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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第三十六章 第二次アルンカス王国攻防戦

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悪夢  その3

加賀、赤城が敵の攻撃を受け、第一機動部隊は大混乱に陥っていた。

謎の飛行物体による攻撃。そしてその攻撃に対して対空防御をすることが出来ず、そしてこの攻撃力の高さを目にしたのだ。

そして、その攻撃で、自慢の大型空母二隻と駆逐艦一隻が被害を受け、その内、空母一隻と駆逐艦一隻は撃沈され、もう一隻も戦闘不能状態に陥ってしまっていたのだから。

それに、自分達の戦力に自信を持っていたが故に余計にその反動として大きくなってしまっていたが、そんな中でも状況を把握して的確に動く艦もあった。

防空巡洋艦の摩耶と航空母艦飛龍である。

摩耶は、混乱する艦隊の中、被害を受けた艦艇の乗組員の救助と防空警戒をより密にすることを指示し、急いで電探装備の零式水偵を二機発艦させた。

確かに零式水偵の装備する電探は、艦搭載の物に比べて範囲も狭く性能が劣ってはいたが、攻撃された方向に飛ばすこと、そして高度をとって警戒に当たる事で、敵の攻撃をより早く察知しようと動いたのである。

この指示は、摩耶の付喪神によって出されたが、彼とて決してショックがなかったわけではない。

艦体防空の要として、より高性能の電探と対空処理能力を与えられたものの、その期待された能力を発揮できなかったのだ。

悔しさと無念で一杯であったが、だが戦いはまだ終わってはいない。

ましてや、まだ艦隊には飛龍と蒼龍という二隻の空母が残っている。

この二隻だけでも死守しなければという思いと自分の責務を全うするという責任感が彼を混乱からいち早く回復させたのである。

そして、飛龍は直ぐに蒼龍と連絡を取り合い、攻撃隊の編成を始める。

戦力としては、搭載機の関係上、赤城、加賀に比べ、戦力としては見劣りするものの、このままやられっぱなしで終わるつもりはない。

勿論、飛龍も驚愕したものの、戦うことなく退場させられた加賀の無念の思いを感じ、また戦いは終わっていないと自身を奮い立たせたのである。

そして、この二隻の働きによって第一機動部隊の混乱は収まりつつあった。

そんな中、警戒に上がっていたH221から無線が入る。


『この海域に敵がいる可能性濃厚。先行していた機体は謎の高速飛行物体の体当たりで撃墜された。恐らく高度が高いと攻撃される恐れあり』


その報告は、攻撃隊の準備が進められる中、届けられた。

その報告を受け、飛龍は声を上げて言う。

「いいかっ、連中の武器は、我々の知らない兵器だ。しかしだ、我々の力の及ばない相手ではないはずだ。皆、加賀と赤城の弔い合戦といこうではないかっ!」

その言葉は、館内放送でも流され、艦橋内だけでなく、艦内の至る所、飛行甲板で、次々と同意の声が上がった。

「そうだっ。我々の力を見せてやる」

「わが戦友の無念を晴らす時だっ」

「気合入れていけ。弔い合戦だっ」

次々と声が至る所で上がる。

確かに戦力は半減した。

しかし、第一機動部隊の士気は、まだ戦えるという思いと敵討ちをするぞというやる気でより高まっていたのである。

そんな中、先行する零式水偵の電探が海面近くを飛行する機影を捉える。

それは海面すれすれをホバーリングしており、艦隊の距離がある為、摩耶の電探でさえも引っ掛からなかったKa-25であった。

だが、高度を上げ、先行警戒していた零式水偵の電探はその機影を捉えたのである。

その報告を聞き、警戒で上がっていた紫電改六機の内、二機が動く。

そして、飛龍、蒼龍の飛行甲板では攻撃隊の準備が着々と進められていた。



「エボニーより報告。敵大型艦二隻、小型艦一隻に命中。恐らく大型艦一隻、小型艦一隻は撃沈したと思われます」

その副長の報告に、艦長はニタリと口角の隅を吊り上げる。

そして、艦橋内に歓声が上がった。

その乗組員の歓声を満足そうに聞いていたが、艦長は直ぐに表情を引き締め直し、口を開く。

