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【コミック発売中】蛮族転生! 負け戦から始まる異世界征服  作者: 武蔵野純平
第七章 帝国再び

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第112話 交通整理が大変

 ――キリタイ族のバルタと話をつけた翌日。


 港町オーブでキリタイ族に羊を渡すことになった。


 港町オーブでは、船から荷物が下ろされている最中だ。

 アトス叔父上は荷物の受け入れ、漏れがないかチェックするのに大忙し、力持ちの大トカゲ族も張り切っている。


 アルゲアス王国の大型ガレー船から、預けていた荷物――家畜が下ろされてきた。


「おお! 羊だな!」


 キリタイ族族長のバルタが羊を見て大喜びしている。

 この羊は西にあるリング王国で買い付けた。

 羊毛が手に入るのは魅力的だ。


 キリタイ族が牧畜で羊毛を生産し、バルバルの女たちが生地に加工する。

 ウールだからスーツやヨーロッパの貴族服を仕立てるのも良いだろう。

 セーターやマフラーも作れる。

 冬場船に乗る連中から重宝がられるな。


 バルタたちキリタイ族が飼っていた羊とは種類が違うだろうが、大事に育てて欲しい。


「おい、ガイア。あれは何だ?」


 羊に続いてガレー船から、牛、豚、山羊が下ろされた。


「あれは俺たちバルバルが育てる家畜だよ」


「ほう! ガイアたちも俺たちと一緒に行動するのか?」


「いや、牛、豚、山羊は遊牧には向かない。どこか一カ所で飼う。牛や豚は肉。山羊は不要な雑草を食べてくれる上、乳からチーズが得られる」


「ふむ。色々考えているのだな」


「まあ、族長だからな。現金収入を増やさないと」


「バルバルは略奪をせんから貧しいのだ」


 バルタがとんでもないことを言い出した。


「略奪はダメだって! 昔はバルバルも略奪をしたらしいけど、俺の代になってから略奪はやってない!」


「ほらみろ! 略奪貧乏じゃないか!」


 なんか言葉がおかしいが、とにかくバルタは略奪をすればリッチになると思っているのだ。

 これはいけない。俺はバルタの説得にかかった。


「略奪なんかしなくても、特産品を開発して交易すれば十分潤うよ」


「うーむ。交易の有用性はわかるがな……。だが、この港町の貧弱さよ。我らキリタイは陸が縄張りなので海のことはよく知らぬ。だが、アルゲアス王国の港は、もっと立派だった」


 痛いところを突かれた。

 俺は思わず苦笑いだ。


「今、バルバルは発展している途中なんだ。略奪なんかしても恨みを買うだけだ。略奪する相手は交易相手になるかもしれないんだぞ? 恨みを買えば、交易で不利になる」


「むむ! そういう考え方もあるか!」


 このままキリタイ族がマーダーバッファローを制圧して西へ進めば、リング王国の東端にたどり着くはずだ。

 バルバルはこれからリング王国と交易量を増やしたい。

 リング王国で略奪三昧されては困る。

 きっちり釘を刺しておく必要があるのだ。


「ああ、だから略奪はナシで頼む」


「承知した」


 バルタは納得してくれた。

 コイツは統率力があるから、キリタイ族をちゃんと抑えてくれるだろう。


 それにマーダーバッファローの角や硝石の対価をキリタイ族に支払うのだ。

 収入が増えるから、略奪を禁止する釣り合いはとれるだろう。


「おい! ガイア!」


 野太い声が聞こえた。

 巨体がこちらへ向かって、ノッシノッシと歩いてくる。

 やって来たのはベッヘンハイム。

 元海賊である。


 また、ややこしいヤツがやって来たなと俺は内心頭を抱える。

 変に意気投合されて、『やっぱり略奪だよね!』となったら最悪だ。


 まあ、二人は言葉が違うので意思の疎通が出来ない。

 俺が上手くやれば大丈夫だ!


 俺は言葉を変えて、バルタとベッヘンハイムをお互い紹介する。


「バルタ。こちらはベッヘンハイム。北の海で暴れていた男だ。バルバルに加わってもらう。ベッヘンハイム。こちらはバルタだ。キリタイ族という遊牧民族の族長、騎乗で最強の男だ」


「ほう! 海の勇者か! 我らキリタイは今後交易に力を入れる。よろしく頼む!」


「おう! 陸の王者か! 陸のことは任せるぜ!」


 二人はガッシリ握手をした。

 どうやら余計なこと――略奪――を話さなそうなので、俺は安心した。


「ガイア様!」


「カカカカ! ぬっ!? キリタイ!?」


 アルゲアス王国のソフィア姫とポポン将軍が、妻のジェシカの案内で現れた。

 ポポン将軍はキリタイ族のバルタを見つけて険しい表情をしている。


「アルゲアスか……」


 バルタも殺気を放つ。

 バルタの殺気を受けて、ベッヘンハイムは楽しそうにニヤつき首をコキリとならした。


 あー、もう! 滅茶苦茶だよ!

 アトス叔父上ー! 何とかしてー!

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