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第90話 間話 ポーション爆誕!(五章最終話)

 ガイアたちの留守中に忙しい人物がもう一人いる。

 エルフ族の族長エラニエフである。


 エラニエフは、エルフ族の居住地域で火薬生産にいそしんでいた。


 エルフ族の村外れにある木製の小屋が火薬工場になっていた。


 木炭を丁寧にすりつぶす。

 秤を使って木炭、硫黄、硝石を、指定された分量で混ぜ合わせる。

 そして火気厳禁。


 丁寧さが必要な作業なので、エルフ族の老婆が作業にあたっていた。


 エラニエフは切りの良いところで作業を切り上げ、三人のエルフの老婆に声を掛ける。


「では、御婆様方。私は他の作業を見てきます。よろしくお願いします」


 老婆三人は、手を動かしながらエラニエフに笑顔で答える。


「あいよ」


「エラ坊は立派になったね」


「そうだね。立派な族長だよ」


 エラニエフは穏やかな微笑みを返して小屋を出た。


 次にエラニエフが向かったのは、ツリーハウスだった。

 ツリーハウスはエルフの伝統的な家で、大木の太い枝に板を渡して建築する。


 エラニエフは、木製のハシゴを登って大きなツリーハウスに入った。

 ツリーハウスの中には、乾燥した薬草など薬の原料が山積みになっている。

 このツリーハウスは、薬の研究施設なのだ。

 薬師として活動する五人のエルフが働いている。


「どうだ?」


 エラニエフは、五人のエルフに声を掛けた。

 エラニエフの問いに、薬師の女性エルフが答えた。


「興味深い素材だが、いまだ薬効は不明だ」


 薬師の女性エルフは、マーダーバッファローの角を持ち上げた。


 マーダーバッファローの角は、キリタイ族からの贈り物だ。

 キリタイ族は火薬の礼にと、マーダーバッファローの肉と角をエルフ族に贈っている。


 キリタイ族としてはマーダーバッファローの角を装飾品として家に飾る程度に考えていたが、エラニエフたちエルフ族は薬に材料になるのでは? と考えていた。


 エラニエフは顎に手を当てて考え込む。


「ふむ……。マーダーバッファローは非常に強力な魔物だ。角には何らかの薬効があると思うのだが……」


「可能性は高い。例えば、ホーンラビットの角は、解熱、鎮痛に効果がある。この角にも何らかの薬効があるのではないかと、私たちは考えている」


 ツリーハウス内のエルフ全員が深くうなずいた。

 女性のエルフは続ける。


「こうなったら実地で試すしかない」


「実地?」


「粉にして飲んでみる」


 女性エルフの言葉に、エラニエフは眉をひそめた。

 自分の体を使って人体実験をすると言っているのだ。


 エラニエフも薬の調合が出来る。

 族長であり、優秀な薬師でもある。


 未知の素材を体に取り込み薬効を確認する――確かに手っ取り早い方法だが、危険は大きい。


「……大丈夫なのか?」


「少なくとも毒性はないと確認済みだ」


 エラニエフは決断した。


「わかった。研究を続けてくれ」



 *



 ――一月後。


 薬の研究を行うエルフたちが歓声を上げた。


「やった!」


「完成した!」


「素晴らしい!」


 エルフたちの声はツリーハウスの外まで響いた。

 エラニエフが何事かと駆けつけた。


「どうしたのだ?」


「エラニエフ! これを見ろ!」


 薬師の女性エルフが、木のカップに入った液体を見せた。

 液体は薄い水色をしている。


 エラニエフは疑問を持った。


「何だ? この色は? 薬湯であれば緑色だが?」


「フフフ……見ていろ!」


 女性のエルフはナイフを握ると自分の腕を切りつけた。

 腕から鮮血が飛び散る。


「なっ!?」


 エラニエフは驚き慌てるが、女性は笑顔で水色の液体を飲んだ。

 女性が水色の液体を飲み込むと、女性の体がほんのりと光り、みるみるうちに腕の傷が塞がれた。


 数秒後、女性の傷は完璧に回復した。

 女性は誇らしげに胸をはる。


 エラニエフは、女性の腕をつかみ傷がないことを確認すると、信じられないと首を振った。


「一体何が……、何が起きたのだ!?」


「見よ! エラニエフ! これがエルフ伝説の薬! ポーションの力だ!」


「ポーション!? 失伝した魔法薬か!」


 薬師のエルフたちは、ニヤリと笑う。


 エルフ族には独自の技術がある。

 魔法や魔導具。

 そして製薬である。


 重要な技術は書物には残さず口伝として、師匠から弟子へと伝えられた。

 口伝であるので、秘密は守られるが欠点もある。


 師匠が弟子に伝える前に亡くなってしまうと、重要な技術の継承が行われないのだ。

 ポーションは瞬時に外傷を治す魔法薬として、かつて存在していたが失伝してしまったのだ。


 薬師の女性エルフは、自分たちの研究成果をエラニエフに伝える。


「マーダーバッファローの角自体に薬効はなかった。しかし、薬効を激増させる効果がある」


「薬効を激増? つまり薬の効き目を大幅に良くする効果があるのか?」


「そうだ」


「なるほど……それでポーションが出来たのか……!」


 エラニエフはポーションがもたらす影響について考えた。


(ポーションは戦で外傷の治療につかえる。兵士の傷がすぐに治るということは、戦力の補充が容易になるということだな……。それに、マーダーバッファローの角だ……。薬効を激増させるということは、様々な薬に応用できる素材だ!)


 薬師の女性エルフは、エラニエフに告げた。


「エラニエフ。マーダーバッファローの角を確保してくれ!」


「うむ!」


 ―― 第五章完 ――

◆------------作者より------------◆


今話で五章は終了です!

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― 新着の感想 ―
エルフ族なのにポーションの作り方伝わってなかったんかい!
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