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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第一章 はじまり、そして始めての海戦(ガサ沖海戦)
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日誌 第一日目 その5

方針と編成、それになんか僕がこの地区の責任者になってしまったというとんでもないことが終わった後は、宴会へと突入した。

「では、我が艦隊の未来と…」

代表で大和改がコップに入った透明のお酒を掲げながらそこまで言った後、こっちを見てニタリと笑う。

「そして、我が司令長官の地区責任者就任を祝って…」

おいおい…。

思わず口が開きかけたが、それより先に「かんぱーーーいっ」という音頭が先に響いた。

そして、それにあわせて全員がコップを掲げて叫ぶ。

「「「「かんぱーーーーーいっ」」」」

なんか納得できない気持ちだったが、その後も大変だった。

一人ずつ僕のところに艦達が挨拶に来るのだ。

もちろん、挨拶だけで済むはずもなく、得意な事や苦手な事、自分がいかに精鋭かをみんなアピールしていく。

その思いと熱意に圧倒されっぱなしで、僕はうなずきつつも言われた事を何とか頭の中に書き込んでいく。

今からは適材適所を実行していく必要があり、より彼らに活躍の場面を与え、不手際を起こさないように考慮しなくてはいけないからだ。

だから、自然と熱く語る事を熱心に聴く為、ますます話す方も熱を帯びるという無限ループに入りかける。

そうなると時間はいくらあっても足りないし、経つのはあっという間なので、途中から東郷大尉が時間を仕切っていた。

「持ち時間は一人、三分です。いいですかっ」

懐中時計を片手にそういい切る大尉の言葉に、

「えっ、それだけなのかよ」

「いや、それだけで私のいいところはわかってもらえないと思うんだが…」

「横暴だっ。何で大尉が仕切るんだよ」

などなど…。

こんな感じでブーイングが起こりかけるものの、大尉の「じゃあ、文句のある人は、会談時間一分ね」という言葉と細くなった目でぎろりと睨まれると皆押し黙った。

いやはや有能じゃないか、うちの秘書官は…。

その仕切り能力の高さに思わず感心してしまう。

まぁ、そんな感じで、食事や酒を楽しみつつ、現在動けるメイン艦艇のほとんどと話をすることが出来た。

もっとも、小型の哨戒艇や敷設艦、輸送艦といった人たちは数が多いので、後日少しずつやって言う事思っている。

なんせ二百隻近いのだから…。

「ふう…、これで全員かな?」

「艦船の方は終わりましたが、それ以外の方が後何人かいます」

その言葉に首をひねりつつ聞き返す。

「それ以外の方?」

「はい。護衛の責任者と参謀本部の代表、後は後方支援本部に諜報部門と広報部の代表ですね」

そう言われ納得する。

つまり、我が艦隊司令部の幕僚と言ったところだろうか。

そんな事を思っていると、僕の前に五人の黒い軍服姿の男女が進み出てた。

まず最初に一歩踏み出して敬礼してきたのは白い髭を生やした五十代の男性で、かなり体格がいいためごつい感じに見えるが表情は温和そうだ。

「新見正人大佐であります。参謀本部本部長をやっております。参戦の立案、実施には我々に声をおかけください」

「わかった。艦隊運営などは素人だからな。色々教えて欲しい」

「はっ、お任せください」

続いて前に出て敬礼したのは、ひょろりとした優男風の三十代男性だ。

「鏡敏則少佐であります。後方支援本部をまとめております。支援物資や補給等などは私までお願いいたします」

「そうか。なら、早めに補給物資の消費と補充の目安などをグラフにして回してほしい。後は、在庫の量なんかもお願いしたい。現状どれくらいかをまず把握しておきたい」

「はっ。すぐにまとめて提出いたします」

