17話:新たな力と暴君
「綺麗ですね」
諜報員のお姉さんが呟いた
「本当に綺麗ですね····」
その刃は見ているだけで吸い込まれそうだった
そう言いながら手に取ると、今までの武器にはない一体感を感じた
「お?」
刀を振ると、今まで耐えられなかった刀身は問題なくそこにあった
そのまま諜報員のお姉さんに刀を差し出した
「持ってみてください」
「はい」
刀を受け取ったお姉さんは驚愕していた
「こ、これは重さをほとんど感じません」
「うん、しかも耐久力、切れ味共に申し分ないです」
ついに対勇者用の武器が出来た
「後は防具かなー」
「そうですね、生身は無謀ですからね」
「まあ、ミスリルで少し考えてみます」
ダメもとで、刀を解析してみたいとの事だったのでそのまま刀を渡して建物を出た
「母さんに頼まれた買い物してからライトの散歩行こっと!」
近くのスーパーに向かった····
轟音と共に目の前でスーパーが大爆発した
「プロテクション」
反射的に解析で把握できる範囲の人を探して防御魔法をかけまくった
「一体なんなんだ!」
目の前には崩れ去った建物
その中には大型のモンスターがいた
人々が逃げ惑っている
俺はひたすら解析で人々を見つけ出して救出
怪我は回復させ、死者も蘇生させ安全圏まで移動させる
「くそっ、いきなりすぎるだろ」
愚痴りながらも全ての人を救出した
そこに諜報員のお姉さんが現れた
「龍宮様これを」
差し出された刀を無言で受け取り、そのまま駆け出した
「ふざけやがって、俺の日常を奪うんじゃねえ」
力一杯に刀を振り下ろす
ガキン!!!
「なっ!!」
刀を受け止められた
そこには勇者がいた
「何してる!」
「うるせえ、俺の獲物を奪うな」
そのまま俺は吹き飛ばされる
勇者は下品な笑みを浮かべていた
「雑魚は指をくえて黙って見てろ」
そう言うと、大型モンスターの方へ向き直り手にした剣を一振した
それだけでモンスターだけでなく、周りの瓦礫も粉々に切り刻まれた
「けっ、歯ごたえねーな」
「ちょっと待てよ」
「あぁ?」
勇者が俺を睨む
「何だよ雑魚、殺られたいのか?」
「何でだよ···」
「なにがぁ?」
「何で日常を壊したんだよ!」
心の奥底から沸々と怒りがわき出てきた
「何で魔王なんか持ち込んだよ!」
「はっ?どうでもいいだろ?」
「どうでもよくねーーーーー!!」
ミスリルの刀で切りかかる
「おせぇんだよ」
あっさり回避され、蹴りを横腹に叩き困れる
「なめるな!」
勢いを殺すために後ろに飛んで回避する
「ドラゴンバースト!!」
「なっ」
想定していなかった動きをされ、勇者はまともに魔法をくらった
「ざまあみろ」
俺は慣れないギリギリの戦いで精神がガリガリと削られる
被弾した勇者は吹き飛ばされるが、空中で回転し着地する
「けっ、思ったよりやるじゃねえかよ」
勇者は左半身が吹き飛ばされていた
そんな状態でも不適な笑みを浮かべた勇者は自身に回復魔法をかけ、て立ち上がる
「化け物かよ」
「てめぇもだろ、まあいい、腹減ったから帰る」
そう言うと勇者は転移魔法を使用して消え去った
「今度は逃がさない····」
俺は勇者が立っていた場所を睨みつけたまま、立ち尽くしていた