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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第三十章 見えない敵との攻防

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ルイジアナ 対 第二艦隊第二分隊  その3

「先行する彩雲から入電。『敵艦隊発見す。針路予想と変更なし』だそうです」

田組飛行兵曹長のその報を聞き、金丸少尉はニタリと笑みを浮かべる。

これで発見できず肩透かしを食らって帰投する事はなくなったと。

「よし。各機も受け取っているとは思うが、確認しておけ。天候は良し。最大の懸念であった敵艦隊も発見できた。後は我々の力を見せつけるだけだとな」

そう言った後、少し心配そうな顔で金丸少尉は言葉を続けた。

「それはそうと、艦攻の連中、うまくやっているのか?」

「はっ。遂行中を示す返信のみが出ているようですね」

「そうか。なら、我々は我々の作戦を進めるぞ」

「了解しました。連中に一泡も二泡も吹かせてやりましょう」

田組飛行兵曹長の言葉を聞き、金丸少尉は笑いつつも徐々に表情を引き締めていく。

そして遂に彼らの目にも敵艦隊らしき点が目に入った。

中央に一際大きな点があり、その周りを小さな点が守る様に囲っている。

俗にいう輪形陣という形である。

フソウ連合も機動艦隊や防空戦の時によく行う陣形である。

ということは、中央が例の超々弩級戦艦ってやつか……。

今まで戦ってきた連中でこういった陣形を行ってきた者達は、アメリカ海軍の機動部隊だけだ。

それ以外は、飛行機に関しての知識が不足している為だろう。

今までの海戦での陣形のままという事が多かった。

つまり、相手は飛行機に関しての知識と対策を持っているという事になる。

まぁ、水上機や航空母艦を運用しているのだから、当たり前といえば当たり前である。

こりゃ、手ごいかもな。

金丸少尉はそう判断するも、それで攻撃を中止などするはずもない。

それどころか、すごくワクワクしていた。

以前は、被弾して愛機を失ったが、あれからどれほど腕が上がったのか。

それを試せるとわかって……。

それに気が付き、金丸少尉は苦笑を漏らす。

とんでもなく自分が飛行機馬鹿だと再認識して。

いいじゃないか。

こっちは命を張ってるんだ。

これくらいは楽しんでも罰は当たらんさ。

その思いを歓迎するかのように、敵艦隊からの対空砲火が始まる。

場もあったまったことだし、相手も持ちきれない様子だ。

そろそろ始めますか。

そして、命令を下す。

「各機予定通り順次攻撃を開始せよ」

その命を受け、蒼龍と飛龍の艦爆隊は二機ペアとなり攻撃を開始しする。

勿論、指示のあったようにあらゆる方向からの波状攻撃である。

右から左から、そして前から後ろから。

対空砲火を搔い潜り、次々と彗星が急降下爆撃独特の金切り音を響かせながら攻撃していく。

その予想できない攻撃に、敵艦隊の対空砲火は振り回されている。

その上、対空指示が統一されていないのだろう。

弾幕が張られていない有様で、すいすいとその隙間を縫って彗星は攻撃を継続していた。

そしてそんな有様の中で、唯一何とか弾幕らしいものが出来ていたのがルイジアナである。

なんせ、日本海軍の特攻に対応するためにハリネズミのように対空火器が搭載されていたのだから当たり前といえば当たり前だ。

しかし、それでも金丸少尉から見れば余りにもお粗末というしかなかった。

だが、田組飛行兵曹長の感想は違ったらしい。

「敵の旗艦の対空砲火、すごいですね。みんなよくあの中を行けるなぁ……」

唖然とした声でそう言われて、金丸少尉は苦笑した。

「確かにすごい火力だとは思うが、怖くはないな」

その金丸少尉の言葉に、田組飛行兵曹長は驚き聞き返す。

「えっ?!それってどういうことぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」

いい終わらないうちに、「ほれ行くぞ」と短く言うと金丸少尉は愛機を前方に深く沈める。

急降下爆撃の始まりだ。

後に残るは、急降下爆撃機特有の金切り音と田組飛行兵曹長の悲鳴のような声だけであった。



「敵攻撃機、あらゆる方向から波状攻撃を仕掛けてきます」

「各員、落ち着いて対処だ」

ルイジアナはそう指示するも、もう大丈夫だとほっとしてしまい気が緩んだ後に攻撃を喰らったのである。

確かにレーダーによって奇襲は避けられたものの、それでも一度切れた緊張感は中々元には戻らない。

それに対空戦闘の実戦は初めてであったし、訓練回数もそれほど多くない上にレーダーを使った戦闘自体が不慣れであった。

また、召喚されていたころに積んでいた対空砲弾のほとんどは使用期限が過ぎてほとんど破棄されてしまい、今使用しているのは以前使っていたものに比べて大きく劣る劣化品だ。

それでも各自必死で迫りくる敵機に攻撃を行っていた。

そのおかげか被弾する機体はあったものの、しかしそれでも撃墜までには至らない。

その原因は、対空砲火のお粗末さも関係していたが、何より機体の性能向上が大きいと言っていいだろう。

装甲がペラペラで九九棺桶と揶揄されていた九九艦爆と違い、彗星はある程度防弾されている上に、フソウ連合の技術力の向上によって出力、防御力とも実際の機体よりも向上しているのである。

その恩恵が示されたと言っていいかもしれない。

だが、サネホーン側も巧みな操艦と必死なまでの対空砲火によって致命的なダメージは受けていない。

実際、ルイジアナに当たったのは二発のみで、それ以外の爆弾は掠めるか、近くの海面に落ちて水柱を立てている。

「くそっ。思った以上にちょこまかと動きやがる上に、対空砲火が邪魔だな」

そう言いつつ攻撃が終わり離脱していく彗星の中で大木場少尉が愚痴る。

『なら、沈めてもいいんですよね?』

そう言い切った手前、せめて命中させて面目を保ちたかったが、予想以上のやりにくさを感じてしまい、放たれた爆弾は掠める程度だった。

「次は絶対に当ててやる」

そう呟く大木場少尉。

そんな大木場少尉に相棒の吉原生実飛行兵曹が声をかける。

「どうやら、最後ですね。金丸少尉の彗星が攻撃を仕掛けるみたいですよ」

それが判ったのは、金丸少尉の彗星には、隊長機として尾翼に赤いラインが二本引いてあるためであった。

ちらりと離脱しつつ大木場少尉がそれを見る。

その目には、巧みに対空砲火を避けつつ急降下爆撃を行う彗星の姿が映る。

「くそっ。相変わらずすげぇなあの人は……」

「はい……」

そして二人の目の前で放たれた爆弾が吸い込まれるように敵の戦艦に落ちていく。

そして派手な爆発。

恐らく艦橋近くに落ちたであろう。

敵艦がぶるりと震えたように見えた。

「参ったな、本当に。実力の差を見せつけられるぜ」

苦笑してそう呟くと大木場少尉は離脱し終わった機体の数を確認する。

どうやら撃墜されたものはいないのだが、機体に被弾したものは多く、また大きなダメージを受けた機体もあるようだ。

「よし。作戦は終了だ。各機に帰投の合図を出せ」

「はっ、了解です」

上空で護衛として張り付いていた戦闘機隊の一部が護衛の為にこちら側に寄ってくる。

それらの機体と合流し、艦爆隊は艦隊との合流地点に進路をむけた。

しかし、金丸少尉の彗星と残った戦闘機隊はサネホーン艦隊の上空に張り付いたままだ。

それは何故か。

理由は簡単である。

まだフソウ連合の航空隊による攻撃は終わっていないのだ。

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