じゃがいもジュンくん
晴耕雨読。
今日は快晴。
ばらばらにした彼氏を埋めるのには丁度いい日だ。
福島の片田舎に住んでいる農家の娘であり、女子高生であった私はつい最近まで近くで塾講師をやっていた大学生のジュンくんと付き合っていたのだ。
けれども、ジュンくんは私の友達のサナちゃんと浮気をしていた。
それを知ったのが雨の日。借りた傘を返しにサナちゃんの家に言ったら、ジュンくんの甘い声とサナちゃんの雌猫のような声が雨音に交じった日。
だから、私はジュンくんを殺した。
サナちゃんと分け合うために。
ジャガイモは三センチ角に切って、畑に埋めれば芽を出すのだ。
だから、ジュンくんのことも腕とか、足とか、胃とか、脳とかに分けて畑に埋めようと思う。
二十二等分したから、きっと来年の春には二十二人のジュンくんが収穫できると思う。
そうしたらサナちゃんには胃からできたジュンくんと脳からできたジュンくんを上げようと思うの。私はサナちゃんのことを大事に思うジュンくんでいてほしいし、彼女には幸せな家庭を作ってもらいたいの。
でもね。
心臓から生えてくるジュンくんは私のもの。
ごめんね。ジュンくんの心だけは私のものにさせてね。だってこんなにも愛しているの。
ぎこぎこぎこぎこ。
大丈夫だよ、ジュンくん。
痛いっていうけど、きみは今日からジャガイモ農家である私のジャガイモで、永遠に育ててあげるから。
私がずっとジュンくんの畑を作るの。
私が死んだら、私とジュンくんの娘が。
私とジュンくんの娘が死んじゃったら、娘とジュンくんの間の孫が。
孫が死んだら、孫とジュンくんの間の子が。
私たちは永遠に薄まらないの。
そうして最後はジュンくんにすっごいそっくりな子が生まれるかもね。
楽しみだね。
ジュンくんを収穫して、愛して、また切って、永遠に愛してあげる。
この土地がある限り永遠に殖えようね、ジュンくん。