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第107話 マーダーバッファローの角

 俺たちは、バルバルの港町オーブへ向かっている。

 三隻のバイキング船が先行し、アルゲアス王国のガレー船の船団がついてくる。


 季節は初秋。

 バルバルを出発してから三ヶ月が過ぎた。


 俺たちは、アルゲアス王国、北のノルン王国、西のリング王国を訪問し、交易について話をまとめてきた。


 リング王国で魔物毛皮が売れた!

 アルゲアス王国とノルン王国では毛皮が売れず、正直、持て余し気味だった。

 だが、西方にあるリング王国は大型の獣が少なく魔物も少ないので、大きな毛皮は非常に喜ばれた。


 敷物にしたり、タペストリーのように壁に掛けたり、マントにしたり、馬具や武具の飾りにしたりと、様々な使い道があるという。


 リング王国の商人は大喜びで、毛皮を買い取ってくれた。

 今後もバルバルの希少特産品として取り扱ってくれることになった。


 しかし、魔物マーダーバッファローの角は売れない。

 リング王国の商人たちは、『骨は死を連想させ不吉』、『戦に負けそうな気がする』と角を忌避した。


 毛皮も角も大して変わらないと思うのだが……。

 こればかりは価値観、死生観など、文化的な違いだから仕方ない。

 理屈じゃないからな。

 マーダーバッファローの角は売れ残ってしまい持ち帰りになった。


 それでも、様々な産物を買い込んだ。

 特にリング王国では羊が手に入ったのが嬉しい!

 新たにバルバルに加入した騎馬民族キリタイに『羊が欲しい』と頼まれていたのだ。


 リング王国は牧畜が盛んで、羊の他に牛や豚もいる。

 そのうち、牛や豚も買い取って、キリタイに畜産をお願いしよう。


 船に揺られながら妻のジェシカが伸びをする。


「久々の家だね~! 叔父さん、お土産喜んでくれるかな?」


「きっと喜ぶよ!」


 ジェシカは、育ての親である叔父のエラニエフに銀の髪留めを買っていた。

 銀の髪留めはアルゲアス王国の職人の手によって作られた品で、エキゾチックな模様が彫金され美しいエメラルドがちりばめられている。

 長髪で美髪のエラニエフに似合いそうだ。


「ねえ。ガイアはアトスさんにお酒でしょう? 何か形に残る物が良かったんじゃない?」


「大丈夫。アトス叔父上は酒好きだから」


 俺はアトス叔父上に、アルゲアス王国、ノルン王国、リング王国の高級酒を用意した。

 三カ国の名酒を飲み比べである。

 酒好きには、たまらないだろう。


 夕方、俺たちは港町オーブに到着した。

 オーブの港は木製の桟橋が広がり、大規模な港になっていた。

 アルゲアス王国のガレー船も桟橋に着く。


 俺がバイキング船から下りると、アトス叔父上が俺を呼んだ。


「ガイア!」


「アトス叔父上!? あれ? エラニエフも!?」


 港町オーブにいないはずの人物たちが俺を迎えた。

 アトス叔父上とエルフ族族長のエラニエフだ。


「二人ともどうして?」


「そろそろガイアが戻ってくると思って待っていたのだ」


 アトス叔父上が俺の質問に答えた。

 俺を待っていた?

 何だろう?


 エラニエフがズイッと前へ出た。


「ガイア! マーダーバッファローの角はどうした?」


「え?」


「マーダーバッファローの角だ!」


「いや、ごめん。角は売れなかったよ。全部持ち帰ってきた」


「「はぁ~、良かった~……!」」


「?」


 アトス叔父上とエラニエフは、大きく息を吐いてへたり込んだ。

 俺はポカーンだ。


「売れ残って良かったのか?」


「うむ。ガイアよ! 良くやったぞ!」


「??」


 アトス叔父上が、俺を褒める。

 売れ残って褒められるとは思わなかった。


「あの……、一体何が?」


「実は……」


 アトス叔父上が、俺の耳に手をあてて話し出した。


「はあ!? ポーションが出来た!?」


「ガイア! 声がデカい!」


「静かにしろ!」


 二人が俺の口を押さえる。

 いや、でも、ポーションが出来たなんて大事件だ!


 エラニエフがヒソヒソと話す。


「ガイア! これは秘中の秘だが、マーダーバッファローの角がキモなのだ。マーダーバッファローの角自体には薬効はない。だが、薬効を増幅させる効果があるのだ」


「!」


 驚いた。

 マーダーバッファローの角に、そんな効果があるとは。

 薬効を増幅させる効果があるということは、現存している薬にマーダーバッファローの角を混ぜれば、様々な特効薬が作れるのでは?


 俺はマーダーバッファローの角が持つ可能性に震撼した。

 歴史が変わる!? 歴史の転換点!?


 続いて、アトス叔父上が真剣な顔で俺に聞く。


「ガイアよ。キリタイ族に肥料作りを命じただろう? 肥料作りだが、あれは火薬の材料である硝石を作っている。そうだな?」


「ああ、そうだよ。まあ、あの方法はかなり時間がかかるけど――」


「もう出来た」


「え?」


「硝石が出来た。正確にいうと硝石であって硝石でない物が出来上がったのだ!」


「??」


 俺は混乱した。

 硝石が出来たけど違う物?


「多分、マーダーバッファローの効果だと思うのだ。とにかく見てもらった方が良い! 明日、キリタイ族のところに行こう!」


「おっ……おう!」


 何だかよくわからないが、どうやらマーダーバッファローは単なる『肉』魔物ではないようだ。


 翌朝。

 俺は、アルゲアス王国のソフィア姫とポポン将軍の案内をジェシカに任せた。

 ジェシカとアルゲアス王国の訪問団は、ブルムント族の本村落へ向かった。


 俺、アトス叔父上、エラニエフの三人は、馬に乗りキリタイ族に任せた領域へ急いだ。

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