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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第三十六章 第二次アルンカス王国攻防戦

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第二次アルンカス王国攻防戦  その5

「よしっ。今だっ。転舵反転ーーっ。それに合わせて各艦砲撃雷撃戦始めーーーっ。タイミングは、各艦の砲雷長に任す。いいなっ」

索敵所から片時も目を離すことなく敵の動きを見ていた佐々木少佐が命令を下す。

その命令を受け、第一水雷戦隊旗艦の軽巡洋艦球磨が大きく舵を切る。

傾きつつも半円を描きつつ球磨が敵艦隊に腹を見せる。

その動きに合わせて、主砲が火を噴き、次々と魚雷が放たれる。

そして、播磨の後ろに続く駆逐艦 吹雪、白雪、初雪、深雪の四隻も同じように向きを変えつつ砲撃と雷撃を実行していく。

激しい操艦をしつつの砲撃はあくまでも命中させるというより牽制で、雷撃が本命である。

その為、各艦とも時間差を狙い、次々と魚雷が発射される。

距離こそ一万あるものの、時間差で幅を広げつつ放たれた魚雷は、まるで狙いすましたかのように敵艦隊の中に吸い込まれていく。

まさか、この距離での雷撃が届くとは思っていなかったのだろう。

だが、それでも敵艦隊は念の為だろうか回避行動に移るものの、航跡の出にくい酸素魚雷という事と三列縦陣という事で、右前から放たれた魚雷の発見は、右列、中央、左列へ、さらに後ろに行くほど難しくなる。

