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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第二十九章 第一次アルンカス王国攻防戦

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レムカライア海海戦  その2

サネホーンの遊撃艦隊を率いているのは、ダウィード・ラーゲルチンク提督である。

落ち着いた雰囲気の中に、ギラついた貪欲そうな目つきが印象的な四十代の男性で、元々は王国の人間だがサネホーンに辿り着いて実に二十年が過ぎている。

元々軍人であったが他に選択がなかったこともあり、サネホーンに辿り着いても軍人を続けている生粋の軍人であった。

彼は政変によって祖国にいられなくなった口だが、他人よりも出世欲が強いものの、別に反交渉派ではない。

なら交渉派かと言うとそうでもなかった。

だから、他の人々からは、彼はサネホーンでは半数を占める中立派という認識であった。

また本人も否定しなかったから、益々そう思われていた。

実際、いろいろな人々を取り込んでいった結果、多種多様な派閥が生まれ、それらが集まり国らしきものになったがサネホーンであり、今回の騒動では、サネホーンの中核を占める元海賊出身者と政変に敗れ落ち延びてきた者による派閥争いという側面がある為か、我関せずという中立派が一番多い状況になってしまっている。

しかし、それは周りから見た形であり、実はラーゲルチンク提督としては、どうでもいい事であった。

ある意味、派閥争いも政治である。

彼はそう思っていたから関わらないようにしていただけなのだ。

要は、中立派と思われたいた方が都合がいい。

だからそうしているだけで、実は彼は政治が大嫌いだった。

やれ利権が、やれ人の繋がりが……。

そういった事が死ぬほど嫌なのだ。

大体、サネホーンに流れ着いたのだって、上官が政治に関わっていたために巻き込まれ、祖国を逃げ出す羽目になってしまったのだ。

その際、両親も恋人も捨てさせられた。

だからである。

だが、サネホーンにきた当初は、それでもいいと思っていた。

力があれば、認められ、上に上がっていける。

そう思っていたのだから……。

しかし、現実は違う。

どんな組織でも政治はある。

権力争いはなくならない。

実力が正しく評価されない理不尽極まりない現実が目の前に立ち塞がったのだから。

本当に、どうでもいい。

正しく俺を評価してくれればいいのだ。

それだけしか望まないというのに……。

だが、それはままならない。

人は、感情の生き物である以上……。

だが、そんな彼にもチャンスが回ってきた。

今回のアルンカス王国侵攻作戦の説明でそう確信した。

だから、自ら提案する。

別動隊を用意し、アルンカス王国に侵攻するのに合わせ、キナリア列島も攻撃してはどうかと。

そしてうまくいくようなら、キナリア列島を勢力圏に入れればよい。

そうすれば、もしアルンカス王国攻略がうまくいかなくても、アルンカス王国とフソウ連合のシーレーンは崩壊してそれぞれが孤立する。

そして、まずは戦力に乏しいアルンカス王国を陥落させ、物資の輸送ルートを押さえてフソウ連合を干からびさせる。

そうすれば、フソウ連合は、アルンカス王国の原油といった資源が手に入りにくくなり動きが鈍くなっていく。

後は、こちらがじりじりと締め上げていけばいい。

そうすれば、フソウ連合はジリ貧となり降伏するだろう。

いくら強力な戦艦や強大な戦力があろうとも、燃料がなければただの鉄屑だ。

そう説いたのだ。

そして、その提案に反交渉派は飛びついた。

彼らにしてみれば、アルンカス王国侵攻が失敗するとは思えなかったが、保険があれば安心だし、常に先手を打つことでこっちのペースで戦争を進められると思ったのだろう。

それに、もう一つの利点も大きかった。

中立派の取り込みである。

一部とはいえ、中立派が参戦参加する事で反交渉派は勢いづき、サネホーンの中核に食い込むことも可能だ。

そういったもろもろの事から、反交渉派はラーゲルチンク提督の提案を全面的に受け入れ、作戦は、当初のアルンカス王国侵攻だけのものから、アルンカス王国とキナリア列島への侵攻という二方面作戦へと変更されたのである。



十二時十八分。

丁度昼という事でほとんどの艦艇で兵達が交代で食事をとっていた時だった。

途中、フソウ連合の索敵機らしき機影はレーダーに捕捉されたが、準備不足のフソウ連合では発見したとしても手が打てない。

精々相手にするのはシーレーン維持のための護衛駆逐艦だけであり、現在基地に残っている戦力はそれほど多くない。

遊撃艦隊の誰もがそう思っていた。

だから、警戒レベルもそれほど高くなく、誰もが明日以降が本番であると思っていた。

油断しきっていたと言ってもいいだろう。

そんな中、艦隊に配備されていたレーダー艦の一隻が、艦隊に接近してくる機影を発見した。

それもレーダー範囲内の真ん中あたりにいきなりだ。

なんだ?!

慌てるレーダー担当者。

しかし、その機影は直ぐに消えてしまう。

後は何も反応がない。

レーダーの故障か?

