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絶望の愚者  作者: 矢島 零士
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王女の気持ち

 初心者向けとされているダンジョンにレッドドラゴンが出現したことは、大きな問題だ。

 王女としてのダンジョン入りはギルドに関係ないことだが、サラはディエゴに冒険者ギルドにレッドドラゴン出現と討伐を伝えるよう命じた。


 今後、ギルドによる調査が終わるまで、ナゲ山麓ダンジョンは立ち入り禁止になるはずだ。



 王宮に戻ってからも、サラはこの日のことが頭から離れない。


 地下三階の入り口付近にレッドドラゴンが出現したのだから、奥にはより強力な魔物がいるかもしれない。

 今後、魔物が大量発生するかもしれないし、最悪の場合、魔王出現ということもありうる。

 王国の領土内に魔王が出現したことはないけれど、今後もありえないとはいえない。



「ゲッシュ、今日はもう下がりなさい。一人で考えたいことがあります」


「はい」


 ゲッシュは部屋を出た。以前は王宮の外から出勤していたが、数日前から王宮の敷地内に部屋を与えられ、そこで寝泊まりしている。



 レッドドラゴン出現のことは、本来ならば国王である父親に話すべきだろう。しかし、サラの父親は政治や軍事に興味はなく、この件の報告を受けたとしても何もしないはずだ。


 しばらく考えた後、サラは宰相のグリンに話すことにした。グリンは七十歳。サラが信頼する人物の一人だ。

 グリンは元々は学者で、宰相になる前はサラの養育兼教育係だった。


 サラは私室付女官のミランダを連れて王宮内の宰相執務室に行った。

 グリンは部屋で仕事中だった。

 儀礼的な挨拶をかわす。


「内密の話です。ミランダは部屋の外に」


 ミランダを部屋の外に下がらせ、部外者が近くにいないか見張らせた。

 宰相執務室には盗聴防止の結界がはられているが、サラは念のため、自身でも結界を張った。


 それから、サラはグリンに、ナゲ山麓ダンジョンにレッドドラゴンが出現したことと、護衛の者たちの働きによって討伐完了していることを告げた。


「では、さっそく、冒険者ギルドと連携して対処いたします」


「ギルドにはディエゴから状況を伝えさせてあります」


「サラ様、さすがですな」


「私は、ダンジョンの奥に魔王のような強力な存在が出現していることを危惧しています。今回のレッドドラゴン出現が偶発的なものであればよいのですが…」


「あるいは、人為的なものかもしれませんな」


 現在、キラール国王の求心力は低い。そして、キラール国王は気づいていないが、敵は多い。

 王の弟や叔父など、王位を狙う者が国内に何人かいるし、キラールの西隣の国は、領土的野心の強い人物が政権のトップにいる。


 キラール国王に敵対する者がキラールの弱体化を狙って何か仕掛けてくることは、ありえる。

 数ヶ月前、サラが何者かに襲撃された事件も、おそらく、国王に敵対する何者かの仕業だ。


 今後の状況によっては、軍を動かす必要が生じるかもしれないが、サラに軍を動かす権限はない。

 今のサラは、宰相であるグリンに任せるしかない。



 自室に戻った後、サラは一人で異世界の歌を聴いた。

 この日、サラが聴いたのは『無責任一代男』。


 サラには、王女としての責任や重圧から解放されたい気持ちがあった。

 けれど、全てを放棄するのは良心が許さない。


 楽しい歌のはずなのに、サラの目には涙が浮かんでいた。

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