今日から私は好きに生きます! 殿下、美しくなった私を見て婚約破棄したことを後悔しても遅いですよ!・短編
十歳のときから七年間婚約していた王太子殿下に、婚約を破棄されました。
昨日、私が学園の食堂で弟とのランチを楽しんでいたときのこと。
王太子殿下が浮気相手の男爵令嬢の肩を抱いて現れ、
「エルトマン公爵令嬢アリア! 貴様との婚約を破棄する! 俺は真実の愛で結ばれた男爵令嬢のミラと結婚する!」
公衆の面前でそう宣言したのです。
突如婚約を破棄されたわけですが、私はちっとも悲しくありませんでした。
むしろ嬉しかったです。
王太子殿下と婚約してからずっと、髪を黒く染められ、地味なメイクを施され、黒縁の眼鏡をかけさせられ、老婦人のように髪をアップするように命じられて来ました。
着ることを許されたのは王太子殿下の髪の色の黒いドレスか、王太子殿下の瞳の色の茶色のドレスのみ。
これらは全て王妃様の命令です。
なので私は謹んで王太子殿下との婚約破棄を受け入れました。
私と王太子殿下との婚約破棄は即日受理されました。
一夜明け、私は清々しい気持ちで目覚めました。
今日からは王妃様の命令に従い、地味な服を着る必要がありません。
なので今日からは好きな髪型をして、好きな服を着て自由に生きようと思います。
「皆様、ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう……? どちらのお嬢様ですか?」
「だ、誰だ……!? あの美人は……!?」
「あんなかわいい子、この学園にいたか?!」
私が登校すると周囲がざわついた。
それはそうでしょうね。
昨日まで魔法の粉をかけ髪を黒く染め、老婆のように髪を高い位置で結い上げ、瞳が黒く見える魔法が施された黒縁の眼鏡をかけ、地味なメイクを施し、黒か茶色の地味なドレスを身にまとっていたのですから。
ですが昨日をもって私と王太子殿下の婚約は破棄されました。
もう自分を偽る必要はありません。
今日から私は生まれ変わるのです。
髪の色を元の金色に戻し、髪をおろし、黒縁の眼鏡を外し、地味なメイクを止めました。
ドレスはあの方の瞳の色の藤色をセレクト。
王妃様から着るように命じられていた、襟元まで詰まった黒と茶色のドレスは、全て暖炉に焚べました。
校門から校舎までの道を歩いていると、元婚約者を見かけた。
王太子殿下はいつものように、男爵令嬢のミラ様を腕にぶら下げている。
ミラ様は桃色のふわふわした髪に、ピンク色の瞳の庇護欲を誘う美少女で、体は華奢なのに胸だけは異様に大きい。
王太子殿下曰く、ミラ様は真実の愛のお相手だそうです。
王太子殿下は黒縁に茶色の瞳で整った顔立ちで、背も高い。
「ごきげんよう、王太子殿下」
私が声をかけると王太子と男爵令嬢が振り返った。
二人は鳩が豆鉄砲を食らったような顔で私を見ている。
「えっ……と?
すまない君はいったいどこのご令嬢だったか?」
王太子殿下は頬を染めて、私のつま先から頭のてっぺんまで凝視していた。
殿下鼻の下が伸びてますよ。
いけませんよ王太子殿下。
真実の愛のお相手がお隣にいるのにそんなだらしない顔をされては。
先ほどからミラ様が殿下を睨んでいることに、殿下は気づいていないかしら?
「王太子殿下、私をお忘れですか?」
「すまないが記憶にない。
君のような美しい令嬢を見たら忘れるはずがないのだが……よければ名前を教えてくれないか?」
「王太子殿下、本当に私が誰か分からないのですか?
殿下には何度もお会いしているのにあんまりですわ」
王太子殿下は困ったように眉尻を下げた。
「すまない、本当にわからないんだ。
意地悪しないで教えてくれ」
「ガラン様、こんな女どうでもいいじゃありませんか!