三人目に出てきて敬礼したのは、坊主頭の四十代の目つきの悪い男性だった。

「諜報部をまとめております川見悟少佐であります」

そう言った後、少し苦笑いをしつつ言葉を続ける。

「外の国は情報網の構築はまだなので無理ですが、フソウ連合内はすぐにでも対応できます」

その言葉を聞き、僕も苦笑する。

まぁ、今まで結界で外とはほとんど交流も何も無かったのだ。

仕方ないといったところだろう。

だから、僕の苦笑しつつ言葉を返す。

「これからは外の国に対しての情報が大事になってくる。情報網の構築は優先させる予定だ。だから頼むぞ」

「はっ。ご期待ください」

そして、四人目に三十代前半といった感じの派手な印象の女性が前に出て敬礼する。

「広報部をまとめています。杵島マリ大尉です。広報や住民への対応や処理、その他の雑用などを担当しています」

「住民に理解が得られるのと得られないのでは大きく違うからな。それにイメージは大切だ。これからは外の国にもいろいろ絡んでくるからな。諜報と同じく重要な仕事だ。だから活躍を期待している」

僕がそう言うと、彼女は瞳をうるうるさせている。

何か変な事を言ったかと思ったが、隣にいた東郷大尉がこそりと僕に囁く。

「広報部は他の部門に比べて軽視されがちなんですよ」

それで納得した。

僕が重要な仕事で、期待しているなんて言ったものだから、感動しているといったところだろうか。

そして最後の一人が前に出て敬礼する。

二十代後半のどちらかというとたくましい感じのイケメン男性だ。

「見方敦大尉です。今日から長官直属の護衛隊の責任者としてよろしくお願いいたします」

なんか顔を見てひっかかるものがある。

なんか知っているようで、知らない…。

どこかで見たような顔…。

そんな顔だ。

いや、まさか…。

「もしかして…」

僕はそう言いつつ、東郷大尉を見る。

「はい。私の従兄弟になります」

「道理で似ていると思ったよ。これからいろいろよろしく頼むよ」

「はっ。長官の身は、しっかり護衛させていただきます」

そう言ってきりりとした表情で敬礼する見方大尉。

なかなか頼もしい感じだ。

「以上がメインスタッフになると思います」

そう東郷大尉は言って僕に敬礼をする。

全員を見渡し、僕は敬礼を返そうかと思ったが止めた。

「これから迷惑をかけるがよろしくお願いします」

そう言って頭を下げる。

その場にいた全員が驚き、慌てている。

隣にいた東郷大尉が慌てて頭を上げるように言うが、僕は言葉を続ける。

「敬礼やえらそうな事を言ってみても、僕はまだ素人だ。だからね、やっぱり頭を下げるべきだと思うんだ」

そう言った僕の肩にぽんと手を乗せる人がいる。

「その意気は良しと思いますが、あまり最高責任者がぺこぺこするのは、仕える者としては複雑な心境ですな…」

僕が顔を上げると神妙そうな表情を浮かべる新見大佐が僕の肩に手を置いている。

そして、僕と目が合うとにやりと笑って言葉を続けた。

「それに長官は謙虚で実にいい人のようだが、少しは腹黒くなってもらわねば困りますな」

「そうだな。あと、上に立つ人間は少しぐらいふんぞり返るぐらいがちょうどいいしな」

鏡少佐が苦笑しつつ新見大佐の言葉に続けてそう言うと、それに負けじとばかり川見少佐も言葉を発した。

「そうだな。それぐらいがいいと思うな。まぁ、悪い気はしないし新鮮な感じはしますがね」

「でも部外者のいるところはやめてくださいね。イメージが格下に見られちゃいますから」

そう言ったのは、広報担当の杵島大尉だ。

しかし、皆色々言いつつもなんかうれしそうだ。

だから思わず、拗ねて言ってみる。

「でもさ、みんなうれしそうじゃないか…」

全員が互いを見合わせ、表情を確認すると笑い出す。

そして、僕もつられて笑った。

どうやら、僕は彼らに上司として認められたようだった。

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