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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
外伝1 ドライブに行こう

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ドライブに行こう  その2

ブックマーク100、評価300突破記念の続きです。

昼食を食べ終わると、東郷さんに声をかける。

「何時ぐらいに出ようか?」

「そうですねぇ…」

食器を片付ける手を止めて少し考え込む東郷さん。

すると食器を流しに持っていきながら見方大尉が聞いてくる。

「あれ?出かけるんですか」

「ああ。少し出かけようと思っているんだ。見方大尉はどうする?」

僕の問いに、見方大尉は一瞬「えっ?!」みたいな表情をした後、「い、いや。俺は少し用事があるから…。それにこっちなら俺がついてなくても問題ないでしょうしね」と苦笑しながら答える。

「そうか?」

「ええ。二人で楽しんでいってくださいよ」

そう言った後、ニヤリと笑いつつ言葉を続けた。

「少しぐらい遅くなっても構いませんから…」

「えっ…お、おいっ…」

慌てて何か文句を言おうと思ったが、目の前にはきょとんとした表情の東郷さんがいるのだから文句も言えず、「いや、そんなに遅くならないから」と当たり障りのないことしか言えない。

「いやいや。食事くらいは自分で用意して食べますのでお気になさらずに二人で夕食も食べてくるといいと思いますよ」

「いやしかし…」

そう言いかけた僕だったが、東堂さんが少しうれしそうな表情で、「ごめんね。その時はそうしてくれると助かるかな」と見方大尉に言ってしまい、後は何も言えなくなる。

そして、その東郷さんの言葉に、ますます見方大尉の表情がニヤける。

その表情からろくでもない事を考えているのは間違いないだろう。

このままだと、下手したら「朝帰りでもオッケーですよ。皆には黙っておきますから」なんて言われそうだ。

いかん、話を本題に戻そう

「と、ともかくだ。帰りの時間は臨機応変と言うことで、まずは出る時間を決めよう。何時頃がいい?」

そう慌てて東郷さんに話を振る。

「えっと…そうですね。少し時間をください。着替えたいので…。十三時三十分くらいでいいですか?」

「ああ、それまでに僕も準備して置くよ。玄関前に車を回して待ってるから」

「はいっ。では」

そう言ってうれしそうに笑うと二階の自室の方に向う。

そんな東郷大尉の後ろ姿を見ながら僕は考える。

さて、どこにドライブしようかなと…。

すみません。

行き先まで考えてなかったです…。


時間前に玄関の方に軽をまわしてのんびりと東郷さんを待つ。

ぽかぽかとした陽気が気持ちいい。

風はだいぶ冷たくなったが、日が差しているところは熱いくらいで少し身体を動かすと汗ばむくらいだ。

平和だな…。

そんな事を思うものの、また明日からは激務が待っている。

新見准将は今頃は次の作戦の細かいところをつめているに違いない。

まぁ、帝国に対しての初の反抗作戦だからな。

それにうまくいけば、帝国東方艦隊の動きを封じ込めた上に大ダメージを与える事も出来るしな。

だから、ここ最近は勝率を上げる地道な作業が続いている。

やっと予定の一式陸攻と連山の機数も確保できたし、昨日の報告では順調に機種転換は進んでいて、来週には作戦訓練に入れるだろうという話だ。

北部基地の空港も今のところは順調に整備中だが、トラブルが起こってしまうと進行プランがガタガタになる恐れもある。

早ければ、一ヶ月後、遅くても六週間以内。

準備できる時間はそこまでで、その間に作戦遂行をしなければ、気候の変化で作戦は無理で中止になるだろう。

それこそ、時間との勝負だが、だからと言って準備を疎かにする事はできない。

また、急な外交の変化も注意が必要だ

実際、王国との同盟締結は国内外にかなりの影響があった。

国外では、最近、王国とタイエット国に用意したフソウ連合の特別大使館からの情報では、まだ接触のない国から話し合いの場を持ちたいという事が表裏に色々きているようだ。

また、それとは別に新しい情報を集める事も重要となる。

まぁ、その件に関しては諜報部の川見中佐の推薦による人物だから大丈夫だとは思うが、それでもすこし不安もある。

もっともここで色々言っても仕方ないので、彼らを信じるしかないわけで我ながら少し心配性だなと思う。

それと国内では、元降伏派のイタオウ地区責任者の橋本が変な動きをしていると情報が来ている。

まぁ、たいした事は出来ないと思うけどね。

それよりも注意すべきは、トモマク地区責任者の斎賀露伴だろう。

もし報告どおりなら、王国との同盟締結によって動き出すはずだ。

ふう…。

ため息が漏れる。

一国民だった頃は、無責任に色々思ったり発言したりしたけど、今の立場だと実に人を纏めるのが大変であり、いかにより多くの人々が満足できるかを実践する為には途方もない妥協と努力が必要なのだと実感する。

軽の屋根の部分に両手を乗せるとその上に顔を乗せて体重を預ける。

まだまだ落ち着いていられないな…。

そんな事を思っていたときだった。

「す、すみません。お待たせしました」

そう声がかけられ、僕は声の方向を振り向く。

そこには、少し頬を染めて恥ずかしそうに佇む東郷さんの姿があった。

髪はゆったりと流し、きらきらと日の光に輝き、いつものパンツルックやズボンとは違うふわりとした感じの少し暗い感じの紅いスカート。

そして清潔な感じのする白いシャツとスカートに合わせたのだろうか。かわいい感じの似たような色合いの紅いジャケット。

それに足元には黒い靴下と紅いスニーカー。

どうやら、普段の黒や白っぽい服などの地味な色彩とは違うおしゃれな感じだ。

そう言えば、何かの雑誌かなんかに書いてあったな。紅系はかなり攻めのコーディネートらしい。

本当かどうかは知らないが、普段とは違う服と雰囲気に、僕は見とれてしまう。

「えっと…変じゃないでしょうか?」

そう聞かれてやっと我に返った僕は慌てて答える。

「いや、すごく似合っていると言うか、なんかいつもよりもすごく綺麗だ…」

すらすらとなんか言えたけど、普段ならなかなかこうは言えないだろう。

多分、彼女のいつもと違う服装と雰囲気に呑まれたのかもしれない。

僕の言葉に、ほほを少し染めるだけだった東郷さんの顔が真っ赤になる。

「あ、ありがとうございます」

「でも、そんな服、持ってたっけ?」

僕がそう聞くと東郷さんはにこりと笑う。

「実はこの前の休みの時に、つぐみさんに誘われてショッピングにいったんです。その時に…」

そう答え、少し心配そうに僕の顔を覗き込むように見る。

「駄目だったでしょうか?」

「いや。それは構わないよ。ただし…」

僕が言いかける言葉の上に東郷さんが言葉を重ねる。

「向こうの世界の事は秘密にする…でしたね」

「ああ。そうだね」

くすくすという感じから始まり、すぐに二人で声を出して笑いあう。

しかし、そんな時間はすぐに終わる。

玄関先に出てきた見方大尉から声がかけられたからだ。

「まだいたんですか?」

そう言われて時間を確認する。

もう十四時近い。

なんか時間が経つのが早い気がするが、まぁ、仕方ないのかもしれない。

楽しい時間は、すぐ過ぎてしまうように感じるのだから。

そこまで考えて、ふと思う。

僕は東郷さんと二人で出かける事をすごく楽しい事と感じている事に…。

まぁ、いいか…。

思いついた事を頭の片隅に押し込むと、僕は東郷さんに声をかける。

「さぁ、ドライブに行こうか!」

そして返ってきた言葉は、楽しそうな声で「はい」と言う返事だった。

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