もう行きましょう!」
ミラ様が王太子殿下の服の裾を引っ張る。
王太子殿下はミラ様を睨み、ミラ様と組んでいた腕を煩わしそうに振り解いた。
王太子殿下、彼女にそんな態度を取ってよろしいのですか?
ミラ様は私との婚約を破棄してまで結ばれたかった、真実の愛のお相手でしょう?
王太子殿下はこれから彼女と結婚して男爵家に婿入りすることになるのですから、ミラ様のことぞんざいに扱わない方がいいですよ。
「王太子殿下とは昨日もお会いしています。
学園の食堂で」
「えっ……?」
「まだお分かりになりませんか?
私は髪型と服装を変え眼鏡を外しただけなのですが、七年の婚約期間、殿下は私の何を見ていたのでしょう……?」
王太子殿下は私の顔をじっと見て、何かに気づいたような顔をされた。
「まさか……! アリア……なのか?!」
王太子殿下が確認するかのように言葉を発する。
「うそっ! アリア様なの?!」
ミラ様が信じられないという顔で、目を大きく見開き私を凝視している。
「そうです、私はアリア・エルトマンです。
気づいていただけて嬉しいですわ」
私は王太子殿下とミラ様の顔を真っ直ぐに見て、ニッコリと微笑んだ。
「嘘だ!
お前がアリアなはずがない!
アリアはカラスのように真っ黒い髪に、闇のような漆黒の瞳だった!」
「ガラン様の言うとおりよ!
アリア様なら老婆のように髪を結い上げ、黒縁のださい眼鏡をかけて、地味な色の時代遅れのドレスを着ているはずよ!
アリア様が流行りのメイクをして、藤色のおしゃれなドレスを着ているなんてあり得ないわ!」
王太子殿下とミラ様がキャンキャン吠える。
「私が地味な格好をしていたのは全て王妃様からの指示でした。
髪を黒く染め王家の色である金髪を隠し、同じく瞳の色が黒く見える眼鏡をかけ、王家の色である青い瞳を隠すように命じられていたのです」
私の父は現国王の弟。
父は母と結婚し公爵家に婿入りした。
私と王太子殿下はいとこに当たる。
王家の血を引く私が、王家の色持ちに生まれても何の不思議もない。
「昨日まで私が着ていたドレスも私の趣味ではありませんでした。
王妃様から殿下の髪の色である黒のドレス、もしくは殿下の瞳の色である茶色のドレスを着るように命じられていたのです」
「母上はなぜアリアにそんな指示を?」
「それは王太子殿下が王家の色である金の髪も青い瞳も、どちらも持って生まれてこなかったからでしょうね」
私の言葉を聞き王太子殿下は青い顔をされた。
王太子殿下はご自身が王家の色持ちでないことにコンプレックスを抱いていましたからね。
「王太子殿下は王妃様と同じ黒髪に茶色の瞳。
王妃様はご自身の産んだ子が王家の色持ちではないことを気に病んでおられました。
王弟である父の娘である私が、王家の色を持って生まれたことが王妃様は許せなかったのでしょうね」
王妃様は息子を王太子にするために王家の色持ちの私を利用した。
それなのに私に感謝するどころか、王家の色持ちに生まれた私に嫉妬し嫌がらせを繰り返した……本当に質の悪い方ですわ。
「同じ理由で弟も王妃様に髪を黒く染められ、瞳が黒く見える眼鏡をかけさせられました」
「お前の弟のフィリップも王家の色持ちだというのか!」
「ええ、そうですわ」
私が答えると殿下のお顔の色はさらに悪くなった。
王家の色持ちに生まれなかったのは王太子殿下のせいではありません。
ですが自分の周りに王家の色持ちが二人もいて、それに気がつかなかったのはいかがなものかと思いますわ。
調べる手段はいくらでもあったのに。
「王家の色持ちでない王太子殿下は本来なら、立太子できませんでした」
国王陛下と王妃様の間にはガラン様しか子ができなかった。
本来なら王家の色持ちではないガラン様は、臣籍に降下させなければならない。
「息子を溺愛している王妃様が国王陛下に泣きつき、王家の色持ちの私と当時第一王子だったガラン様を婚約させました。王家の色持ちの私と婚約したからガラン様は立太子できたのですよ」
「そ、そんなことが……」
王太子殿下はやはりご存知なかったのですね。
王家の色持ちでないと王位を継げないのですから、少し考えれば私か殿下どちらかが王家の色持ちだと気づきそうなものなのですが……。
私と殿下が結婚したとしても、殿下は中継ぎに過ぎません。
私と王太子殿下の間に王家の色持ち子が生まれ、その子が成長したら殿下は速やかに王位を譲る……王家と公爵家でそういう取り決めがされていました。
「だが、俺はアリアと婚約を破棄したが今も王太子だぞ!」
「はい、ガラン様は今日まで王太子です」
「今日までだと?