「同志諸君、嬉しいのはわかるがまだ浮かれるのは早いぞ。敵はまだ残っている。徹底的に叩き潰してやろうではないか!」

そして、そこで一旦言葉を切って周りを見渡し、言葉を続けた。

「我らが老師の為に」

その言葉を聞き、艦橋内の乗組員達が声を上げる。

「「「我らが老師の為に」」」

それは彼らの強い意志が感じられる言葉であった。

だが、よく考えればおかしい事だ。

彼らがこの世界に来てまだ半年と経っていない。

なのに彼らの心には、強い老師への忠誠心があった。

本来ならあるはずであろう祖国や家族への思いは微塵も感じない。

しかし、誰もそれをおかしいとは思っていない。

つまり、彼らはそうあるべきだとされてしまっていたからだ。

「よし。エボニーに連絡だ。次の攻撃の誘導を行い、戦果報告後は帰投せよとな」

それは、まもなく艦のレーダーに敵艦隊を捉えるという事でもある。

「了解しました」

副長はニタリと笑って言葉を続ける。

「五番から八番、準備は終わっております」

艦長は楽し気に笑みを浮かべた。

そして、無線でK-25に命令が伝えられ、四発のP-1000対艦ミサイルが発射された。



低空で警戒していたH-221は海面すれすれを飛んでいた。

これは敵艦隊が電探を装備していることを考えての対応であった。

もちろん、普段ならこんなことはしない。

しかし、彼らは遥か射程範囲外から撃墜されるところを目撃しているのだ。

それを考えれば、より低空の方が敵の電探に引っ掛からないと判断したのである。

そして、その結果、彼らは遂に敵艦隊を発見した。

もっとも、豆粒程度ではあったが。

そして、その艦隊の一隻から四つの飛行物体が排煙あげて飛んでいくのを確認する。

「敵攻撃開始。直ぐに知らせろ」

葵兵曹長が叫ぶ。

「了解しましたっ」

すぐに敵が攻撃を仕掛けた報は、飛龍に伝えられたのである。



「おい、あれだっ」

同じ頃、紫電改二機がKa-25を発見する。

海面すれすれを空中停止する異形の兵器に驚いたものの、それは一瞬で二機の紫電改はKa-25に襲いかかった。

Ka-25も接近してくる紫電改を発見し、回避行動を始める。

もっとも、彼らにしてみれば、対空兵装を搭載していない為、逃げるしか手はなかったが、相手はレシプロ機とは言えどう考えても分が悪かった。

実際、最初こそヘリ独特の動きに翻弄されたが、二機の紫電改はKa-25を追い詰め、撃墜に成功する。

「よしっ。敵機撃墜」

その報は直ぐに摩耶に伝えられる。

だが、撃墜した直後、二機の紫電改は、低空で突き進む四発の飛行物体を発見。

それに攻撃を咥えようとするも、速力の差は大きく、攻撃を加える前に引き離されてしまうのであった。



敵の攻撃が発射されたという報を受け、摩耶は直ぐに命令を発した。

飛んでくる方向はわかっている。

だが、その速力が早くて標準を合わせるのも難しいことも。

そこで、摩耶は攻撃が来ると思われる方向に護衛の艦艇を壁のように並べて航空母艦を守るような布陣を敷き、ある程度の予想範囲内に対空砲火を事前に向けて準備させた。

そして、電探に入った瞬間、一斉に対空防御を開始した。

対空弾幕を張ったのである。

だが、その弾幕の中、四発のミサイルは撃墜される事もなく、次々と艦に命中していく。

駆逐艦 朝潮、春雨、夏月、それに動きの鈍くなっていた赤城にミサイルは命中。

これにより、赤城、朝潮は撃沈され、春雨、夏月は大破して戦闘不能となる。

こうして、二隻の空母と二隻駆逐艦を失い、第一機動部隊は、戦力の半分を失った。

だが、この攻撃をしのいだ後、遂に蒼龍と飛龍から攻撃隊が発艦する。

そう、反撃をする為に。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 初感想です更新楽しみにして待ってます! [気になる点] 赤城と加賀沈んでしまいましたけど後から鍋島長官の部屋に来る描写があるんですかね、 [一言] やはり赤城と加賀はこうなる運命だったか、…
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