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第98話 海賊の根拠地オーランド島

 ノルン王国の反エイリーク王グループが海賊をしていることが判明した。

 海上交易路の安全を確保するために、俺たちバルバル、アルゲアス王国、ノルン王国の三者で共同作戦を行うことになった。


 俺たちはバルバルのバイキング船に乗り、ノルン王国の王都トロンハイムから東へ向かった。

 ジェシカが夏の海風を浴びて流れる髪に手をやりながら、ノンビリした声を出す。

 すっかり戦に慣れっこだ。


「ねえ、ガイア。海賊たちは、どこにいるの?」


「オーランド島というところを根拠地にしているらしい」


「来た道を戻ってるよね?」


「そうだよ。オーランド島は、ノルン王国と交易都市リヴォニアの中間にあるんだ」


 オーランド島――交易都市リヴォニアの北西に位置する島だ。


 交易都市リヴォニアからノルン王国へ至る海路の北にあるので、交易都市リヴォニアとノルン王国を行き来する船を襲うのにピッタリの島である。


 ノルン王国からの情報によれば、海賊をしている連中は、このオーランド島を根城にしているそうだ。


「戻るのは、じれったいわね。私は先へ進みたいな」


「ジェシカの言うことはわかるけど、海路の安全確保は大切だからね。ジャムやメープルシロップを売るためには、この海路を安全にしないと」


「まあ、そうよね。しょうがない! 頑張りますか!」


 ジェシカは帆柱に寄りかかりながら弓の手入れを始めた。


 この海上交易路は、ノルン王国にとっても、交易都市リヴォニアを傘下に収めるアルゲアス王国にとっても重要なルートだ。

 シーレーンの重要性は、異世界でも変わらない。


 ソフィア姫、ポポン将軍ともに、海賊退治に即賛成した。


 ノルン王国のエイリーク王は、『うおー! 戦だ! 燃えるぜ!』と騒いでいた。

 戦バカ丸出しであるが、結果的に一番得しているのはエイリーク王じゃないかと思う。

 自分の反対勢力を俺たちと共同で討伐出来るのだ。


(最終的にオイシイところを持って行くタイプかな? 手柄を独り占めされないように気をつけないと)


 俺はちょっとだけエイリーク王に注意を払うことにした。


 今回、参加する軍船は十三隻だ。


 ノルン王国:中型ガレー船五隻

 アルゲアス王国:大型ガレー船三隻、小型快速ガレー船二隻

 バルバル:バイキング船三隻


 ノルン五、アルゲアス五、バルバル三。


 報酬――海賊からふんだくる戦利品――は、参加した船の隻数の比率を元に話し合いの上で分配するとなった。


 この編成は、ポポン将軍が考えた政治的な配慮が反映されている。

 ノルン王国としては、アルゲアス王国が船数を同じにすることで対等な関係を示す。


 アルゲアス王国側としては大型ガレー船を参加させることで、『アルゲアス王国側が旗艦』に見える。大国アルゲアス王国として威信を示した――と本国に報告するのだ。


 そして、俺たちバルバルは国ではない。

 あくまでヴァッファンクロー帝国に臣従する独立色の強い地方勢力というポジションだ。

 主力はあくまで、ノルン・アルゲアスの連合艦隊で、俺たちバルバルはお手伝いの補助戦力という位置づけだ。

 両国より一歩引いた三隻で丁度良いのである。


 ノルン王国から提供された情報によれば、海賊は中型ガレー船が一隻と小型のガレー船が三隻、あとは漁船程度の小型船が数隻いる程度らしい。


 まず、負けない戦力だ。


 戦力だが……。


「ジェシカおねーさまー!」


 これである。

 心配の種は、ソフィア姫だ。


 オーランド島が近づいて来たので、俺たちは帆を畳んで船足を落した。

 ノルン・アルゲアスの船に先を譲るためだ。


 アルゲアス王国の旗艦である大型ガレー船が、アルゲアス王国の旗を勇ましく風になびかせながら、俺たちのバイキング船を追い抜いていく。


 甲板からソフィア姫が、ジェシカに向かってブンブンと手を振っている。


 ソフィア姫が戦に参加すると言ってきかなかったのだ。

 俺は、ソフィア姫とポポン将軍とのやり取りを近くで聞いていた。


『姫様は、旗艦でゆるりとお待ち下さい』


『まあ! わたくしは団長ですのよ! わたくしが陣頭に立たずして誰が陣頭に立つのです!』


『いや、しかしですな。国王陛下や王太子殿下と一緒の勝ちが見えた戦場の方がよろしいかと』


『あら! 戦力差から負けはございませんことよ!』


『姫様! 女性が戦場に出るのは、大変危のうございます!』


『あら! ジェシカお姉様は、女性だけど戦場で活躍されているわ! バルバルには他にも女性兵士がいましたわ!』


『ぐぬぬ……』


 結局、ポポン将軍はソフィア姫に押し切られてしまった。


 やる気満々で大変勇ましいお姫様である。

 ヴァッファンクロー帝国のムノー皇太子に、ソフィア姫の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいだ。

 新しい扉が開くんじゃないだろうか?


 アルゲアス王国は尚武の気風が強い国だ。

 ポポン将軍としては、王族が戦うと言っているのを、心情的に止められなかったのだろう。


「ソフィアちゃーん! 危ないことしちゃダメよ~!」


「は~い!」


 ジェシカがアルゲアス王国語でソフィア姫をたしなめた。


 船尾で舵を取っているロッソが、バルバルの言葉でぼやく。


「まったくよう。戦場に出て来て『危ないことしちゃダメよ~』は、ねえだろう!」


 ロッソがジェシカの真似をしたので、船中がドッとわいた。

 リラックスした良い雰囲気になったところで、俺はバルバルたちに檄を飛ばす。


「よーし! もうすぐ戦だ! いつも通りやるぞ。海賊はお宝を持っているはずだ! それにガレー船も戦利品になる! 分捕るぞ!」


「「「「「おう!」」」」」


 さあ! お仕事! お仕事! 海賊退治だ!

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― 新着の感想 ―
ガレー船か…。 漕ぎ手の奴隷ごと分捕れるなら、即座に使用できるけど、最初から帆船つかってる主人公たちは、超絶糞便臭いのには耐えられるのかな?
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