるやろ。そういうこっちゃ。銭がないと話にならん」

 この世界にも三途の川、あるんだ。しかもこの世界でも三文銭がいるのかな?

「話すには、金が要ると」

「僕は占い師やからな、当たり前や!」

「それで、いくら?」

「5000エルや」

 エル。キミパスでの通貨の呼称。

「ダメです! 高すぎます!」

 それを聞いてアイナが割り込む。

「これから買いに行く魔導書が2万エルです。普通の占いであれば数百エル程度。これはぼったくりもいいところですよ」

 アイナは怒りながら言う。

「おチビちゃん、本人同士の合意があればぼったくりやないんやで。このべっぴんさんがーー」

「ロザリア。それが私の名前」

「ロザリア嬢が納得しているのであれば正当な取引や。僕の言葉にはそれだけの価値がある、とロザリア嬢が考えたわけや。というわけでロザリア嬢、この金額をどう思う?」

 少し思案するふりを私はする。正直、価格が適正かはわからない。まあ、随分占いの相場よりは高いけれども。

 ブラッドレイン家の資産を考えれば大した金額ではない気がする。なので、この商談乗るか乗らないかは私の持ってきた財布にいくら入っているかがかかっている。私は財布を取り出して中を見る。1万エル札が10枚以上入っていたので払うことにした。キキリも私が裕福であることを知った上でふっかけてきているのだろうから。

「はい、これでいいよね?」

 私は5000エル札を渡すと狐男は喜びのあまり舞い始め、舞いと共に何度も5000エル札を高く掲げた。

「ばっちりや、なんでも聞いてくれ」

「私の中の小さな火が大きくなって、元に戻ることはあるの?」

 アイナに聞かれても問題ないように、私は言葉を選んだ。小さな火。消えかかっているロザリアの魂。

 ロザリアの魂に押しのけられるようにして、私の存在が消えるーーそれは怖い。私はこの身体の正当な持ち主ではないけれども、消えたくはない。

 私はロザリアの魂は消えてなくなったと思っていた。だから、私の魂がこの身体に入れたのだと。ロザリアの魂がまだこの身体に存在しているのであれば、話は異なる。

 しかしロザリアの魂を完全に消す手段があったとして、私がそれを実行するかというと甚だ疑問である。そこまでして生きたいかと聞かれれば悩ましい。そしてロザリアを消したいほど嫌いか、というとそうではない。私は、血の薔薇と恐れられ、主人公をいじめ抜いたクソ強中ボスロザリアを嫌ってはいない。全然嫌いじゃないのだ。味のある、いいキャラだと思っている。だからこそ、私はロザリアに転生したのではないか。

「うーん」

 キキリは細い目をさらに細めるようにして考えた後、言った。

「そんなこと僕がわかるわけないやろ」

 は? 殺すぞ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