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【コミック発売中】蛮族転生! 負け戦から始まる異世界征服  作者: 武蔵野純平
第六章 ノルン王国

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第94話 当たらなければ、どうということはない

 俺たちが乗るバルバルのバイキング船は、風を受けグングン増速した。

 アルゲアス王国の船団から抜けだし、三隻のバイキング船がノルン王国の船団へ向かう。


 ノルン王国の船団から、ウォークライが響く。


「「「「「「オッ! オッ! オッ!」」」」」」


 俺はノルン王国のウォークライに負けないデカい声を出し、ノルン王国語で怒鳴った。


「オイ! この船団はアルゲアス王国とバルバルの親善使節団だ! 戦闘する意思はない!」


「「「「「「オッ! オッ! オッ!」」」」」」


「平和的な話し合いを求める!」


「「「「「「オッ! オッ! オッ!」」」」」」


「繰り返す! こちらに戦闘する意思はない! 話し合いを――」


「「「「「「オッ! オッ! オッ!」」」」」」


「えーい! この分からず屋どもめ!」


 俺の言葉は、ウォークライでかき消された。

 もう、こうなったらやむを得ない。拳で語るしかない。


 俺はバルバル語でバイキング船に乗った仲間たちに指示を出す。


「戦闘準備! 直接旗艦に乗り込むぞ! ガウチ! 操船は任せる! ノルン王国の武器は強いぞ! しっかり盾を掲げて矢を防げ!」


「「「「「「おう!」」」」」」


 バルバルの野太い声が響いた。


 ノルン王国の船団が近い。既に矢戦が可能な距離だ。

 鋭く風を切る音が聞こえ、矢が飛んで来た。

 ノルン王国のガレー船から打ち下ろしの一斉射だ。


「盾だ!」


 俺たちは盾を構えて矢を防ぐ。矢の密度は大したことはない。

 それに俺たちバルバルのバイキング船は、海上を高速で移動する。

 ノルン王国の射手はガレー船の航行速度を予想して矢を放ったのだろう。多くの矢が

 水面の泡に飲まれて消えた。


「早い!」


「何だ!? あの船は!?」


 どこかの赤い人が登場するシーンのように、ノルン王国の射手が驚きの声を上げている。


「当たらなければ、どうということはない……」


 俺は独りごちる。


「火矢だ! 帆を狙え! グアッ!」


 ノルン王国のガレー船の舷側に立ち大声で指示を出していた毛むくじゃらの大男が、誰かの矢に射られ倒れた。

 舷側から海へ真っ逆さまに落ちていく。


「ありゃ~。ごめんね、ガイア。当てちゃった!」


 ジェシカだ。

 可愛く『てへぺろ』しているが、ジェシカの放つ矢は強烈だ。

 揺れる船上と強い海風の中でも、ジェシカの弓術は冴え渡る。


「気にするな! 当てていけ!」


 三隻のバイキング船から、次々とエルフが矢を放つ。

 速射かつ連射。

 ガレー船の舷側に顔を出していたノルン王国の兵士に次々と矢が着弾し、海へ落ちていく。


「使い手がいるぞ!」


「頭を出すな! やられるぞ!」


 あっという間に射手は無力化だ。


「「「オッ! オッ! オッ」」」


 ノルン王国の旗艦を護る小型の船がウォークライを響かせながら近づいてくる。

 小型の船は手こぎボートを一回り大きくした程度で、船には得物を手にしたイカツイ男が三人のっている。


 俺たちの横腹をつこうと、左側から接近して来た。


 船尾で舵を取っていたロッソが槍を手にした。

 片手で舵を押さえたまま、槍を水中に突き刺し、ボートを持ち上げる。


「あらよっ!」


 ロッソは怪力で小型のボートをひっくり返した。

 イカツイ男たちは、海に落ちた。


「ぶわっ!」


「うわっ!」


「くそっ! やりやがったな!」


 三人はひっくり返った小型の船にしがみついている。


「俺たちゃ一仕事するので忙しい。後で助けてもらいな」


 ロッソはぬれねずみの三人に向かってヒラヒラと手を振った。


「ガレー船! 至近!」


 船首近くに座るバルバルが怒鳴る。


 俺たちの船は右へ、後ろの二隻は左へ進む。

 中型のガレー船といえども、俺たちのバイキング船に比べると遥かに大きい。


 俺たちは山を見上げるようにして、ノルン王国のガレー船の横位置ですれ違おうとしていた。

 船長のガウチが叫ぶ。


「横帆を畳め!」


 ワッと船員たちが動き出す。

 横帆を担当する船員が動索――帆を操作するためのロープ――を引く。

 横帆が畳まれ、ガクンと船足が落ちる。


「取り舵一杯!」


「あいよ! 取り舵!」


 ガウチの指示でロッソが舵を切り、バイキング船の船首が左へ向く。

 ノルン王国のガレー船から悲鳴が上がる。


「うわっ!」


「連中ぶつかってくるぞ!」


 残念でした。

 違うんだ。


 ガウチがドンピシャのタイミングで次の指示を出した。


「縦帆! 出せ!」


 帆柱の後ろについている小さな縦帆。

 地球世界のバイキング船にはない。

 俺が取り付けさせた、バルバルバイキング船のオリジナル装備だ。


 動索を引くと畳まれていた縦帆が展開し風を受ける。


 縦帆の受けた風の力と取り舵。

 バイキング船が海上でドリフトするように急旋回する。


 強烈な遠心力がかかり、船体がきしむ。

 俺たちは振り落とされないように船につかまる。


「縦帆畳むぞ!」


 みんなが船にしがみついている中、ガウチが自分で動索を引いて縦帆を畳んだ。


 バイキング船は慣性を使ってコマのように回り、波を押しのける。

 ドンと横腹をノルン王国のガレー船にぶつけて止まった。


「おいっ! あいつら横付けしやがったぞ!」


「何て腕だ!」


 ノルン王国のガレー船から、ガウチの操船に感嘆の声が上がる。


 俺は立ち上がって指示を出した。


「ロープを投げろ! 乗り込むぞ! 白兵戦だ!」

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― 新着の感想 ―
ちょっと前まで田舎の蛮族だったのに海の一族かなw
人の話は聞こうよ・・・
大声で指示を出していて毛むくじゃらの大男 誤字かな? 指示を出していた
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