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【コミック発売中】蛮族転生! 負け戦から始まる異世界征服  作者: 武蔵野純平
第五章 七つの海

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第74話 ケツが痛い話

 俺たちは港町オーブを出発してキリタイ族を追った。

 港町オーブから西へ。

 魔物の生息領域に向かうので道などない。


 キリタイ族は多数の馬で移動するから馬蹄の跡がある。

 地面が荒れている場所を進めば正解だ。

 追跡は難しくない。


(問題は速度だな。俺たちの馬術は、キリタイ族の子供にすら劣る。どこまで進んでいるか……)


 俺はそんなことを考えながら馬を進めた。


 北と南に魔の森を見ながら、回廊のような地形を進む。

 丘をいくつか越えると平原地帯に入った。


 この平原は、遥か西にあるリング王国に通じているはずだ。

 俺のスキル【スマッホ!】の地図機能は、行ったことのない場所を表示出来ないので確証はない。

 だが、方向としては、この平原の西はリング王国だ。


 平原を西へ進んでリング王国へたどり着けば、バルバルの居住地域が陸と海でリング王国とつながる。

 交易、傭兵、同盟など、様々な展開が作れるようになる。


 いつかは『ここから西へ』と考えていたが、キリタイ族のおかげで思ったより早くなりそうだ。


 少し先に小川が見えた。


 俺の後ろを走るジェシカが大声を出した。


「ガイア! そろそろ馬を休ませよう!」


「了解した! そこの小川で休憩しよう!」


 小川のほとりで馬を止め休憩だ。

 人も馬も休まなければ、体が保たない。


 馬には小川の水を飲ませ、俺たちは地面に座り干し肉をかじる。


 大トカゲ族のロッソが落ち着かない。


「おい! ガイア! この辺りは安全なのか?」


「もう、魔物の生息領域だ」


「やっぱりな! まあ、見通しが良いから何とかなると思うが……。魔物の種類は分かるか?」


 ロッソの質問に俺はスキルで得た情報を答える。


「マーダーバッファロー。デカくて強い魔物だ」


「どんな魔物なんだ」


「以前、遠くから見ただけだが、集団で行動する大きな牛だな」


「ううん……、集団か……。面倒そうだな……」


 ロッソが腕を組んでうなる。

 ロッソはバカっぽいところがあるが、戦闘については信頼できる。


 俺とロッソの会話を聞いていたジェシカが眉根を寄せた。


「キリタイ族が心配だね。子供もいたよ」


「うーん……。いざとなれば逃げれば良いから大丈夫だと思うが……」


 マーダーバッファローは戦ったことのない魔物だから断言出来ないが、逃げるだけなら大丈夫だろう。


 キリタイ族の馬足は速い。

 俺の知る限り大陸一だ。


 下手な色気を出して交戦しなければ――。


 ロッソとジェシカがピクリと何かに反応した。


「何か来るぞ!」


「うん! 西からだね! 聞こえるよ!」


 俺には聞こえないが、耳の良い二人は何かの音を感知したようだ。

 俺は地面に耳をつける。

 目をつぶり耳に意識を集中すると、遠くから馬蹄の響きが近づいてくるのがわかった。


「この音はキリタイ族かな?」


「念のため馬に乗っておこうよ」


「そうだな」


 ジェシカの提案で俺たちは馬に乗って待つことにした。

 音の正体が魔物だった場合、すぐに逃げられる態勢だ。


 ジェシカが馬の上で伸び上がって指さす。


「来た!」


 俺も見えた!

 キリタイ族だ!


「キリタイ族だ! 良かった!」


 俺は思ったよりも早くキリタイ族と合流出来ることを喜んだ。

 しかし、ロッソが渋い顔をしている。


「ちっ! 怪我しているヤツがいるじゃねえか! あいつら魔物に挑みやがったな!」


「本当か!? 怪我人がいるのか!?」


 俺はロッソの報告に血の気が引く思いがした。

 キリタイ族は、もうバルバルの一員なのだ。

 戦闘になり怪我人や犠牲者が出るのは仕方がないが、子供が怪我をして犠牲になるのは受け入れがたい。


 俺はキリタイ族の方を見たが、まだ遠くて見えない。

 俺より目が良いロッソは、状況を報告してくれた。


「遠目だが血を流しているヤツがいるぞ。間違いねえ」


「子供か?」


「いや、男だな。えーと、二人だ」


 俺はすぐジェシカに治療の準備を命じた。


「ジェシカ! 傷薬の準備を!」


「任せて!」


 俺はジリジリした気持ちで、キリタイ族を待った。

 平原は目標物がないので距離感がつかめず、俺が思ったよりも待つことになった。


 キリタイ族と言葉が交わせる距離になった。

 先頭の騎馬が手を振った。


「おお! ガイア!」


 族長のバルタである。

 俺は馬蹄の響きに負けないように大声を張り上げる。


「バルタ! 怪我人の治療をする! 怪我人はジェシカのところへ! 犠牲者はいるか?」


「いや、いない!」


 俺はホッとして胸をなで下ろした。


 俺たちとキリタイ族は合流し、怪我の治療を済ますと港町オーブへ引き返した。


 帰る道すがら俺はバルタに起こったことを聞いた。


「いや、まいった。大きな野生の牛がいたので狩ろうとしたら逆撃を食らった。それでな――」


 バルタたちはマーダーバッファローの集団に出会ったそうだ。

 走り回って矢を放ったが、マーダーバッファローの毛皮が厚いようで矢は効かない。

 戦闘の中で、マーダーバッファローに距離を詰められたキリタイ族の二人が、すれ違いざま角で腕の肉を切り裂かれたそうだ。


「その程度で済んで良かった」


「ガイア。あの手強い牛はなんだ?」


「魔物だよ。マーダーバッファローだ」


「マーダーバッファロー……。そうか、魔物か……。どうりで手強い……」


 バルタは馬を進めなら、腕を組んでうなる。


「バルタ。魔物との戦闘は?」


「ないな」


 俺はバルタの答えに呆れる。


「オマエ……、よく無事だったな……」


「まあ、逃げるだけなら何と言うことはない。だが、ガイア。我らには広い平原が必要だ。あの土地が欲しい!」


「わかるよ」


 キリタイ族は遊牧民だ。

 いきなり定住しろと命じても無理だろう。


 さて、どうしようかと考えていると、集団の後ろから叫び声が上がった。


「バルタ! あの猛牛が追ってきたぞ!」


「ガイア! 話は後だ! 逃げるぞ!」


「おいおいおいおい!」


 どうやらマーダーバッファローが追ってきたらしい。

 キリタイ族が馬足を速めた。


 俺たちは、必死にキリタイ族と一緒に馬を走らせた。


 まったく! ケツが痛い!

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リング王国とバルバルを北回りで陸路でつなく平原 ヴァッファンクロー帝国には内緒だ!
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