表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第六章 夜霧の渡り鳥作戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/850

『夜霧の渡り鳥』作戦  その2

帝国北方方面艦隊指令アレクセイ・イワン・ロドルリス大将はまだ半分夢の中にいる。

前回の戦いの損失の対応に実に一ヶ月以上かかっていた。

それでやっと補充のメドが立ち、今後の方針を決め、ベッドに横になったのは実に夜中の三時過ぎだった。

実際、ここ最近は仕事が終わるのが夜中になる事が続いており、肉体的にも精神的にも疲労しているのが自覚できていた。

ちらりと時計を見る。

今、七時十分といったところだろうか。

確か仕事は九時からだ。

だから、八時過ぎまでは休もう。

そう思ったときだった。

建物内に響く警報。

そして、部屋のドアが激しく叩かれる。

何とか思考を回転させて、ベッドから起き上がるとドアに声をかける。

「どうしたっ。これは何ごとだ」

「て、敵襲ですっ。敵の艦隊が接近中であります。すでに警戒ラインを突破しております」

「何っ。監視所はどうしたっ」

報告に一気に頭に血が集まってくる感覚がした。

やっと動きかかってきた思考が、一気に加速されていく。

「各監視所は沈黙。すでに全滅したと思われます」

「わかった。魚雷艇をすぐに出せ。時間を稼がせろ。あとすぐに動ける艦を迎撃に向わせろ。その間に動ける艦はすべて釜に火を入れるんだ」

「了解しました」

「それと防御砲台はどうしてる?」

「霧のため、距離が掴みにくいと…」

「かまわん。ドンドン撃たせろ。敵の接近を許すな」

そこまで命令した時だった。

巨大な射撃音が響き、ヒューーゥゥゥという風を切る音が続く。

始めやがった。

アレクセイ大将は、その音が艦砲射撃の始まりだとわかった。

「急げ。急がせろっ」

立ち上がると慌てて軍服を着込む。

その間にも何度も射撃音が響き、爆発音と共に建物が揺れる。

「どこだっ。どこの軍だっ」

そう呟いて軍服を着込むと慌てて司令部に向う。

すでに基地内はパニックじみた状況になっていた。

この地での攻防戦は、今まで三度あり、すべてに勝利を収めたとはいえ、それは事前に接近を感知して戦う準備が出来ていてこそだ。

しかし、奇襲を受けた今は戦う準備どころか、動かせる艦もほとんどないだろう。

時折、味方砲台からの反撃があるようだが、実に心もとない。

まだ霧が完全に晴れていない為に、精度が低いのか当たったような反応はない。

どどんっ…。

しかし、こっち側は爆発音がまた響き、それに合わせるかのように建物が瓦解する音も続く。

艦だけでなく、施設にもかなりの被害がでるぞこれは…。

寒いはずなのに、びっしりと汗をかきながらアレクセイ大将は何とか司令室にたどり着く。

しかし、そこはまさに混乱の中心と言っておかしくないほど、混乱していた。

伝令の紙をいくつも持ち、おたおたするもの。

いくつも鳴る電話を慌てて持ち、対応に追われるもの。

呆然と立ち尽くすもの。

オロオロするだけで何をやっていいのかわからないもの。

その現状は、とても見られるものではなかった。

まさに烏合の衆という言葉が相応しい。

部屋に入りその現状を見たアレクセイ大将は叫ぶ。

「落ち着けーーーっ」

一気に全員の動きが止まる。

そして視線がアレクセイ大将に集まった。

「敵の数は?あと、現状はどうなっている?」

「霧は完全に晴れていないため、わかる範囲内では王国に譲渡されたと言われているものとほぼ同じ大きさの超大型艦二隻と大型艦二隻。後は中、小型艦が十隻前後と思われます。相手はどうやらフソウ連合のようです」

