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第1話 走馬灯

 死ぬ時って意識が薄れていって消えていくと思っていたけど、想像と違って現実は走馬灯で目まぐるしい。しかもそれが時系列ぐちゃぐちゃで湧き上がってくる。

 三歳の頃、おじいちゃんとかくれんぼをしたこと。中学校の時、宿題を家に忘れただけなのに、先生に信じてもらえずやっていなかったことにされたこと。小学校の時、女子10人で裏山を探検したこと。夕子ちゃんと一緒にクッキーを作ったこと。数学が苦手でいくら勉強してもわからなかったこと。志望校に合格した帰りに家族で行った焼肉屋のこと。棺の中に見えたおばあちゃんの顔がひどく白かったこと。9歳の時に家族と行った初めてのディズニーランドのこと。小学校の時、スマホをなかなか持たせてもらえなくて無性に悔しかったこと。

 そんな、楽しかったこと、悲しかったこと、恥ずかしかったこと、それらが脈略なく、そして際限なく浮かんで、泡のように消える。

 ああ、死につつあるんだな、と思う。思い出の映像だけで浮かんできて、私は身体の中に閉じ込められる。もう、外の光景も見えないし、外の音も聞こえない。身体の感覚も、もうない。

 今、私はふっ飛ばされつつあるのだけど、慣性は感じない。もう吹き飛ばされ終わったのかな? そんなことすらわからない。

 光!

 もう目は見えないというのに、強い光が差し込んだ。でも、どこに? わからないけれど、光はそこにあって、私はまばゆくて眩みそうだった。

「ーーーーけて」

 脳内に直接響く、ぼやけた声。女性の声だ。神様、かもしれない。少なくとも私はそう思った。

 だって死にかけの私に声を届けられるのはそれぐらいなものだ。

 続けて、はっきりとした甘い声音が私の中に響く。

「死に続けて」

 は???

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