20話:面倒事の予感①
その日、仕事を終えると後輩君がもう一度訪ねてきた
「今日はすみませんでした」
「ああ、別に気にしてないよ」
謝ってきたものの納得はしていないようだ
「それで、仕事が終わってからなら教えてもらえるんですか?」
「本気かい?」
「はい!」
俺は術を行使するスピードをあげるために会社の許可を取って端材を材料の形に戻していただけだ
何度もスキルを行使してコツをつかむと、同じスキルでもさが出るのだ
「君の魔力じゃ魔力枯渇で倒れるだけだよ」
「21もあるんですよ、自慢じゃないですが周りには一桁の人しかいないんです。先輩の魔力が多いのは知ってますけど、一般的な数字を考えたらそんなに変わらないと思います。だから教えてください、お願いします」
あー
俺のステータスは以前の飲み会の後に総理に口止めされた
それまでに伝えていた会社の上司にもその旨を伝えてある
お陰で呼び出されて誓約書書かされたらしい
会社には迷惑かけて、本当にごめんなさいと思っている
とまあ、そんな理由でステータスはそれ以来誰にも伝えてない
もちろん後輩君にもだ
「んーーー、じゃあこれに魔力流してみ?」
俺は、ストレージから錬金術を付与した腕輪を取り出し、後輩君に渡した
後輩君は喜んでそれをはめて魔力を流した
·····秒で倒れた
「だよなー」
怪我をしないように後輩君を受け止めて休憩室に運んだ
「あー、みんなごめん、疲れて倒れちゃったみたいだからソファー開けてくれる?」
皆素直にソファーを開けてくれた
「誰か看病お願いしてもいい?」
「私が見ておくわ」
パートのおば······
お姉さんが名乗り出てくれたのでお任せした
もちろん腕輪は回収した
この腕輪はミスリルを利用して作った腕輪で、魔力を流すと錬金術のスキルが使えるようになっている
ただし、元々持っていないスキルを無理矢理使えるようにする為、倍の魔力を消費する
しかもミスリルに蓄積できる魔力が少ないので非常に燃費が悪い
だから、俺以外には到底扱えない代物になってしまったのだ
つまり、後輩君は魔力枯渇で倒れたのだ
「まあ、魔力を回復はさせたからしばらくすれば起きるでしょ」
そう言って帰り支度を終え、車に乗り込んだ
「それよりも、面倒なことになったなー」
社長室にて····
「失礼します」
「龍宮くん、忙しいにに悪いね」
「いえ、お気遣いありがとうございます」
「まあ、座ってくれ」
「はい」
座ると社長が紅茶をいれてくれた
俺と社長は大の紅茶好きで、以前イベントでばったり会ってから二人の時は決まって紅茶をいれてくれる
しかも美味しい
「いただきます」
「どうぞ、今日はダージリンだ·····」
いつもならこのタイミングでこ茶葉うんちくが入るが今日は様子が変だった
「どうかしました?」
「いや·····君はきっと喜ばないと分かっていてお願いをしないといけないのが少し心苦しくてね」
「お伺いしても?」
そう言うと建物の完成予想図を机に広げた
「国からの依頼でこの建物の空調設備及びセキュリティシステムの請け負いをすることになった」
「国からって、凄いじゃないですか」
「そうなんだが、空調設備を担当している部門は今、案件が一杯でね」
「んー、工程調整してみましょうか?」
「お願い出来るかな?」
「はい、明日まで待ってください」
「頼むよ、そうそう、プロジェクト責任者は君に任せるからよろしく」
「え?」
そう言うと、社長はまた出掛けた······




