10話:望まぬ力
「どうしたんだい?」
公園で泣いている俺に一人の男性が声をかけてきた
「ちょっとショックなことがあって、頭では理解してるんですが心おいつかなくて」
「そうか、それは辛いだろうね。おじさんにもそう言うときはあるよ」
そう言ってその男性は近くのベンチに腰かけた
改めてみると、小綺麗でスラッとしたスーツを着た男性だった
涙で視界がグチャグチャだったので顔はよく見えなかった
「そう、ですか」
そう言ったが、今の自分の気持ちが分かる人間なんていない
そう思っていた
「そんなときは、我慢せずに泣けばいい。それでもダメならわめけばいい、気持ちが収まるまでね」
「そんな単純なことじゃないんです」
俺は分かったようなことをいう男性に少しイライラしていた
「分かるよ、望んで手にした力じゃ無くても、手に入れてしまったものが大きすぎて自分がどうしたらいいのか分からなくなるのは、経験した人にしか分からないけど、少なくとも私は経験者だから分かるよ」
俺は驚いて男性の顔を見上げる
今度は涙を拭いてしっかりと
そこにいたのは
「総理ですか?」
「それ以外の誰に見えるかな?」
今の日本の総理は本人が望んでなったわけではない
少し前、新型ウイルスによるパンデミックが世界を襲った
その際、日本では主要な政治家がほとんど亡くなってしまった
そんな時、国民からの指示で矢面に立たされたのが当時支持率が高かった目の前にいる総理になる
当時は総理代理としていたが、そのままなしくずし的に現在の地位についたのだ
当時の日本では異例な事であり、ニュースでも連日報道されていた
「そうか、あなたも同じでしたものね」
「寝坊助くんは自分の力が怖いんじゃないかい?突然手にした大きな力をどう扱っていいか分からずにさ」
「はい」
扱い方を間違えば周りを危険にしてしまう
そんな恐怖が心から離れなかった
化け物みたいだ自分の力が皆を不幸にするんじゃないか
「私もいきなり総理の仕事を押し付けられたときは怖かったよ、なんせ自分の決断に全国民の生活、命がかかっていたからね」
「今の僕なら分かります。その気持ち」
「ありがとう、キミは素直だから本心なのだろう」
「そのつもりです、色々ありましたから」
「そうだね、特にここ数日は大変だったみたいだね」
「そういえは、監視されてましたね」
「まあ、キミのステータスは報告が上がってたからね。理解してくれるよね」
「まあ、それはそうですよね」
そう言って空を見上げた
町中では星なんか見えない
だけど、それでも空は広がっていて今にも吸い込まれそうだった
そのおかげか、少し気分も落ち着いた
「君が遭遇した鬼、通称オーガと呼ばれる個体を始めとしたモンスターがこの世界に出現しているのを知っているかい?」
「はい、SNSとかで騒がれてますから」
「情報規制しても、人の口は防げないか···」
まあ、そうだろう
現代社会で完全に情報を遮断するには、目撃者を全て隔離し、外界から遮断する以外方法はないのだから
「仕方ないですよ」
「面目ない、これじゃあどっちが慰めているのか分からないね」
「あ、いや、そんなつもりは」
「ごめんごめん、冗談だよ。分かってる」
そう言って総理は立ち上がり俺の前に立った
「キミの力を貸してほしい。日本だけじゃない、世界の為に」
差し出されたてを俺はじっと見つめた
正直、迷っていた
この手を取れば今までの生活に戻れないのではないか
そんな考えが頭をよぎった
「お、俺は····」
その時だった
空から何かが落ちてきた
スドン!!!!と地面から腹のそこに響くような重たい振動を感じた
「プロテクト」
咄嗟にに防御魔法で自分とライト、総理を守った
「こんな場所になんで?」
目の前には、以前遭遇したオーガよりも大きく角が二本になり翼を生やした黒いモンスターがいた
「デーモンだと!まずい逃げろ!」
総理が叫んだ