11話:協力の要請
俺はデーモンに向かって飛び込んでいた
デーモンはその爪で俺を切り裂こうとする
「プロテクト」
爪を弾き拳を叩き込む
「サンダーフィスト」
雷をまとった拳はデーモンの爪を粉砕した
驚いたデーモンは飛び上がる
「逃がさん、グラビティプレス」
デーモンが勢いよく地面に叩き落とされた瞬間
「ライトニングバースト」
雷属性を帯びた魔力の衝撃波がデーモンの頭部を吹き飛ばした
「こ、これはいったい····」
総理が驚愕している
「思考加速を発動するとこれぐらいは可能です」
「それでもデーモンだ、自衛隊でも小隊の連携があってやっと倒せる相手」
「やっぱ、俺は化け物みたいですね」
「いや、救世主だよ」
「え?」
「頼む、この通りだ」
総理が目の前で頭を下げた
「世界を守るため、キミの力を貸してくれ」
「俺なんかでいいんですか?足手まといとかになりません?」
「今のを見たら、誰もそんなことは言えないさ」
「は、はあ···」
俺の力が誰かの役に立つならそれもいいかもしれない
「勇者なんかよりも、よっぽど便りになると思うよ」
「···え?勇者?」
勇者がいるらしい
もう完全に漫画の世界だ
俺の知ってる現実はどこに行ってしまったんだろう
悩んでいた事がバカらしく思えて、遠い目をしてしまった
「きっと、勇者の方が強いんでしょうし、やっぱ俺は普通の生活がいいです」
「そ、そこをなんとか頼む。勇者なんて全く役に立たないんだ、寧ろ状況が悪化する。だから世界を助けてくれ、この通りだ」
目の前でいい大人が本気の土下座をしている
しかもそれが総理····
深夜だからいいが、気まずい
「あ、頭をあげてください。とりあえず勇者が厄介者みたいに言われている理由を教えてもらってもいいですか?」
「分かった、だがその前にデーモンの死体を処理したいから処理班を呼んでもいいかい?」
「それならさっき別の空間に隔離して時間も止めておきました、壊れたところも時間を巻き戻したので元通りです心配しないで下さい」
「·····キミはホントに救世主でしかないな」
「意味が分からないので、その呼び方はやめてください、恥ずかしい」
「す、すまない」
「で、勇者が厄介者の理由を聞いてもいいですか?」
「あ、ああ」
「それは私が説明します」
近づいてきた女性が言った
「あれ?あなたは検査場でお会いした方?」
「覚えていただいて光栄です」
女性は深々と頭を下げる
「場所を改めましょう、総理もよろしいですね?」
「そうだな、そうしよう」
「では、こちらへ。車を用意しております。貴方に機密情報を告げた無自覚な隊長殿とそれを聞いたご友人もすでに確保しておりますので」
「あ、やっぱり聞かれてたんだ」
「お気づきでしたか?」
「監視されてるのはずっと気付いてましたけど、知らないふりしてたんで」
「私共も実力不足ですね。精進します」
公園の前に止まっていた高そうな車に乗り込んだ
言っていた通り、三人の友人もいた
眠っているようだ
「安心してください、店を飛び出した貴方を探しに出たところを一人ずつ確保しましたが騒がないように眠らせただけです」
「解析かけたので分かってます」
「それは説明が省けて助かります。ちなみに、愛犬のライトちゃんはどちらに?」
「ここにいますよ」
隠蔽を解除した
デーモンが現れた瞬間からずっと気配隠蔽をかけていた
「全く分かりませんでした。やはり我々も努力しないといけませんね」
そして車が走り出した
ちなみに、この女性は諜報員らしいが、俺が解析したところ、職業欄にはっきりと『忍者(くノ一)』と表示されていたりする