担当の兵はそう判断し、機材のチェックに入ることを上官に報告。

現時点では危険はないと判断した上官はそれを許可する。

しかし、それは油断がもたらした悪手であった。

その結果、二隻のレーダー艦の内、一隻がレーダーを再起動させてチェックに入り、レーダー網に穴が空いた。

再起動とチェックにかかった時間。

わずか十分程度。

そして、再起動したレーダーが映し出したのは、間近に迫ったいくつもの機影だった。

担当官が悲鳴のような声を上げて報告する。

「そんなっ。敵機がっ……」

そして、その機影は艦隊の後方に位置するレーダー艦も把握したのだろう。

無線で確認の方が来る。

『敵機らしき機影を発見す。そちらは把握しているのか?』

それにより、レーダーの故障ではない。

それがはっきりした以上、やることは一つだ。

艦隊全ての艦艇に敵機接近の報を送り、警戒を促すことだ。

そして、その報は、旗艦の食堂でのんびりと食事をとっていたラーゲルチンク提督を始めとする艦隊上層部を混乱させるのに十分なものであった。

「どういうことだっ」

怒鳴りつけるかのようなラーゲルチンク提督の声に、報告を伝えた兵は怯えるしかない。

「わ、わかりません。ただ、レンパンドンパから『敵機接近。急いで防空戦闘用意を』という無線が……」

「くそっ。急いで艦橋に戻るぞ」

そう宣言すると同時に、まるでタイミングを合わせるかのように緊急事態を告げるブザーが鳴る。

「総員戦闘用意ーっ」

艦内に声が響き、食事中だった兵達が慌てふためいて入り口に殺到し、狭い艦内の廊下は行きかう人で埋め尽くされ混乱する有様であった。

それでもラーゲルチンク提督らが艦橋に辿り着いた時には、艦長が次々と指示を出し、対空戦闘に移ろうとしている所であった。

「敵はどこだっ」

そのラーゲルチンク提督の声に、艦長は緊張した表情で返答する。

「まもなく来ます」

余りにも予想外の事に、ラーゲルチンク提督は唖然としていたが、すぐに対空砲火が始まり、艦が回避行動に入ると我に返ってすぐに椅子にしがみつく。

しがみつき損ねた何人かが、艦の回避運動の動きに翻弄されて床に転がる。

「くっ。レーダ艦は何をやっていたんだ」

吐き捨てる様にラーゲルチンク提督が言うが、答える者は誰もいない。

誰も答えを知らないのだから、無理はないだろう。

艦の周りに爆弾が落ちて水柱が立ち、艦を翻弄する。

「絶対、何があったか問い詰めてやる……」

ラーゲルチンク提督はそう呟くように言うが、それはかなわぬ願いになった。

派手な爆発音が当たりに響き、レーダー艦レンパンドンパは魚雷攻撃を受け轟沈したのだ。

目の前で真っ二つになって沈むさまを目にして、ラーゲルチンク提督は叫ぶ。

「対空砲火は、何をやっているのだっ。さっさと敵機を撃墜せよ」

だが、それはあまりにも空しい叫びでしかなかった。

不意を突かれた事と昼食時間という時間帯の悪さ、それに指揮系統の混乱もあり、対空砲火はあるものの、それはあくまでも各砲座がそれぞれの判断で放っているだけであり、組織だったものではない。

あくまでも見かけた敵機を攻撃するといった対応で、余りにもお粗末なものであった。

また、対空砲火用の火器も用意されてはいたが、それは対空戦闘をメインに開発されたものではない。

あくまでも既存の砲を対空戦闘にできるようにしただけであり、きちんと対空戦闘に対しての訓練もあまりされていない状態で、所詮は付け焼刃と言ったところだろう。

その結果が、今の有様を現していた。

もっとも、反撃らしい反撃ができなかった連邦の艦隊よりは遥かにマシではあったのだが……。

そして、そんなサネホーン艦隊に襲い掛かる飛龍、蒼龍の艦載機。

その戦力は、紫電改八機、彗星十六機、天山十二機の計三十六機。

その激しい攻撃にサネホーンの遊撃艦隊は翻弄されるだけであった。

そして、この戦いでフソウ連合はその練度の高さを示す。

命令(オーダー)であったレーダー艦二隻と水上機母艦一隻を撃沈したのである。

もちろん、他の艦艇にも被害を与えたが、それは些細なものでしかなく、誰が見ても集中的に狙っていたとわかるものであった。

こうして、サネホーンの遊撃艦隊は遠くを伺う目を失った。

ラーゲルチンク提督は一瞬撤退を考える。

しかし、失った艦があまりにも少なすぎた。

たった三隻失っただけで尻尾を巻いて逃げてきたと言われるのが目に見えたからだ。

それに相手が空母ならばまだ十分勝機がある。

かってフソウ連合が空母軽視、大艦巨砲主義であったのと同じく、サネホーンでも飛行機は軽視されている。

ましてやフソウ連合よりも飛行機に関する技術が低いのだからなおさらだ。

確かに遠距離なら脅威だが、砲撃戦に入れば空母などただの飛行機用輸送艦でしかない。

そう考えたのだ。

だが、ここでラーゲルチンク提督は大きく勘違いをしている。

敵の戦力が空母戦力だけであるという事を。

そして、何より考えなければならないことがある。

なぜ準備が出来ていないはずのフソウ連合の空母がこんなところにいるのかという疑問を……。

だが、航空機による攻撃によって頭がいっぱいになってしまったのだろう。

ともかく砲撃戦に待ちこまねば……。

それだけをラーゲルチンク提督は考えてしまっていた。

それがサネホーン遊撃艦隊の命運を決める事となる。

三時間後、ついにサネホーン遊撃艦隊は、艦影を発見した。

だが、それは、空母ではなく、先行する高速戦艦金剛、比叡、天城を中心とした第一分隊であった。

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