8話:寝坊助
「これはゆゆしき事態です」
「自衛隊の損失は甚大です」
ここは国の首脳陣が集まる場所
日本の中心と言ってもいい
「モンスターには現行の兵器では効果が低い、治癒能力がある奴らもいるので、息の根を止めるには首を落とすしかない」
「しかし、主力である銃では無理だ」
「現在は手榴弾で四肢を吹き飛ばし、動けなくなったところを、チェーンソーで首を切っている」
「一部の部隊には炸裂弾を打てるように改造した特性の銃を配備している。その場合は頭を撃ち抜ければ一撃だ」
「だが、圧倒的に数が足りん」
「そもそも、弾丸を弾き飛ばす個体には通用しない」
カツキが遭遇した鬼に酷似したもの
モンスターは世界各地で出没している
だが、公にはなっていない
情報規制が引かれているからだ
だが、出没範囲は徐々に増えており、政府としても対策に追われていた
「自衛隊に所属している一部の者は、スキルを生かして対応してくれています。やはり、先頭向けのスキルを持った国民を召集する以外に手はないのではないでしょうか」
「しかし、そのスキルだって全員の能力を正確に把握できるわけではない」
「鑑定についても能力にムラがあるんだからそれは仕方ないではないか」
そんな意見が飛び交うなか、一人の女性がカツキの作ったボードを持って現れた
「皆さん、鑑定については解決出来そうです」
そう言うとボードを男性に差し出した
「総理、こちらをどうぞ」
「これは?」
そう言いつつ総理と呼ばれた男性は手に取り眺めていた
「ステータスオープンと言ってください」
「分かった、ステータスオープン」
すると、総理のステータスが表示された
「「「「おおーー」」」」
一斉に声が上がった
「こ、これは一体」
「寝坊助が作成しました」
「な!寝坊助だと?」
寝坊助とはカツキの事だ
理由は明確
目覚めたのが世界で一番遅いからだ
「本日の鑑定協力者の中に彼がいました、待合室での会話で思い付いてその場にあったトレイを錬成し、自信のスキルを付与したそうです」
「な、あり得んだろ」
「はい、あり得ません。ですが、同じものを3つ目の前で作らせたので間違いありません」
そう言うと残りの三枚も見せた
「材料さえあればいくらでも作れるそうですよ」
一同がざわつく
「では、材料を手配し作らせろ」
「作らせろですか···製作依頼ではなく」
「当たり前だ、国民は有事には協力する義務がある。隔離して管理すべきだ」
「防衛省長官としての意見でしょうか?」
総理が聞き返すが、長官は意見を変えるつもりがないらしい
「とはいえ···これは非常に便利だ。各市町村の役所に配備したい、頼めるかい?」
総理が女性に尋ねた
「材料は手配します。報酬はいかがしましょう?」
「それは交渉次第かな、とりあえず500枚ほど頼んでくれるか、市町村と主要機関に配りたい」
「かしこまりました」
そう言って女性は部屋を後にした
「今の話は私が預かる、もちろんこの後にある定期国際会議でも報告する」
「総理、彼は日本人です。秘匿すべきでは?」
「世界の驚異は世界が一丸となるべきだ、異論は認めん」
そうして会議が終わった
「寝坊助くんか、一度会ってみたいな」
「召集しますか?」
秘書が尋ねた
「いや、いいよ。国際会議の後京都へいくよ」
「かしこまりました」