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【コミック発売中】蛮族転生! 負け戦から始まる異世界征服  作者: 武蔵野純平
第四章 予兆

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第64話 ソフィア姫登場

 ――翌日。


 俺はエルフ族の族長エラニエフと妻のジェシカを連れて、三人でアレックス王太子の妹姫を訪問した。


 アルゲアス王国のアレックス王太子の妹姫は、名前をソフィアと言う。

 ソフィア姫は、王宮の私室で伏せっているそうだ。


 アレックス王太子が自ら案内することになった。

 アレックス王太子が案内するくらいだから、妹のソフィア姫が心配でたまらないのだろう。


「ガイア。早速の訪問を感謝するぞ!」


「とにかく診てみないことにはわからんそうだ。エルフといっても万能ではないからな。あまり期待しないでくれ」


 俺はあまり期待を持たせないように、一応診てみますよというスタンスを取った。


 アレックス王太子は嬉しそうであるが、エルフが診察したからといって、ソフィア姫がすぐ元気になるわけではない。

 期待値調整をしないと、『出来ることは何もない』という結果になった時に、アレックス王太子が大いに落胆してしまう。


 万事、慎重に。



 ソフィア姫が住んでいるのは、王宮の西側にある宮殿だった。

 この宮殿は、後宮とは別の王の子供たちが住むスペースだそうだ。


 アレックスの案内で西の宮殿を歩く。


 宮殿は白い石造りで、前世のギリシャっぽい雰囲気だ。

 広い中庭には花や木が植えられていて、子供たちが遊べるようになっている。

 石造りだが、冷たい印象はない。


 宮殿の中は女性の使用人が忙しそうに働き、男性の兵士がきちんと警備している。

 俺たちが近づくと脇へ退き頭を下げる。

 当然のことだが、宮殿の中で働いているので礼儀もキッチリだ。


「アレックスもここに住んでいるのか?」


「いや、俺は成人しているので、違う宮に住んでいる。妹は、この部屋だ」


 アレックス王太子は、大きな扉の前で立ち止まった。

 扉の左右に護衛の兵士が立っている。


 アレックス王太子が目で合図すると、兵士が扉の中に声を掛けた。


「アレックス王太子がお見えです」


 しばらくして、内側から扉が開いた。


 扉の内側は広い部屋で、大きな木製のテーブルに料理が並べられていた。

 料理には手が付けられていないようだ。


 侍女二人が、部屋の奥の扉を開けた。


「ソフィア。入るぞ」


 アレックス王太子が部屋の中に声を掛け、俺たち三人が後に続く。

 奥の部屋は暗く、昼間なのに灯明の明かりだけだった。


 奥の部屋は寝室で、大きく立派な寝台が設えられている。

 寝台の左右に侍女が二人。

 寝台の上に上体だけ起こしている少女が一人。

 白い服を着て、肩に格子柄のショール。


「アレックス兄様。ようこそお越し下さいました」


「ソフィア。具合はどうだ?」


「はい。ようございます」


 寝台の上の少女はソフィア姫だ。

 ソフィア姫は十歳と聞いていたが、年齢よりも落ち着いて見える。



 長くスッとした黒髪。

 髪が黒いのは、父王に似たのだろう。

 顔立ちは、優しげ。

 十歳にしては小柄だ。


 肌の色はかなり白い。

 アルゲアス王国人は、俺たちバルバルより肌の色が濃い人が多い。

 それにも関わらずソフィア姫の肌が白いのは、血色が悪いからだろう。


(虚弱体質なのか、病気なのか……)


 俺はソフィア姫を気の毒に思い、眉根を寄せた。


 アレックス王太子は、そっと寝台に腰を掛け、ソフィア姫の手に自分の手を重ねた。

 優しく微笑みながら話しかけた。


「ソフィア。今日はエルフに来てもらった。ほら、前に話しただろう? 遥か西に住むバルバルのエルフだ」


「まあ! そちらのお三方はバルバルなのですね!」


 ソフィア姫は目を輝かせて、俺たちを見た。

 恐らくソフィア姫は病弱で、あまり部屋から出ないのだろう。

 だから、『遠くから来た』というだけで好奇心が刺激されたのだ。


 俺はアルゲアス王国の言葉で、ソフィア姫に挨拶を述べる。


「初めまして。俺はバルバルの長のガイアだ。隣にいるのが妻のジェシカ。ジェシカはエルフ族だ。それからエルフ族族長のエラニエフ。彼はジェシカの叔父だ」


「まあ! ガイア様は、エルフと結婚されたのですね!」


 ソフィア姫の視線が、俺、ジェシカ、エラニエフの間を忙しく往復する。

 子供らしい好奇心いっぱいの視線を受けて、俺たちはホッコリした気分になった。


 病気がちの姫様への訪問で、どうなることかと心配していたが、体調はともかく内面は元気な子供のようだ。


(スマッホ!)