それは回避できない、或いは見つけても回避が間に合わないという事に繋がる。

その結果、中央、左列の後ろに次々と水柱が上がり、直撃を受けた艦艇が撃沈されていく。

だが、その戦果を確認する事もなく離脱していくフソウ連合第一水雷戦隊。

一方的にやられた上に戦果も確認せず離脱していくその動きに、サネホーン第一遊撃艦隊のザンドハッハ提督はブチ切れ、追撃命令を出す。

離脱する第一水雷戦隊を逃がすまいと追撃してくる第一遊撃艦隊。

その様子を確認すると、佐々木少佐は指示を出す。

「よし。かかったな。各艦に伝えろ。距離をうまく調整しつつ軽く砲撃して煽ってやれ。連中の熱を冷まさせるな」

そう命令を下すと、ふーと息を吐き出して肩を軽く回した後、索敵所から艦橋に向かう。

そして艦橋に戻ってくると副官と球磨にむかってニタリと笑った。

まさに得意満面といったところだろうか。

「で、どうよ?」

そう言われ、副官である森少尉は思わずといった風に苦笑する。

「本当に相変わらずさすがですよ。あれだけやられたら、敵さん必死に追いかけてきますよ」

森少尉がそう言うと、球磨も大きく頷く。

「これで連中は、こっちを追撃するという選択しかなくなりましたな」

二人の言葉に、佐々木少佐はますます笑みを浮かべた。

意地悪そうな笑みを……。

で、かなり気分がいいのだろう。

上機嫌で聞き返す。

「それで魚雷の再装填は?」

「もう指示を出して始めてます。目的の場所につく前には完全に終わりますよ」

「じゃあ、計画通りに進行中だと伝えておいてくれ」

「了解しました」

そう言うと、森少尉は通信兵に『計画進行中。変更なし』と伝えるように指示を出す。

それを聞きつつ、佐々木少佐はテーブルに広げられた海図を確認するのであった。



「何をやってるっ。当てろっ。当てんかっ」

次々と放たれる主砲。

だが、それは第一水雷戦隊の至近距離に着弾する事はなく、離れたところに次々と水柱を上げるだけである。

その有様がザンドハッハ提督の怒りに油を注ぐこととなる。

だが、さすがに高速移動しつつの砲撃がそうそう当たるはずもないと判っている副官が諫めようと必死になって言い返す。

「無茶言わないでください。こんな速度で移動しつつ砲撃なんてそうそう当たりません。それに敵がこうも島の間をうまく使って回避されれば、狙いの定まりません」

実際、第一水雷戦隊は島々の間を縫う様に動いおり、その動きも加味され益々当たりにくくなっているのは間違いなかった。

「ちっ。だが、距離は少しずつだが縮まっている。各艦砲撃と追撃を緩めるな」

巡洋艦を中心に編成された速力重視の艦隊編成だから、こういう追撃戦も出来るというものだ。

ザンドハッハ提督はそう思ていた。

確かに間違いはない。

重戦艦、戦艦で構成されている主力艦隊なら、こんな追撃戦は出来なかっただろう。

だが、彼は勘違いしていた。

敵の艦隊の速力よりも、我々の速力の方が早い。

だから、少しずつではあるが距離が縮まっていると。

また、敵はこっちに一撃与えた後は、かなわないと判断して離脱していると思い込んでいた。

だから、第一水雷戦隊にはまだ余裕があり、まさかわざと速力を押さえているとは思わなかったのである。

ジリジリと距離が縮まっていく。

一時期は一万以上の開きがあったが、今や距離は八千を切る程度までになっている。

そして、遂に離脱を諦めたのか、第一水雷戦隊は速力を落としつつ艦隊を右側に転身した。

それは、追い詰められた連中が、腹を見せ、最大火力で砲撃戦を仕掛ける様に彼には見えていた。

「よしっ。遂に連中も諦めたかっ。敵にはもう魚雷はない。火力は我々の方が上だ。敵艦隊と平行に移動しつつ、最大火力で一気につぶすぞ。艦隊の向きを変えろ。面舵だっ」

そう命じつつ、ザンドハッハ提督険しかった表情を緩め、ニタリと笑う。

それは勝利を確信した笑みでもあった。

だが、その命令を待っていたかのように索敵所から報告が入る。

「右後方の島影より、艦影現わる。数は四つ、或いは五つです」

その報告に、ザンドハッハ提督は聞き返す。

それは、軽巡洋艦多摩を旗艦とし、駆逐艦叢雲、東雲、薄雲、白雲の四隻からなる第二水雷戦隊で、島陰に隠れて第一遊撃艦隊が誘い込まれるのを待ち伏せしていたのである。

しかし、そんな事をザンドハッハ提督を始め、第一遊撃艦隊の者達がわかるはずもない。

「ど、どういうことだっ。間違いないのか?」

「はっ。間違いないそうです」

副官が慌てて確認し、そう返事をする。

「後方に出現した艦隊、こちらに向かって距離を詰めてきます」

次の報告が入り、ザンドハッハ提督に決断を求めてくる。

ちっ。

舌打ちしつつも、今は少しでも時間が惜しい。

味方という事はまずない。

間違いなく敵であり、我々は敵の待ち伏せに引っ掛かった事だけははっきりしている。

戦艦や、重戦艦、装甲巡洋艦ならば、前後に主砲があるが、二等巡洋艦は前方にしか主砲はない。

そして、この艦隊の主力は二等巡洋艦であり、後方の火力は大きく落ちる。

その上、後方の艦隊は雷撃戦が出来る。

「くそっ。ハメられたかっ」

そう吐き捨てて地団駄踏みたいところだが、そうも言ってられない。

ならばどうするか。

このまま戦ってもジリ貧であり、後方の艦隊に向かって転舵するなんてのは、下の下だ。

ならば、やる事は一つ。

悔しいが被害が出たとしても一旦離脱して体勢を立て直す必要がある。

「各艦に伝達っ。命令変更だっ。このまま艦隊は前方の敵艦隊に向かって進め。そして敵艦隊を突っ切った後、再度隊列を組みなおす。各艦続けっ」

ザンドハッハ提督はそう命令を下す。

前方の艦隊は魚雷を使い切っており、何とかなると判断したのである。

だが、この世界では、予備の魚雷は搭載しないのが当たり前であり、一度放てば次はないはずだった。

しかし、第一水雷戦隊の駆逐艦は、特型駆逐艦の吹雪型であり、十二年式三連装発射管三基を装備し、魚雷を十八本搭載しているのである。

そして、すでに第一水雷戦隊は、砲撃だけでなく雷撃攻撃できるように敵艦隊に向けて腹を見せる様に動いている。

それは丁字戦法と言われるものだ。

そして、敵艦隊突破を狙ったサネホーン第一遊撃艦隊旗艦に火砲が集中し、次々と放たれる魚雷が艦隊に襲い掛かる。

勿論、後方に回った第二水雷戦隊からも砲撃が始まった。

だが、さすがに同士討ちを避ける為、距離を置いての砲撃のみではあったが、それでも第一遊撃艦隊の将兵にとっては、恐怖をより増す効果になっただろう。

最初の集中砲火で旗艦が撃沈して指揮系統が崩壊した後は、サネホーン艦隊はすでに烏合の主と化しており、砲撃と雷撃によって次々と各個撃破されていく。

それでも、第一水雷戦隊の後方をすり抜け突破した艦はあったものの、その突破した艦艇は、後方から追い立てていた第二水雷戦隊が速力を上げて追撃。

次々と狩りたてられていった結果、その日の夕方になるころにはサネホーン第一遊撃艦隊はほぼ壊滅し、無傷でサネホーンに戻ることが出来たのは、最初の戦いで救助を命じられた二等巡洋艦二隻のみであった。

〇フソウ連合 被害


第一水雷戦隊 軽巡洋艦 球磨 小破

        駆逐艦 吹雪 小破

        駆逐艦 深雪 軽微


第二水雷戦隊  駆逐艦 薄雲 軽微

        駆逐艦 白雲 軽微    


 死者二十名 重軽傷者 三十三名 

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