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第100話 追走!

 俺たちバルバルの船団は海賊船団を追った。


挿絵(By みてみん)


 海賊たちは北東に逃げている。

 中型ガレー船がオーランド島を右に見ながらひたすら海面を走る。

 ガレー船の帆は風を受け、オールが海面を叩く度に船が加速してゆく。


 俺は少し焦りを感じた。

 俺たちは風と波を使ってオールなしで海賊船に追いつこうとしている。

 俺は船長のガウチに呼びかけた。


「ガウチ! 追いつけるか? 俺たちもオールを出すか?」


「大丈夫だ! 波が高いからオールは気休めだ! 追いつける!」


 海賊船は中型ガレー船なのでオールの数が俺たちより多い。

 だが、ここは外洋なので波が高く、オールを漕ごうにも波の力で上手くオールを漕げないはずだ。

 だが、海賊船は慣れているのか、外洋でも上手くオールを使っているように見える。


 俺はジリジリした。

 本当に追いつけるだろうか?


 船尾で舵を取るロッソが、大声で呼びかけた。


「安心しろ! ガウチが波と風を読んでいる! それより体を休めようぜ!」


 俺はフウと大きく息を吐く。

 ロッソの言う通りだ。


 これから海賊船に追いついて、もう一戦しなくちゃならない。

 オールを漕いで体力を消耗するよりも、今は体を休めて体力を回復した方が良い。


 俺は気分を切り替えて休憩することにした。


「ジェシカ。ドライフルーツを配ってくれ」


「了解!」


 船内にドライフルーツが配られた。

 アルゲアス王国のオレンジだ。

 オレンジを切って干しただけだが、口に入れると酸味と甘味が広がってなかなか美味しい。

 疲れがとれるし、柑橘系の香りでリフレッシュ効果があるな。


 バルバルの男衆もドライフルーツを口に放り込み、しばしの休みを楽しむ。


「旨えな!」


「ああ。南国っつー感じだな!」


「また、アルゲアスに行きてえな……」


「オメエは娼館のお姉ちゃんに会いたいだけだろう!」


「違えねえ!」


 男たちがゲラゲラと笑う。

 ジェシカたち女は苦笑いだ。


 しばしの休息。

 だが、海賊船との距離はなかなか詰まらない。


 島の真北に入り、風が弱くなった。

 風が弱いので波も穏やかだ。

 南からの風が島で遮られるのだ。


(不味いな……。波が穏やかなら、オールの方が強いのでは?)


 俺の考えを裏付けるように、太鼓の音が海賊船から響いた。

 オールを漕ぐペースを早めたのだ。


 海賊船団も必死だ。

 俺たちから何とか逃げようとしている。

 海賊船団の中型ガレー船が増速する。


(このままでは……)


 俺が再び焦り出すと、ギョッとする光景が目の前に現れた。


 オーランド島の島影から、ニュウっと大型ガレー船が姿を現したのだ。

 船楼には、美しい黒髪の少女と腕を組んだ白髪の老将。

 アルゲアス王国の旗艦だ!


 ソフィア姫の高い声とポポン将軍の高笑いが海と空に響いた。


「みーつけた!」


「ハッハッハッハッ!」


 アルゲアス王国の旗艦は、海賊船団の進路をふさいだ。


「ソフィアちゃん!」


「やるな! 動きを読んでいたか!」


 俺とジェシカが感嘆する。


 アルゲアス王国の艦隊は海賊船団を追尾するのではなく、海賊船団の逃走経路を想定して、オーランド島の東側から回り込んだのだ。


 アルゲアス王国の旗艦に続いて、次々とアルゲアス王国のガレー船が姿を見せる。

 縦列で海賊船団の航路をふさいだ。

 海賊船団は、そのまま突っ込んでラムアタック――体当たり攻撃をかける手もあるが、ラムアタックをしたら逃げられない。

 海賊船団は、戦うよりも逃走を選んだ。


 慌てて舵を切る海賊船団。

 ガレー船のオールは乱れ、てんでバラバラの回避行動をとったせいでガレー船同士がぶつかる。


 海賊船団の先頭を航行していた旗艦――中型ガレー船は進行方向左に舵を切った。

 海賊船団の中型ガレー船は避けきれなかった。

 アルゲアス王国の旗艦――大型ガレー船と中型ガレー船は並走する形になり、舷側が接触した。


 木のきしむ音が響く。

 ポポン将軍の良く響く声が聞こえた。


「弓を放て! 切り込み準備!」


 アルゲアス王国の旗艦から一斉に矢が放たれた。

 海賊船の甲板で海賊たちがバタバタと倒れる。


 アルゲアス王国の旗艦からかぎ爪のついたロープが放たれ船が寄せられる。

 アルゲアス王国は兵士を旗艦に送り込み制圧するつもりだ。


 ガウチが叫ぶ。


「アルゲアスの逆側につけるぞ!」


「了解した! 俺たちも乗り込むぞ!」


「「「「「おお!」」」」」


 俺の乗るバイキング船は、海賊船団の中型ガレー船に横付けした。

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