12話:移動の省略
「あの、どちらに向かわれるんですか?」
「一番近くで使用可能な場所を押さえました。市役所ですね」
「地下駐車場の先にある扉の奥ですか?」
俺が聞くと総理と秘書の女性が驚く
「あの場所は機密扱いなんだが、何故知っているんだい?」
「すいません、市役所に行くことが多かったので建物の構造を把握したくて解析しました」
「解析か···」
「鑑定とはレベルが違いすぎますね」
「ごめんなさい」
「それはかまわない、しかし、どうして構造を把握する必要がったんだい?」
理由を知らないならそういう反応になるよな···
「いやー、恥ずかしい話なんですが、いちいち手続きに来るのがめんどくさくて、テレポート先にいい場所ないかなとおもって」
バツが悪くなって頭をかきながら苦笑いをした
「じゃあ、キミはテレポート、つまり瞬間移動が使えるのか?」
「はい、そうですよ」
「ステータスにテレポート能力は記載されておりませんでしたが?」
「魔法の一種なんで、テレポート能力というわけではないんです」
実際、スキルでテレポートと似た能力を持つ人もいる
そういう人は心に描いた場所に対象を転送させるイメージらしい
だが、俺がやっているのは座標に干渉して自分の場所を置き換える魔法だ
つまり、最初から自分がそこに居たことにするみたいなイメージだ
「結果は同じでも仕組みは違うか···」
「差し出がましいことをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「なんでしょう?」
「この車ご施設までテレポートさせることは可能でしょうか?」
「出来ますよ」
「では、お願いしても?」
「はい」
「車を止めますのでしばらくお待ちください」
そういい、秘書は運転手に止まるように指示をした
その後、俺はテレポートを発動
車ごと施設内に移動した
「なるほど、これはいい」
「そうでね、出入りを見られることがないのでマスコミに嗅ぎ回られることもありませんし、非常に便利です」
車を降りながら総理と秘書は満足そうにしていた
俺の友人三人も車から降ろされ、何処かへ連れていかれた
「後続していた車両には状況を説明し、マスコミの撹乱に市内を走らせています」
「ご苦労さん。さあ、寝坊助くんこっちだよ」
総理は奥の手部屋を指差した
「あの、寝坊助ってやめてもらえませんか?」
「可愛くないかい?」
「なんか、嫌です····」
「分かった、じゃあ今後はカツキくんと呼んでもいいかな?」
「はい」
「では、私も、いし「総理でお願いします」」
総理の会話を秘書が押しきる
秘書さん強い
「いいじゃないか、呼び方ぐらい」
「龍宮さまにご迷惑をおかけしてもよいのであればどうぞ」
「······そう、だね、ごめんごめん。ついね、今のは忘れてくれ」
総理は少し落ち込んだ表情をしたが、すぐに元の顔に戻した
「さあ、気を取り直して奥の部屋へ。勇者と魔王の話をしようじゃないか」
廊下には沢山の扉があった
案内されたのはその一番奥
「ここは、いかなる通信機器も使えませんし、外部からの衝撃にも耐えられるよいに造られてる」
「災害時の防護シェルターって事ですか?」
「まあね、そんなところだ」
少し違和感がある返答だった
ただ、国としての取り組みだ
詳しくは聞かないことにした