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【コミック発売中】蛮族転生! 負け戦から始まる異世界征服  作者: 武蔵野純平
第五章 七つの海

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第89話 間話 ガイア留守中のバルバル~キリタイ族

 ガイアたちは旅に出たが、バルバルたちは忙しく働いていた。


 ブルムント族の本村落ではアトスの指揮で床下の土が集められ、アトスの妻ケイトが女衆を率いて古土法で硝石を精製した。


 他の部族も忙しい

 ジャム作り、メープルシロップの採集と煮詰める作業、ジャムやメープルシロップを入れる器の制作、薪集め、炭焼きなど仕事は沢山あった。


 港町オーブでは、大トカゲ族の男衆が海に潜って桟橋作り、大トカゲ族の女衆は海女になり海産物を採取する。


 そして一番忙しいのはキリタイ族である。

 キリタイ族は新天地で躍動していた。


「よし! 逃げろ!」


「ハーッ!」


「ホウホウ!」


 キリタイ族の囮部隊が、マーダーバッファローを挑発し逃走に移った。

 三騎の囮部隊が平原を疾走する。


「ブモー!」


 囮部隊を十頭のマーダーバッファローの群れが追う。

 囮部隊は、マーダーバッファローがついてこれるように適度な距離を保って逃げた。


 やがて囮部隊は火薬を埋め込んだ地点を通過した。


「離脱しろ!」


「ハーッ!」


「ハッ! ハッ!」


 三騎の囮部隊は一気に加速して火薬を埋め込んだ地点から離れた。


「ブモー!」


 追うマーダーバッファローは、罠――火薬が地面に埋め込まれているとは知らない。

 逃げる囮部隊を怒りにまかせて追いかける。


 マーダーバッファローの一群が罠を仕掛けた地点に到達すると、隠れていたキリタイ族が火矢を放った。


 強烈な爆発音が草原に響く。

 マーダーバッファローの一群が吹き飛ぶ。


 キリタイ族族長のバルタが馬上から、たどたどしいバルバルの言葉で指示を出す。


「トドメ! イケ!」


「「「「「おう」」」」」


 指示を受けたのは、バルバル諸部族から参加した力自慢の男たちだ。

 大剣を持って一斉に駆け出す。


「どっせい!」

「おりゃ!」


 マーダーバッファローは足をやられて動けない。

 男たちは畑仕事をするように大剣を振り下ろしマーダーバッファローの首を切り落とした。


「ヨシ! ハコベ! カイタイ!」


 バルタたちキリタイ族は、カタコトではあるがバルバルの言葉を話せるようになっていた。

 バルバルの男たちと毎日顔を合わせ、一緒に戦い、解体し、メシを食う。

 共同生活を続けるうちにすっかり打ち解けていた。


 キリタイ族は、バルバルの居住領域北部に広がる平原を着々と制圧していた。

 マーダーバッファローをおびき寄せ火薬で吹き飛ばし、バルバルの力自慢がトドメを刺す。

 マーダーバッファローを小川に運び、解体する。


 すっかり一連の仕事に慣れ、全員がスムーズに動く。

 毛皮と角は販売用に、肉は参加者に分配し、余剰分は干し肉にする。


 バルタは全て順調だと満足した。


 キリタイ族とバルバルの男たちが小川でマーダーバッファローの解体をしていると、キリタイ族の男がバルタに話しかけた。


「族長。問題が一つ」


「どうした?」


「内臓をどうしましょうか?」


「むっ……」


 バルタは眉根を寄せた。

 マーダーバッファローを解体すると、内臓を捨てなければならない。


「この辺りは、なぜか鳥がいないな……」


「そうです。鳥が食べないので草原に捨てるわけにもいきません」


 以前、キリタイ族が住んでいた領域には、鳥が飛んでいた。

 羊を解体し不要な内臓を草原に捨てておけば、鳥が食べてくれたのだ。


 だが、キリタイ族が支配領域を広げている新たな草原には、不思議なことに鳥がいなかった。

 馬に食べさせる草に悪影響が出るかもしれないので、内臓を草原に捨てるのははばかられた。


 マーダーバッファローの内臓処理は、キリタイ族の中で問題になっていたのだ。


 しばらく考えてバルタが決断した。


「よし! 山に埋めよう!」


 山とは、バルタたちが作成している肥料のことである。


 バルタたちキリタイ族は、ガイアの依頼で肥料作りをしていた。

 簡易な屋根と囲いを作り、馬糞を集めて山にしていた。


 もちろん、この山は硝石丘法で硝石作りであるが、バルタたちキリタイ族はガイアから肥料と説明されている。

 キリタイ族は、『この山は時間が経つと肥料になるのだ』と信じている。


「族長……大丈夫ですかね? 肥料の質が悪くなったりしませんかね?」


「大丈夫だろう。試しに、山一つか二つに内臓をすき込んでみろ。ダメなら他の方法を考えよう」


「そうですね……やってみますか!」


 バルタに指示を受けたキリタイ族の男は、他に良い方法を思いつかなかったので硝石丘法をしている山にマーダーバッファローの内臓をすき込んだ。


 これが後にとんでもない結果をもたらすのである。


「さて! 肉を分けたら干し肉を作れ! 誰かエルフのところに火薬をもらいに行け! そうだ! 土産に角を持って行ってやれ!」


 バルタは元気な声で指示を出す。


 全ては順調。

 空には太陽。

 草原と風。

 馬のいななきと笑顔の仲間たち。


 バルタは満足した。

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― 新着の感想 ―
キリタイ族に内臓料理はまだない・・・
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