第68話 賑やかな船旅(四章最終話)
――二週間後。
俺たちは、アルゲアス王国の王都クインペーラから交易都市リヴォニアへ移動。
交易都市リヴォニアで、先行していた騎馬民族キリタイと合流し、船で帰路についた。
バルバルのバイキング船は、風に乗り快速だ。
「おお! 揺れる! 揺れる!」
「静かにしろってんだ!」
俺の船には、バルバルに臣従したキリタイ族の族長バルタが馬とともに乗船している。
バルタは初めての海、初めての船に驚き、興奮している。
騒がしいバルタに、大トカゲ族のロッソが一喝した。
だが、双方口にしている言葉が違うので、意思の疎通が出来ない。
「おお! そうかロッソ殿も揺れを楽しんでいるか!」
「まったくよう。馬に乗っている時は頼もしいが、海の上じゃさっぱりだな」
「そうだな! 我は海がこれほど心を弾ませるとは、知らなかった」
「おい! 立つと危ねえから座れよ!」
「ははは! 爽快! 爽快!」
「座れって言ってるだろ!」
どうにもかみ合わない。
会話が理解出来るのは、バルバルの言葉とキリタイの言葉がわかる俺だけだ。
ロッソとバルタのかみ合わない会話は、聞いていて面白いので放っておくことにした。
一方バルタの馬は、船に伏せて良い子にしている。
エルフのジェシカが馬に寄り添い首を優しくなでている。
「よしよし! 良い子だね!」
「ブルルル」
馬は気持ちよさそうに目を細めた。
俺たちのバイキング船には、馬を一頭しか乗せることが出来ない。
なので、キリタイ族を全て移動させるには、バルバルの港と交易都市リヴォニアを何度も往復しなければならない。
これでは時間が掛かってしまう。
そこで交易都市リヴォニアで、キリタイ族と馬を運んでくれる商船を募っている。
俺たちバルバルは、交易都市リヴォニアでヨソ者扱いを受けたが、アレックス王太子の紹介状を持参すると交易都市リヴォニアの役人や商人は手のひらを返した。
バルバルの港まで運んでくれる船を探してくれるそうだ。
キリタイ族をバルバルの港まで運ぶのは、手間とお金がかかる。
だが、練達の騎兵がバルバルに加わるのだ。
コストをかけるだけのリターンがある。
「ガイアよ。今回の遠征は成果が大きかったな!」
俺の隣に座るアトス叔父上が、笑顔で話しかけてきた。
アトス叔父上は、アルゲアス王国からタップリと礼金を受け取り、戦利品を売りさばき、大きく黒字にした。
儲かってご機嫌なのだ。
「そうですね。金銭、人、馬……」
「何よりコネよ! アルゲアス王国の王族と強いつながりを持てたのは大きい。でかしたぞ! ガイア!」
アトス叔父上が、バンバンと俺の背中を叩く。
ソフィア姫は中庭に出るようになり、食欲が回復した。
俺たちバルバルが導いた成果だ。
翌日もソフィア姫は中庭出て、ジェシカと食事を共にした。
これにはアルゲアス王国側も驚き、生活習慣や食事を見直す方針に同意した。
ソフィア姫は、ジェシカが提供した野イチゴのジャムをいたく気に入り、俺たちはアルゲアス王国王宮に定期納品を約束した。
もちろんアトス叔父上が王宮の仕入担当とガシガシと価格交渉を行った。
まあ、輸送費がかかるから、なかなか良いお値段に決着したそうだ。
商魂たくましい叔父に感謝だ。
「ねえ! ガイア! 私アルゲアス語を勉強したいな。ソフィアちゃんと直接話せるようになりたいの!」
馬をなでていたジェシカだ。
バルバル語、エルフ語、ヴァッファンクロー帝国語、アルゲアス王国語、騎馬民族キリタイ語。
俺は神様のおかげで沢山の言葉をマスターしているが、通訳の育成が必要だ。
ああ、やることが沢山あるな!
交易都市リヴォニアにバルバルの店を開く。
アルゲアス王国との取り引き。
港の整備。
船の増産。
交易の拡大。
通訳の育成。
キリタイ族の居住地の確保。
バルバルの領地拡大。
そして……。
「ヴァッファンクロー帝国……」
俺は船の上から南をにらんだ。
皇帝は飲酒量が増え、各地で支配されている異民族の不満がたまっている。
ヴァッファンクロー帝国を倒すために力を蓄え、連携出来る相手を増やす。
「ふっ……」
俺は厳しい表情を和らげた。
焦ってはいけない。
今は出来ることを一つ一つやるのだ。
「さあ! 帰るぞ!」
「ヨーソロー」
俺の言葉にガウチが答えた。
バイキング船は、風に乗り、波を切り裂く。
船上の仲間たちの賑やかさに、俺は微笑んだ。
―― 第四章完 ――
◆------------作者より------------◆
今話で四章は終了です!
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☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
作品ブクマや作者フォローもいただけると本当にうれしいです!
それと……本作【蛮族転生!】のコミカライズ一巻が発売されました!
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作画担当の佃先生が、がんばって素敵なマンガに仕上げて下さいました。
どうぞよろしくお願いいたします。
今回、コミカライズの発売に合わせて連載を再開しました。
ひょっとしたら辻褄の合わない箇所があったかもしれませんが……。(汗)
お楽しみいただけたら幸いです。
今後も不定期になりますが、更新は続けてまいります。
次章以降は内政や交易面も少し書いていきたいなと思っています。
ソフィア姫が元気になる部分も……!
ではでは、今後も応援よろしくお願いいたします。





