選択肢はキャベツしかなかった
何の料理を作るか浮かばないままキャベツをざく切りにした。
包丁を上げるたびキャベツのくずがまな板の外へ飛び散るのを視界の端にぼんやりと捉えながら、自分へ言い訳するように「しかたない」とつぶやいた。
選択肢はキャベツしかなかった。豚の薄切り肉と、野菜室にはキャベツとブロッコリー。こんな状況で、ブロッコリーに何ができるというのか。
(今夜は野菜炒めになるだろう)
そう覚悟した直後だった。
冷蔵庫にキムチを見つけた。
夕飯の時間になると、家族が降りてきた。
「おっ、いい匂いがするね」
「そう?」
私は得意げに熱々の豚キムチを食卓に出した。