それはどういうことだ?!」
王太子殿下が怒鳴る。
「王太子殿下が男爵令嬢のミラ様と浮気し、公衆の面前で私との婚約破棄したことに、父が激怒したからですわ。
父は父の派閥の貴族を全員連れて王宮に乗り込み、ガラン様の廃太子を願い出たのです」
父は国内の貴族の半分を自分の派閥に入れています。
父の一声で、父の派閥の貴族は全員仕事を放棄し登城拒否します。
そうなったらお城の仕事は回らなくなるのです。
「俺が廃太子にされるだと!?」
「はい、今頃は王宮でガラン様を廃太子にする手続きが進んでいるはずです」
「俺は国王と王妃の間に生まれたたった一人の王子だぞ!
俺が廃太子にされたら誰が王太子になるというんだ!」
「次の王太子は私の弟のフィリップです。
フィリップも王家の色持ちですし、誰かさんと違って勉強熱心で優秀ですからなんの問題もありませんわ」
ガラン様は馬鹿とは言いませんが、努力が嫌いなので成績がそれなりなんですよね。
「ミラとは別れる!
アリア! もう一度俺と婚約してくれ!
そうすれば俺は王太子のままでいられる!」
殿下ならそうおっしゃると思いました。
でもあなたともう一度婚約するなんてお断りです。
それに私はすでにあの方の……。
「ちょっとガラン様!
あたしを捨てる気!?」
ミラ様が王太子殿下の腕を掴む。
「うるさい!
今はそれどころではないんだ!」
ガラン様がミラ様を突き飛ばした。
突き飛ばされたミラ様はバランスを崩し尻もちをつく。
「あらあら?
真実の愛で結ばれているお二人がケンカですか?」
「ミラとの事はほんの出来心だったんだ!
頼むアリア、昨日のことは謝る!
だからもう一度俺と婚約してくれ!」
王太子殿下が私の肩を掴もうと手を伸ばす。
王太子殿下の手が私の肩に触れる寸前、銀髪の少年が王太子殿下の腕を掴み後ろ手にひねりあげた。
「くそっ! 誰だ!
俺はこの国の王太子だぞ!!」
「僕の婚約者に触れる人間は誰であろうと容赦しない!」
銀色の長髪をたなびかせた長身の美男子が、王太子殿下を威圧した。
「なっ!
アリアの婚約者だと!」
「フリード様、どうしてこちらに?」
「アリアの学園での様子が気になってね」
「フリードとやら、今すぐ
俺の手を離した方が身のためだぞ!
でないと後悔することになるぞ!」
「あら?
王太子殿下はフリード様の事をご存知ないのですか?」
「知らん!」
「宗主国の皇太子の名前を知らないとは…
…この国の王太子はどこまでも愚かだな」
フリード様が王太子殿下の腕を締め上げたまま眉根を寄せる。
「なっ! 皇太子だと……!?」
フリード様の腕を振りほどこうと、暴れていた王太子殿下が急に静かになった。
「フリード様、ガラン様がこの国の王太子なのは今日までです。
明日からは弟のフィリップが王太子です。
フィリップは賢い子ですから、宗主国の皇太子であるフリード様にこのような無礼は働きませんわ」
「アリアの弟なら信頼できるな」
フリード様がアメジストの瞳を細める。
フリード様、このようなところでほほ笑まないでください。
フリード様の笑顔は破壊力が高いですから。
「アリア、こんなときだが君が今身につけているドレス君によく似合ってる。
可愛いよ」
「ありがとうございます。フリード様。
フリード様の瞳の色と同じ色のドレスを選んだのですよ」
「本当かい?
