13話:自称勇者の蛮行
一番奥の扉に入ると大きな会議室のようだった
「好きなところに座ってくれ」
そう言われ適当に座る
すると秘書の方が水を用意してくれた
浅いお皿も用意してくれたので、少し水をいれるとライトが喜んで飲んでいた
「中央スクリーンをご覧ください」
すると、会議室の中央にあるモニターに映像が写し出された
激しく魔法が飛び交い、あちこちで爆発が起きている
空から落雷降り注ぎ
大きな氷解や岩が地面にめり込んでいる
そんな中、一人の男性が化け物····モンスターと戦っている
「何やってる、ここは危険だから早く逃げろ」
「キミこそ逃げろ、国民を守るのが自衛隊の役目だ」
「自衛隊ごときでこいつらの相手は出来ん、もう一度言う、逃げろ」
「一般人こそ早く逃げるんだ」
「警告はした、あとは知らんぞ」
次の瞬間、男性はモンスターに向かって飛び込んでいった
そのまま手にしていた剣でモンスターの首を一閃
しかし、その一撃は容易に止められる
「ちぃ、この世界では力が落ちる。仕方ない」
男性はペンダントを引きちぎり天高く掲げた
「神よ、約束の報酬を寄越せ。この世界でも魔力が自由に使えるようにしろ!」
次の瞬間、光に包まれた男は黄金の鎧に身を包み、白銀の剣でモンスターを切り裂いた
「これだよこれ、これこそが俺の本当の力だ!」
周りにいる人々ごと、モンスターを粉々に切り裂いて高笑いをする男性は、次の瞬間消えてしまった
「これが勇者だよ」
「人まで切ってましたよね?」
「その通りです、その後も大型モンスターの出現地点に現れては、周りの人間ごとお構いなしにモンスターを殺戮して回っています。何度か接触を計り、彼が異世界へ行った勇者であると証言しました」
「ちなみに、彼が戦っていたモンスターはティアマトと呼ばれるモンスターらしいよ」
「ティアマトにつきましても、彼が異世界で倒した魔王の魂をこの世界に持ち込んだことで、大量の魔力を吸収し暴走した結果、生まれたものだと話しておりました。ちなみにモンスターが新たに発生しているのも、この世界に魔王魂の鱗片が降り注いだのが原因と話しておりました」
ん?
つまりだ
勇者が魔王をこの世界に連れ込んで暴走させ
それを止めるのにこの世界に魔法を持ち込んだ
その影響で各地にモンスターが現れたり、望みもしなかった力を押し付けられた事になる
「この勇者、ただの疫病神では?」
俺が口にした事に反論できなかったのだろう
総理だけでなく秘書まで苦笑いをしている
「大型であろうと無かろうとモンスターは野放しに出来ないが、現状では大型モンスターには全く歯が立たない」
「不本意ですが、勇者が現れるまで時間稼ぎをする事しか出来ません」
「しかも、勇者が現れても数人は巻き込まれて命を落とすと····」
許せない
素直にそう思った
「この勇者は野放しにしたら危険です」
「カツキくんもそう思うか····」
「であればこその協力のお願いです」
そう言って、協力の内容を聞いた
「つまり、ステータスプレートを量産して対モンスター用の公務員を募集する。そして俺はモンスター討伐を繰り返し、対勇者の為に力をつける。そういうことですか?」
「大まかにはそうなります。もちろん必要な物は全てこちらが用意します」
報酬も申し分ない
だが、命を懸けるリスクはあるのだろうか
俺はただ普通の生活がしたいだけだ
でも····
「分かりました。頑張ってみます」
「ありがとう」
総理と秘書は深く頭を下げた
ただ、俺は····
「現実におとぎ話をねじ込んできた中二病の重傷者はさっさと捕まえて.、殺害した人達の魂を回収、蘇生しましょう」
あくまでも亡くなってしまった人達を助けたい
それだけは妥協できなかった
逆に言えば、それだけの理由で決断した
力が有るから決断したのだ····
「助けられるのですか?」
秘書の表情が崩れた