副官が慌てて報告書を震え声で読み上げていく。

「また、敵は距離を置いての艦砲射撃で攻撃しております。湾防備用の砲台では距離が足りません」

「我が軍の方は?」

「先ほど指示のあった魚雷艇ですが、すでに動けるもの十三隻が敵に向って移動を開始しました。また、戦艦二隻、装甲巡洋艦三隻がすぐに動けます」

「よし。すぐに動ける戦艦と装甲巡洋艦を出せ。ともかく、他の艦が動けれるようになるまでは時間を稼がせろ。今のままじゃ艦砲射撃で湾内で全滅しちまうぞ」

「了解しました」

副官が敬礼し、命令を実行する為に動き出す。

それに合わせるかのように次々と上がる報告にアレクセイ大将はテキパキと指示を出していき、混乱していた指令室内は少し落ち着きを取り戻していく。

しかし、それもつかの間だった。

悲鳴に近い声で報告が上がる。

「重戦艦ロスティスラーフが、轟沈しました」

重戦艦ロスティスラーフ。

帝国東方方面艦隊旗艦で、今まで無傷で戦いを潜り抜けてきた幸運艦であり、この艦が参加する作戦では負けなしと言われている。

機関部の修理で前回の戦いには参加しなかった為にフソウ連合との海戦に負けたのだと言うものさえいるほどの艦だ。

その艦が…轟沈した。

その事実は、この戦いが負け戦になる事を暗示しているようだった。

シーンとなる司令室だが、すぐにアレクセイ大将の怒鳴り声が響く。

「何をやっている。敵に徹底的にこの戦いの代価を支払わせるときだぞ。反撃だ」

その言葉に、止まりかけていた司令部の動きが動き出す。

しかし、不安は重く圧し掛かってきており、そこにいた全員の…、そう、アレクセイ大将を含めた全員の表情を暗く沈めていた。


「うむ…。思ったよりも当たらないな」

山本中将は、窓の外を見て呟いた。

「霧がこれほど厄介だとは思いませんでしたよ。距離感が掴みにくすぎます」

榛名が申し訳なさそうに報告する。

確かにまだ完全に霧は晴れておらず、ぼんやりとした輪郭だけが浮かび上がっている感じだ。

水上電探を使っての射撃も考えたが、相手は移動物ではないためなかなか難しいようだ。

「ある程度射撃をして距離感を掴むしかないか…」

「ええ。それしかないですね。炎上弾を引き続き使います。少しでも炎上してくれれば…」

そう榛名が言った瞬間だった。

ぱーっと火の手が上がった。

どうやら霧島の砲撃が湾岸施設に命中し、炎上し始めたらしい。

ぱーっと炎が辺りを照らした。

「よしっ、霧島に負けるな。こっちも当てるぞ」

榛名の号令の下、主砲が打ち出される。

炎上の炎によって照らされたためだろうか。

先ほどよりも距離感が取りやすかったのだろう。

クレーンと奥の建物に命中し、炎が上がった。

その炎が、湾内の艦艇をよりはっきりと照らす。

「よしよしっ。いい感じだぞ。今、準備している炎上弾を打ち終わったら、通常弾に切り替えろ」

榛名の指示で通常弾へと切り替えられる。

そして停泊していた艦に命中が出始め、水柱と艦破壊の爆発が続く。

すると、見張りの兵から伝令がくる。

「敵、動きアリ。魚雷艇と思しき小型艇がこっちに向ってきます。数は十以上」

「護衛の駆逐隊に連絡っ。対応させろ。戦艦、重巡洋艦は、そのまま艦砲射撃継続。敵艦隊が本格的に動くまでは、徹底的に湾内施設と停泊している艦にダメージを与え続けろ」

山本中将が落ち着いた声で指示する。

すると指示が伝わったのだろう。

護衛についていた第六駆逐隊駆逐艦 電、天霧 、狭霧と第七駆逐隊駆逐艦 早波、秋霜、秋雲の六隻が素早く動き、戦艦や重巡洋艦の前に出て魚雷艇に対応していく。

次々と駆逐艦の攻撃で沈められていく魚雷艇だが、それでも二発の魚雷が発射された。

白い軌道を描いて進む魚雷。

「敵魚雷接近っ。艦前進させろっ」

霧島が魚雷を避けるために戦列からズレる。

また、衝突を避ける為、他の艦も動かざるえない。

もちろん、その間も射撃は続けられたが、どちらかというと魚雷を避ける方に意識が向いているといった感じだ。

その為、魚雷は当たらなかったものの、それによって乱れた戦列を組みなおす必要があった。

しかし、敵の艦隊の一部が動き出し、作戦は次のステップへと移行する事になる。


なお、この砲撃で、帝国東方方面艦隊は湾岸施設の十一パーセント近くと重戦艦二隻、装甲巡洋艦三隻が撃沈され、支援艦は実に十三隻を失うこととなった。

そして、その中には、帝国東方方面艦隊旗艦重戦艦ロスティスラーフも含まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