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第91話 ポポン将軍

 俺たちは、アルゲアス王国の王都クインペーラから大河を伝って交易都市リヴォニアへ。


 交易都市リヴォニアでは、ソフィア姫は歓迎式典、俺たちバルバルは店を訪問した。

 交易都市リヴォニアにおけるバルバルのアンテナショップである。


 店長、店員とも全て地元リヴォニアの住民だ。

 俺は、岩塩、メープルシロップ、ジャム、マーダーバッファローの角と毛皮を店長に預けた。

 交易都市リヴォニアは、ヨソ者と取り引きをしたがらない閉鎖的な気質なので、店長と店員に任せることにしたのだ。


 もちろん、帳簿はしっかりチェックをさせてもらった。

 問題なし!


 交易都市リヴォニアを出航し、北西に進路を取った。

 アルゲアス王国の船団が先へ進み、俺たちバルバルはゆっくりと後を進む。


 俺たちバルバルにとって北西は未知の海域なので、アルゲアス王国の船団が水先案内人になってくれて非常に助かる。



 ――交易都市リヴォニアを出発してから十五日。


 俺たちバルバルの三隻のバイキング船とアルゲアス王国の船団は深い入り江に入った。

 入り江の両側に切り立った高い崖が続く。

 崖は灰褐色の岩が削れて出来たようで、夏を映す緑の間からゴツゴツした壁面が見える。


「ふわ~! 凄い光景だね!」


 ジェシカが長い耳をピコピコ動かしながら感嘆する。

 俺は初めて見る景色に圧倒され、ため息をついた。


「ふう……凄いな! これは内陸ではお目にかかれない!」


 入り江の青い海の色と灰褐色の崖。

 崖に生える低木や草の緑。

 荒々しさと美しさが同居した壮大な景色を、俺たちは堪能した。


 しばらくすると、大トカゲ族のロッソが舵を取りながらつぶやいた。


「しかし、これ……大丈夫か? 崖の上から岩を落されたら堪らんぞ!」


 俺はハッとして崖の上を見る。

 崖の上には山羊の群れがいて、ノンビリと草を食んでいた。

 スキル【スマッホ!】で確認したが、俺たち以外に人はいない。


「ロッソ。大丈夫そうだ」


「そうか。だが、気を緩めないようにしようぜ。ここら辺りは、俺たちの知らない海だ」


「そうだな。気を引き締めて行こう!」


 俺は船員たちに注意喚起をする。


 船首に立つ船長のガウチが大声で俺を呼ぶ。


「ガイア! 姫様が呼んでるぞ!」


 ガウチの指さす方を見ると、ソフィア姫の座乗船で緑の旗が振られた。


 緑の旗は、『話があるから、こちらの船に来い』という意味だ。


 なぜ、こんなやり取りをするかというと、航海初日にソフィア姫が俺たちバルバルの船にダイブしたからだ。


 アルゲアス王国としても、バルバルとしても、『こんなことが続いては堪らない』ということで、俺とジェシカがアルゲアス王国の船に訪問することにしたのだ。


 アルゲアス王国では旗を使った信号が決まっていたので、俺たちバルバルも取り入れて両者共通のプロトコルとした。


 ガウチの指示で俺たちが乗るバイキング船が、アルゲアス王国の大きなガレー船にゆっくりと近づく。


 ガレー船から縄ばしごが下ろされ、俺とジェシカは縄ばしごを上ってソフィア姫の座乗船に乗り込んだ。


「ジェシカお姉様!」


「ソフィアちゃん!」


 俺とジェシカが甲板に上がるとソフィア姫が出迎えた。

 早速、ソフィア姫とジェシカがキャイキャイおしゃべりを始める。

 ソフィア姫の侍女たちもすっかり慣れて、少し離れて二人を見守っている。


「やれやれ。ガイアさんたちには、毎日申し訳ないですな」


 俺に話しかけてきたのは、ポポン将軍だ。

 本名は、ポポ・ポポッポなんたらという、やたらポの付く名前で覚えられない。


「いえ、貴国船団には水先案内をしてもらっていますから、これくらいは」


 俺はポポン将軍に丁寧な口調で答える。


 ポポン将軍は、白髪の老人だ。

 昔、大きな戦功をいくつも挙げたらしく、アルゲアス王国では『老ポポン』と呼ばれ敬意を払われている。

 ただ、かなり高齢のため、家督は息子さんに譲って、ポポン将軍は半分引退しているような状態だそうだ。


 今回、急遽ソフィア姫の親善使節団結成が決まったため、半分引退して時間のあるポポン将軍が同行することになった。

 ポポン将軍は今回の親善使節団の副団長として、軍の実務を取り仕切っている。

 年老いたとはいえベテランの将軍なので、しっかりと船団を見ているようだ。

 俺もポポン将軍を頼もしく思っている。


(相変わらず独特の髪型だな)


 俺はポポン将軍のヘアースタイルを見て微妙な気持ちになる。


 ポポン将軍は長い白髪を首の左右で丸めているのだ。

 大きなロールパンが首の左右にあるように見える。


 非常にユーモラスな髪型なのだが、これにはキチンとした理由があって、何でも『戦場で首を守るため』だそうだ。


 この話を聞いたロッソがとても感心して、カツラを着用するか真剣に悩んでいた。

 ロッソは頭髪が、ほとんどないからな……。


 俺はポポン将軍に話を振る。


「この辺りは波が穏やかで、景色が素晴らしいですね」


「まったくですな。こういう深い入り江を、ノルン王国ではフィヨルドというそうですよ」


「フィヨルド……」


 ノルン王国は、これから訪れる北方の国だ。


 以前、商業都市リヴォニアでノルン王国の商人が、俺たちバルバルのジャムを絶賛していた。

 ノルン王国とバルバルで交易が盛んになれば良いと、俺は期待している。


「ほれ! 見えてきましたぞ!」


 ポポン将軍が指さす先に、ノルン王国の王都トロンハイムが見えてきた。

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― 新着の感想 ―
妹君が同行中によその国に行くのですか 案内してくれるのは良いのですが大丈夫かな?
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