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第8話 運命という物は

「……未来から来た?」


「まぁ、そういう反応になるよね」


 4年前に誘拐犯からルードを救出したときに色々とぼろを出してしまっていた私は、ルードに問い詰められて言い訳をすることができなくなって、私がタイムスリップしてきたことを漏らしてしまった。


 あの状況で言い逃れることはできなかったし、今後ルードの力を借りたいなと思ってこれまでのことを軽く説明すると、ルードは眉を潜めたまましばらく黙ってしまった。


 突然、昔会った女の子に『タイムスリップしてきたの!』と言われて信じろと言う方が無理だと思うし、こんな反応になるのも仕方がないか。


 しかし、ルードは私を馬鹿にするでもなく、何かを考えこむように顎に手を置いて静かに黙り込んでいた。


「『七宝のアーティファクト』聞いたことないな。それを守るために、タイムスリップしてきたってことか」


「え? う、うん、そうだけど」


「なるほど……繋がったな」


「繋がった?」


 予想しなかった言葉が返ってきたので、私はその言葉の意味が分からずに小首を傾げていた。


 何と何が繋がったのだろうか? というか、警戒心みたいのが随分と緩和されている気がする。


 少しは疑われると思っていただけあって、その反応が少し肩透かしの感じがして、私はポカンとした表情でルードを見ていた。


「ん? なんだ?」


「いや、え、信じるの? 私の話?」


「なんだ? 嘘なのか?」


「いや、嘘じゃないけど、嘘みたいな話だと思わないの?」


 確かに、ルードなら話しても酷いことにはならないとは思ったけど、そんな二つ返事で信じられるとは思わなかった。


 信頼関係を築いた後なら分かるけど、こうして話すのは二回目なのだ。そんな簡単に信じられても、むしろこっちが困ってしまう。


「まぁ、4年前のことがなければ信じなかったかもな」


「4年前のこと?」


「あの歳で誘拐犯を無力化して、俺に回復魔法をかけていた。普通の子供だと思う方が無理だ。なにより、オリスを見て若いと言ったしな。白髪交じりの男に若いなんて言葉は使わないだろ」


 ルードは淡々と当たり前のことを言うみたいにそんな言葉を口にした。


 確かに、12歳の少女が一瞬で魔法を使って誘拐犯を倒して、そこに捕らえられている子供に回復魔法をかけていたのだ。


 普通に考えれば結構ありえない光景だろう。


 ルードに言われて気づいたけど、あの時のオリスさんは一般的に見れば若くは見えない。そんな男の人を見て私が『若い』と言っていたのなら、そんな人は未来のオリスさんの姿を知っている者だけだろう。


 それだけの条件が揃っていれば、私が未来から来たってことも信じるか。


 ていうか、そこまで色々と考えていたとは恐れいった。


 そうなると、何か他の理由をでっちあげて誤魔化そうとしても、多分言い逃れることはできなかったのだろう。


 むしろ、誤魔化すために変な嘘をついていたら、余計に疑われたりしていたかもしれない。


 そう思うと、本当に正直に言っておいてよかったんだろう。


 少し気が抜けて、私はため息まじりに苦笑を浮かべていた。


「それに、そうでもなければ俺が同世代に入試で負ける気もしない」


「え?」


 私が顔を上げると、ルードは口を一文字にして私の顔をじっと見つめていた。なんでこんな話になったのだろうと思いながら、私は学園時代のルードの成績をふと思い出した。


 そういえば、ルードって本来は主席だったんだよね。ていうことは、もしかして、私に負けて悔しがっているってこと?


 ルードから向けられている瞳をじっと見つめ返すと、ルードは私を睨むでもなく、少しだだけ気まずそうに視線を逸らした。


 負けを認めないわけではなく、力を認めてはいるけど、悔しさがあって手放しには相手を褒められない。


 そんな私の知っている、いじらしいルードの性格を垣間見た気がして、私は自然と口元を緩めていた。


「ふふっ、ルードのそういうところ、私好きだよ」


「な、なんだっ、急に」


 昔を懐かしむように感じながら、私は自然とそんな言葉を漏らしていた。多分、私の方が精神年齢が年上だからだろう。

 特に照れることもなく、自然な口調で私はそんな言葉を口にしていた。


 もしかしたら、これが年上の余裕という奴なのだろうか?


 私の真正面からの言葉を前にして、ルードは少し面を食らいながら微かに顔を熱くしているようだった。


 そんな反応をされるとは思っていなかったので、私はルードの反応を見てから少しだけ鼓動の音を速めていた。


 そんな私にちらりと視線を向けた後、ルードはボソッと言葉を漏らした。


「……協力する」


「え?」


「そのアーティファクトを守るんだろ? 俺にも手伝わせて欲しい」


 私は思いがけないルードの言葉を前に、目をぱちくりとさせていた。


 もしかしたら、ルードの力を借りることになるかもしれないとは思っていたけど、私の話を信じたとしても、そう簡単にそんな提案は受け入れらないと思っていたから。


 だから、ルードからそんな申し出をされるとは思えなかった。


「ダメか?」


「い、いや、かなり嬉しいよ? 私からお願いしようと思ってくらいだし……でも、なんで自分から?」


「なんでって、そうしないと俺死ぬんだろ? それに、世界も滅ぶらしいしな」


 ルードは当たり前のことを言うみたいにそんなことを言うと、ため息まじりに苦笑を浮かべながら言葉を続けた。


「二十代で死にたくない。おかしいか?」


 ルードはくだけた感じで、仕方なしといった表情で笑みをこちらに向けてきた。


 久しぶりに見たルードのそんな表情を前に、私も釣られて笑みを零してしまっていた。なんというか、本当に久しぶりにこんなやり取りをした気がして、少しだけ肩の荷が下りた気もした。


「ううん、そんなことないよ。……よろしくね、ルード」


 こうして、私には世界を滅亡から救うための、一人の仲間ができたのだった。


 どうやら、その仲間というものはこっちの世界でも変わらないらしい。


 そんな運命を前に、笑わずにはいられなかったのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本作品ですが、実力不足からPVがあまりにも伸びなかったので、ここで一部完結とさせていただきます!

本来ですと、もう一展開あったとにアーティファクトを守る話で終わる所でしたが、ここで一度締めさせていただきます!


ここまで読んでいただきありがとうござました!


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