とても嬉しいよ」
フリード様と見つめ合いほほ笑み合っていると、王太子殿下が騒ぎ出した。
「ちょっと待て!
アリア、お前フリード皇太子と浮気していたのか!?」
「王太子殿下と違って私は浮気などしておりません。
フリード様とは幼いときにお茶会でお会いしたことがあるだけです」
「あのとき僕はアリアに一目惚れしたんだ。
アリアに婚約者がいると知り、アリアと結婚することを一度は諦めた。
だが昨日アリアとガラン殿の婚約破棄したのを知ってな。
アリアとガラン殿の婚約破棄の書類が受理されたあと、アリアにプロポーズしたのだよ」
「フリード様は初恋のお相手でしたので、私は即日フリード様からのプロポーズをお受けしました。
幼い頃フリード様とお会いした日、己に親の決めた婚約者がいることを恨みましわ」
「外交のためこの国を訪れていて良かった。
アリアの婚約破棄される日にこの国にいられた事を神に感謝するよ」
「ちょっと待て!
アリアの初恋の人がフリード皇太子とはどういうことだ?!
それにアリアは俺との婚約が嫌だったのか?
俺とアリアの婚約はアリアが僕に一目惚れして、アリアのわがままで成立したんじゃなかったのか!?」
「誰がそんなことをおっしゃったのですか?
私と王太子殿下の婚約は王命でした。
私もお父様も王太子殿下との婚約の話を何度も断ったのですよ。
そうしたら王命で無理やり婚約者にされてしまいました」
「は、母上がそう言っていたのだ……。
この婚約はアリアが望んだことだ、アリアは俺に惚れていると。
だからアリアにはどんな無茶を言ってもいいし、ぞんざいに扱っても構わないと……」
「王妃様がそんなことを。
それで王太子殿下は私とのお茶会をすっぽかし、誕生日に贈り物をせず、パーティでエスコートせず、宿題と王太子の仕事の九割を押し付け、挙げ句の果てにミラ様と浮気して、公衆の面前で私との婚約を破棄したわけですね」
「すまない……」
王太子殿下が消え入りそうな声で言った。
「今さら謝られても遅いですわ」
私が冷たく言い放つと王太子殿下はがっくりと肩を落とした。
「僕は絶対にアリアにそんな酷い仕打ちをしないよ」
「嬉しいです。
信頼していますわフリード様」
「ちょっと待ってよ!
ガラン様が王太子じゃなくなるってどういうこと!」
今まで尻もちをついたまま放心していた、ミラ様が立ち上がった。
「言葉通りの意味でしてよ、ミラ様」
「認めない!
あたしは認めないわ!
あたしはガラン様と結婚して王太子妃になるのよ!」
「ガラン様は王家の色持ちではないので、ミラ様と結婚しても国王にはなれませんわ。
ガラン様が王家の色持ちである私との婚約を破棄しミラ様と結婚する……それはすなわちガラン様が王太子の地位を捨てるということです」
「王太子じゃないならガラン様と結婚しないわ!」
ミラ様はあっさりとガラン様を捨てた。
お二人のおっしゃっていた真実の愛ってなんなのでしょう?
随分と安っぽい愛ですね。
「フリード様って言ったわよね!?
ガラン様なんかよりずっとイケメンだわ!
フリード様の銀色の髪とアメジストの瞳素敵だわ! 美しいわ!
黒髪に茶色の瞳のガラン様よりずっとかっこいいわ!
黒髪に茶色の瞳なんてこの国にはありふれているもの!
あたしはフリード様と結婚するわ!
