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第76話 バルバル族長たちとキリタイ族

 俺はブルムント族の本村落に戻ると、すぐに火薬生産の手配を始めた。


 古土法で硝石を精製するのは、ケイトおばさんをリーダーにしてブルムント族の女衆にお願いした。

 ケイトおばさんは、大釜で大人数の料理をするのに慣れているので、古土法で土を煮るのに適している。


 そして、ケイトおばさんは、アトス叔父上の奥さんであり、俺の叔母である。

 ちょっとおしゃべりなところがあるが……、まあ、信用がおけるので、硝石精製作業の責任者に適任だ。


 だが、俺は念を入れて、『硝石は薬の材料になる』とケイトおばさんたち女衆に伝えた。

 どこかでポロッと口を滑らすかもしれないからね。


 火薬の製造は、エルフの族長エラニエフにお願いした。

 エラニエフはジェシカの叔父、つまり俺の義理の叔父だ。


 エルフは言葉が違うので、秘密を守りやすい。

 さらに、薬の調合をするので、配合など火薬製造作業に合っている。


 エラニエフは、俺の依頼を快諾してくれた。


 だが、人手が足りない。

 俺はエルフに混じって火薬製造に精を出した。



 港町オーブでキリタイ族と別れてから半月後。

 ついに火薬の準備が整った。


 マーダーバッファローを火薬を使って狩る。

 果たして上手く行くかどうか?

 俺は心配よりもワクワクする気持ちの方が大きかった。


 港町オーブでキリタイ族と合流し、マーダーバッファローのテリトリーである草原へ馬で向かう。


 バルタが俺に馬を寄せてきた。


「ガイアよ。今回は客が多いな」


「ああ。アトス叔父上の発案だ」


 今回のマーダーバッファロー戦に、俺はゲストとしてバルバル諸部族の族長を呼んだ。


 これはアトス叔父上の提案で、まだキリタイ族に会ったことのないバルバル諸部族の族長をキリタイ族と引き合わせること、そして火薬という新兵器のお披露目だ。


 もちろん、火薬の威力を見せつけることによって、俺とブルムント族の立場を強くする政治的な狙いもある。


 バルタがふうっと息を吐いた。


「族長たちが、友好的で良かった」


 俺は大きく目を開いて、バルタを見た。


「珍しくまともなことを言うな……」


「ガイアは我のことを何だと思っているのだ!」


「デリカシーの欠片もないマイペース男」


「ヒドイぞ!」


 俺たちはキリタイ語でギャアギャアと仲良く言い合いをした。

 周りにいるキリタイ族は、俺とバルタの会話を聞いてゲラゲラ笑っている。


 なかなか良い雰囲気だ。


 バルタは楽天的で明るい男だから、キリタイ族の一行は新たな土地でも明るい雰囲気を保てている。


(こういうところは見習おう)


 俺はバルタから一つ学ばせてもらった。



 さて、バルバル諸部族の族長だが、馬を持っていない者がほとんどだ。

 族長で馬を持っているのは、大トカゲ族のロッソとエルフ族のエラニエフだけ。


 そこで、キリタイ族にお願いして二人乗りをしてもらった。

 各部族のリーダーは、キリタイ族の子供の後ろに乗っているのだ。


「なあ、バルタ。なぜ、子供の後ろにバルバルの族長たちを乗せたんだ?」


「何を当たり前のことを聞くのだ? そりゃ子供の方が軽いからだ。二人乗るのだから馬に負担がかからないようにしないとな」


 バルタの言い分はもっともだが、バルバルの族長たちの中には不満を感じている者もいる。


「なんでガキの後ろなんだ?」


「おーい! ガイア! きれいなおねーちゃんの後ろにしてくれよ!」


 俺は苦笑いして、バルバルの言葉で返事をする。


「ここに独身の女はいないぞ。みんなキリタイ族の奥さんだ」


「なんだよ~。ガッカリだな~」


「オマエ! かみさんに言いつけるぞ! 他の女に色目を使ってましたよぉ~ってな!」


「ひえっ! ガイア! ひでーよ! かーちゃんには、黙っていてくれよ!」


 俺と族長のやり取りに、他の族長たちがドッと沸く。

 バルバルは家族を大事する。

 愛妻家や恐妻家が多いのだ。


「せめてアトスの後ろとかさ! おい! アトス! 乗せろよ!」


「ワシの馬術じゃ逃げ切れんぞ。死にたくなければ、キリタイの後ろに乗せてもらえ」


 アトス叔父上が、シッシと手を振る。


 俺は苦笑をしながら、不満を感じている族長たちに説いて回った。


「キリタイ族は子供でも馬を自在に操る。俺やジェシカより、数段上手い。それに、子供の方が体重が軽いから、逃げ足も速くなる」


「それはわかるが……」


「これから行くのは平原だ。森と違って遮蔽物がないだだっ広い土地だ。マーダーバッファローから逃げるには馬で走るしかないんだ」


「ちぇ! わかったよ! けど、この子供大丈夫なのか?」


 俺は不平を鳴らす族長の言葉を、バルタに伝えた。

 するとバルタは胸をドンと叩いた。


「キリタイ族の馬術は大陸一だ! その子は馬の上で乳をもらい、馬の上で寝て、馬の上でメシを食って育ったんだ。小さくても一人前の騎手だ! 戦で後れを取ることはない!」


 バルタの言葉を聞いて、キリタイ族の子供たちが誇らしげに胸を反らす。


 俺がバルタの言葉を翻訳すると、バルバルの族長たちから『おお~!』と感嘆の声が上がった。

 バルバルは勇ましい男が好きだ。


 バルタの勇ましい言葉に、バルバルの族長たちが沸き立つ。


「馬上で乳とは、凄いな!」


「うむ。我らとは、まったく生活習慣が違うな!」


「そうか。大陸一の馬術か!」


「頼もしいぞ!」


「それじゃあ、よろしく頼むぜ!」


 翻訳する俺を介してだが、各族長とバルタの交流が良い雰囲気で行われた。

 アトス叔父上の狙い通りだ。


(さすがアトス叔父上。普通に紹介して回るよりも戦場の方が、打ち解けるのが早いというわけだ)


 俺たちは、丘を越えて平原に入った。

 もう、魔物のテリトリーだ。

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― 新着の感想 ―
現地の異世界では本気で火薬を実戦で使うのは初めてかな? 恐ろしい・・・
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