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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第三十五章 戦火の嵐

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天の鉄槌(ナテロ デ カルス)作戦  その7

「被害の方はどうだ?」

心配そうな表情でそう聞いてくる毛利少将に、戦果よりも被害を先に聞いてくるあたりこの人らしいなと副官の浜辺大尉は心の中で思いつつボードに挟まった報告書に目を通しつつ口を開く。

「第一次攻撃隊十二機の内、損傷三機、未帰還機二機となっています」

その報告に、毛利少将は少し眉を顰める。

「パイロットは?」

「パイロットの方は警戒に当たっている二式大艇が回収済みで、大きな怪我もなく、警戒任務が終了すればそのまま王国の基地へと送り届けるそうです」

その報告に、毛利少将の顔が少し柔らかくなった。

「しかし、未帰還機二機と損傷三機か……。今回の敵はそれほど対空砲火は激しくなかったと聞いている。それなのに被害が大きい。やはり研修過程が足りなかったのではないか?」

その言葉に、ボードから視線は上げて浜辺大尉は言う。

「研修過程は十分でも経験が足りないのでしょう。ですが、こんかいはいい経験になったと思います。いきなり蜂の巣のような対空砲火ではなかったんですから」

実際、王国派遣艦隊に配属されているパイロットは、その熟練度が大きく二分化している。

毛利少将と何度も実戦を潜り抜けてきた水上機乗りと、研修過程が終了したばかりの空母配属の新人とに。

勿論、空母に派遣されたパイロットの全員が新人ではないし、空母に離着陸できる技量はもっているからかなりのものだろう。

しかし、実戦経験が皆無で初任務が今回という時点で、経験不足という点は仕方ないのかもしれない。

それに指導するベテランもいるが、その人数は余りにも少ない。

その原因は、元々、王国派遣艦隊の主任務が対潜水戦闘や哨戒が主なものであり、艦艇攻撃は重視されていなかったという事とサネホーンとの戦いが控えている現状では、ベテランをこちらに回す余裕があまりにもなかった為であった。

そして、毛利少将もいつも見慣れている水上機乗りに比べて余りにも差を感じてしまっていたため、ついついそう聞いてしまっていたのである。

「ふむ。それを考えれば今回は確かにいい経験を積む機会ではあるか……」

「ええ。今はひよっ子でも、今回の事を糧に皆大きくなっていくと思います。そう信じましょう」

浜辺大尉がそう言うと、毛利少将はふーと息を吐き出す。

「そうだな」

短くそういった後、視線を動かしてすぐ側で軽空母から離陸していく九七式艦攻改を見つつ言葉を続けた。

「ただし、鷲や鷹になる前に潰れられても困るからな。無理のないように、あとサポートは万全にして対応してくれ。彼らは我々の未来のエースパイロットなのだから」

その言葉に、浜辺大尉は嬉しそうに微笑む。

「勿論です。攻撃隊の隊長にも警戒している水上機隊にも徹底させます」

「ああ頼むぞ」

そう言いつつ、毛利少将は上空で編隊を組み、連盟艦隊に向かって飛行していく第三次攻撃隊を見送る。

全機の無事を祈りつつ……。



時間をある程度あけて次々と襲い掛かるフソウ連合の航空部隊の攻撃に、連盟主力艦隊は翻弄され続けていた。

第一次攻撃に対に比べ、第二次攻撃以降は、機数は二桁になっていない。

下手すると三機、四機の時もある。

だが、レーダーもなく、肉眼での発見しか出来ない連盟主力艦隊にとっていきなり現れて攻撃してくる航空部隊にいい様に振り回され続けている。

それに第一攻撃隊による被害が大きかったのと一機も落とせなかったという事が大きい。

その結果、第一次攻撃以降は艦隊は常に警戒し、ピリピリした空気に包まれている。

その上、昼食もろくに取れず、休む暇もない状況が夕方近くまで続いている為に誰もが疲れ切ってしまっていた。

もっとも、飛行機という兵器を詳しく知っていたならばもう間もなく日が沈むという時間での攻撃は恐らくないと判断しただろうが、連盟側には飛行機という兵器の情報は余りにも少なく、そう判断することが出来ず警戒を解くわけにはいかないでいた。

しかし、陽が沈み始めるころからピタリと止まった航空攻撃に、当たりが真っ黒な暗闇に覆いつくされた頃になって、やっとフソウ連合からの攻撃は終わったとパメレラン提督は認識した。

「ふぅ……」

思わず安堵の息が漏れる。

副官に最終被害報告を調べる様に命じると時計を確認する。

もう二十時近い時間帯になってしまっていた。

当初の夜戦予定時間は、二十二時か二十三時。

余りにも時間がないが、疲れ切った表情の兵達を見てどうすべきか迷う。

短時間でも休息と食事をとり、戦いに挑むか、或いは一度後退し出直すか……。

だが、昼間のフソウ連合の航空攻撃が頭をかすめる。

あれが続けられると艦隊決戦どころではない。

ならば、ここは無理をしてでも王国との艦隊決戦に挑み、勝利する必要がある。

そう判断し、命令を下そうと口を開きかける。

だが、それより早く通信兵から報告が入る。

「先行している装甲巡洋艦イテリアーナから入電。『敵艦隊、目的地に近づく。繰り返す、敵艦隊目的地に近づく』以上です」

目的地とは、決戦場として設定しているラフィード諸島の事である。

そして、警戒に当たっている先行艦艇が発見したという事は、あと一時間もしないうちに辿り着くという事だ。

つまり、連中はかなりの速力で動いているという事になる。

すーっとパメレラン提督の背中に冷たい汗が流れた。

やはり引くべきか……。

だが、それではわざわざ潜水艦隊の連中まで引きずり出した作戦が無駄になる。

そうなれば、例え戦いに勝ったとしても、後日とんでもない言いがかりになってしまう恐れがあった。

また、もし、ここで引いた場合、速力が遅い潜水艦では恐らく次の戦いの場に到着するのが遅れて彼らの援護は期待できないだろう。

それに、昼間だとフソウ連合の連中も……。

深刻そうな表情で黙り込むパメレラン提督に副官が恐る恐るという感じではあったが口を開く。

「提督、ここはやはり一度艦隊を引いて……」

だが、その言葉は、パメレラン提督の強い言葉で否定された。

「いかん。今夜決めねば明日もまたフソウ連合の攻撃にさらされるぞ。そんな中、王国との艦隊決戦が出来ると思うか?それにだ。罠が無駄になる。よってここで決着をつけるしかないのだ。各自疲れ切っているとは思う。だが、ここが踏ん張りどころだ。ここさえ耐えれば。そして勝利すれば、何とかなる」

その言葉に、副官は決心したのだろう。

強い意志を感じさせる表情で口を開いた。

「了解しました。今が正念場という奴ですね」

「ああ、その通りだ。急いで交代して食事をとるように指示を出せ。それと被害報告の方はどうなっている」

「はっ、こちらになります」

副官から渡されたボードに挟まっている報告書に目を通すと、パメレラン提督は直ぐに命令する。

「被害のあった艦艇は後退。現状の残った艦艇を再編成しなおせ」

「はっ。すぐに」

副官がそう言うと駆け出していく。

時間的余裕はない。

その思いがどうしても行動に出てしまうのだ。

そして命令を下す。

「一時間もしないうちに戦闘になる可能性が高い。各自警戒を怠るな」


こうして、連盟主力艦隊は、王国艦隊との艦隊決戦、夜戦へと挑む。

だが、それは当初予想していた楽な戦いとは真逆の、先行艦隊が撃退された悪夢の続きと言うべき戦いの始まりでもあった。

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