フリード様あたしにプロポーズして!」
ミラ様がフリード様に突進していく。
「ミラ様、フリード様に近づくのは危険ですよ」
「ほっといてよ!
見てなさい、あんたの婚約者を奪ってやるんだから!」
フリード様に手を伸ばしたミラ様は、あっという間にフリード様の護衛に取り押さえられた。
「ちょっと! なんなのよあんたたちは!
あたしはフリード様の婚約者になる女よ!
あたしに乱暴したことを後悔させてやるんだから!」
護衛に取り押さえられながら、ミラ様が喚いている。
「遅くなりました。フリード殿下」
フリードの護衛の一人がフリード様に声をかける。
「遅いぞ、今まで何をしていた?」
「申し訳ありません。
フリード殿下がアリア様にお会いになる為に、馬車を降りた途端に走り出したので殿下のお姿を見失いました」
フリード様ったら私に会うために、校門からここまで走って来てくださったの? 嬉しいわ。
でも護衛の人をおいてきてはだめよ。
「フリード様、この女をいかがいたしましょう?」
「このアホ王太子と共に牢屋に入れておけ、皇族への不敬罪だ」
フリード様が王太子殿下を護衛に向かって突き飛ばす。
「承知いたしました」
護衛の人たちが王太子殿下とミラ様を縛りあげ、どこかに連れて行った。
二人がいなくなり、ようやく静かになった。
「あんなのがアリアと同じ学園にいるのは危険だ。
アリアが学園を卒業するまで奴らは牢屋に入れておこう」
廃太子されたガラン様は王妃様の実家の伯爵家に養子に入り、ミラ様の家に婿入りする予定でした。
お二人はフリード様に狼藉を働いたので、その話もなくなるでしょうね。
婚約破棄の慰謝料として王太子殿下の所有していた財産は全て差し押さえました。
足りない分は王妃様のご実家の伯爵家に支払っていただきました。
一人息子のガラン様は廃太子にされ、ご実家の伯爵家の資産の半分は差し押さえられた……これで王妃様の求心力もなくなるでしょう。
もしかしたら王妃様は身分を剥奪されガラン様と共に、塔に幽閉されるかもしれません。
「ところでフリード様、どうして学園に?」
「アリアの側にいたくて僕も今日からこの学園に通うことにした。
転校初日だから制服じゃないのは許してほしい」
フリード様は天色のジュストコールを身にまとっている。
もしかして私の瞳の色の服を着てくれたのかしら?
「本当はアリアを帝国に連れて行って、帝国の学園に通わせたかったのだが、この国の貴族はこの学園を卒業する決まりがあるんだろ?」
「そうですが、フリード様は帝国の学園に通わなくてよろしいのですか?」
フリード様は私と同じ十七歳。
フリード様は帝国の学園に通われていたはずですが。
「帝国の学園は一年休学する」
「そんなことしてよろしいのですか?」
確か皇族は帝国の学園を卒業する決まりがあったはず。
「帝国の学園はこの学園を卒業してから通うよ。
やっとアリアと婚約できたのに、アリアと一年も離れて暮らすなんて耐えられない!
アリアも一緒に帝国の学園に通ってくれるだろ?」
「それは構いませんが、なんでもフリード様お一人で決めてしまうのはいかがなものかと思います」
「ごめんね、嫌だった?」
フリード様が眉尻を下げる。
そんな捨てられた子犬のような顔をしないでください。
怒れなくなってしまいますわ。
「いいえ、ちっとも嫌ではありません。
むしろ嬉しいです」
「良かった」
フリード様が花がほころぶように笑う。
フリード様にほほ笑まれるとすべてを許してしまう。
今日から自由に生きようと思っておりましたのに、フリード様の笑顔にほだされて流されてしまうなんて……恋とは恐ろしいものですわ。
――終わり――
読んで下さりありがとうございます。
少しでも面白いと思っていただけたら、広告の下にある【☆☆☆☆☆】で評価してもらえると嬉しいです。執筆の励みになります。
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新作投稿開始しました!
婚約破棄ものです!