 俺はスキルを発動させて、ソフィア姫の人物評価を見てみた。



【ソフィア 姫 超優秀・体が弱い】



(は!?)


 俺はスキル【スマッホ!】の画面を見て、目を丸くする。


(超優秀か……アレックスと同じだ! 兄妹そろって化け物め!)


 アルゲアス王国は人材がそろっている。

 俺は昨晩の宴でも【スマッホ!】で人物情報をかき集めた。

 王様が【優秀】で、臣下も【優秀】や【強い】といった評価の高い人物が多かった。


 ただ、兵士はそれほど強くないようだ。

 この辺りが新興国の弱いところで、上は優秀だが下はそれなり……。

 特に集団戦術ではヴァッファンクロー帝国に一日の長があると見ている。


 まあ、帝国のムノー皇太子はアルゲアス王国に負けたが……。

 あれはムノー皇太子が無能過ぎたし、幕僚団も無能だった。

 それで対戦相手は、【超優秀】のアレックス王太子である。

 大相撲の横綱と新橋の酔っ払いサラリーマンが対戦するようなものだ。


 俺は前世を思い出した。

 勢いのあるベンチャー企業と歴史ある大手企業のような対比で、アルゲアス王国とヴァッファンクロー帝国を比べ理解した。



 さて、ソフィア姫はエルフに会えて大喜びだ。


「まあ! わたくしエルフを初めて見ました! お耳が長いのですね!」


 俺はソフィア姫のアルゲアス王国語をエルフ語に通訳して、ジェシカとエラニエフに聞かせる。

 ジェシカが答える。


「ふふ、そうね。触ってみる?」


 ソフィア姫に通訳すると、触ってみたいという。


 ジェシカがニコニコ笑って、寝台に近づいた。

 アレックス王太子が立ち上がり、ジェシカに場所を譲る。


 ジェシカが寝台に座り、ソフィア姫がジェシカの耳に手を伸ばす。


「感触は、わたくしたちの耳と同じですね! 何だか不思議!」


 ソフィア姫は右手でジェシカの長い耳を触り、左手で自分の耳を触った。

 その様子に寝室にいる大人全員がホッコリした気持ちになり、自然と笑い声がおきた。


 アレックス王太子も目を細めている。

 戦場では物凄く迫力のある顔をしているが、こんな優しい表情もするのかと、俺は内心驚く。

 同時に、アレックス王太子にも、幼い親族を愛でる当たり前の感情があるのだと知ってホッとした。


 時に天才は普通の人が持つ当たり前の感情が欠落している場合もあると聞いたことがある。

 アレックス王太子が、普通の人と同じ感情を有していることは、今後バルバルとアルゲアス王国の同盟関係にプラス要素だ。



 ソフィア姫は、ジェシカが気に入ったらしい。

 あれやこれやと話しかけ、俺が通訳する。

 ジェシカもソフィア姫を好ましく思っているようで、笑顔が絶えない。


 場が和んだところで、エラニエフが診察することになった。

 エルフ族族長のエラニエフは、医術の心得もあり、薬草に詳しい。


 エラニエフはソフィア姫の脈を測り、触診と問診を行った。

 俺はセッセと通訳する。


「ふむ……病気ではないな。ソフィア姫は虚弱なだけだ。よく食べ、よく寝て、体力をつけることだ」


 俺がエラニエフの診断を伝えると、アレックス王太子はガックリした。


「おい……アレックス。そこは喜ぶところだぞ! ソフィア姫が病気じゃなくて良かったじゃないか!」


「いや、まあ、そうだが……」


 アレックス王太子は歯切れが悪い。


「さては、オマエ……。妹が何かの病気で、エルフが特効薬を持っているような展開を期待していたな?」


「いや、まあ、その……」


 しどろもどろである。

 気持ちはわからんでもないが、変な病気じゃないだけ良かっただろうが!


 俺とアレックス王太子のやり取りを聞いていたソフィア姫がニコリと笑う。


「アレックスお兄様。ご心配をおかけしてごめんなさい。私の体が弱いばかりに……」


「いや、ソフィアに罪はない! 謝ることはないのだ!」


「エラニエフ様。診察ありがとうございました。ガイア様も通訳ありがとうございます」


 ソフィア姫は、きちんとエラニエフにも礼を述べた。

 エラニエフがニコリと笑みを返す。


 特に病気ではなく、治療法はなし。


 だが、俺は気になることがあったので、ソフィア姫と侍女に質問をした。

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