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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第二十八章 開戦

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戦力比較

「この情報、どこまで信用していいのでしょうか……」

困ったような表情を浮かべてそう口にするのは新見中将だ。

もっともそんな表情を浮かべているのは彼だけではない。

会議室にいるほとんどの者は、似たような表情になっていた。

そんな彼らの視線の先には、ボートに挟まれたリンダから得られたサネホーンの主力艦艇の艦数が記入された紙があった。

その紙にはただ艦艇の大まかな数が記入されているだけだったが、その数がとんでもない数字だったのだ。

超々大型戦艦2隻、航空母艦3隻、重戦艦126隻、戦艦352隻、装甲巡洋艦768隻の総数1151隻となっている。

それにこれはあくまでもリンダが知っている海上戦力の主力艦としての数だ。

恐らくそれ以外にも艦船は保有しているだろうし、支援艦や輸送艦などを含めると総計で2000以上になるのは間違いないだろう。

それに対して、フソウ連合海軍の保有主力艦は、戦艦、空母、巡洋艦、駆逐艦を合わせて200もなく、外洋艦隊や各地区に配備されている地区防衛用の簡易駆逐艦や主力艦以外の補助艦や支援艦艇を足してもは600いかない。

また、六強最大の海軍艦船保有国である王国でさえ、最大時で主力艦が900前後(現在は帝国との戦いで大きく戦力を落とし、400前後になってしまっている)であったから、サネホーンの保有艦数はこの世界で最大と言っていいだろうし、保有艦数だけならフソウ連合の実に四倍以上の艦艇があることは間違いないだろう。

それは、サネホーンが亡命者の多くをその艦艇ごと引き入れていった結果だ。

だが、それ故に問題もある。

全てが全て最新型とは言えない上に、中には艦歴二十年や三十年以上のものも少なくない。

だが、旧型でも兵器は兵器だし、数は力だ。

どんな型が古い兵器でも、人を殺す為の道具には違いないのだから……。

ただ、その膨大な数のサネホーンにも付け入るスキはある。

それは航空戦力が万全でない事と、潜水艦が配備されていない事だ。

もしかしたら、リンダが知らないだけかも知れないが、その線は薄いと鍋島長官的には思っていた。

なぜなら、潜水艦を使えばもっと優位に動ける場面で、潜水艦を使っている様子がなかったためだ。

それでも、この数は脅威だ。

そして、恐らく……。

そう考えて鍋島長官はその言葉に応える。

「まぁ、この情報以下ってことはないと思っていいんじゃないかな」

その言葉に、新見中将は苦虫を潰したような顔になった。

「つまり、敵の戦力はこれ以上と?」

その問いにため息交じりで鍋島長官は答える。

「ああ。多分ね。それ以外考えられないよ」

「そうですか……」

ため息を吐き出す新見中将。

そして彼に代わって真剣な表情を浮かべつつ山本大将が口を開く。

「それで長官はどうみますか?」

「そうだね。数もだけれど、それ以上にこの中で特に注意すべきは、超々大型戦艦と航空母艦だね」

そんな鍋島長官の言葉に、山本大将が聞き返す。

「一隻は、前回の戦いでサネホーンが鹵獲したホーネットという事ですか……、残りの四隻に関しては……」

「実はね、この四隻の艦名は知っているんだ」

その言葉に会議室はざわめく。

「だから、恐らくどの程度の戦力かデータは出せると思う。また、それぞれに付喪神がいるという彼女の話が本当なら、この四艦は我々と似たような魔術で召喚されたとみるべきだな」

つまり、連中もフソウ連合の艦艇と同じかそれ以上の性能の艦船を保有しているという事になり、それは数でも質でも差がついてしまっているかもしれないという事だ。

その可能性に、その場にいた全員が難しい顔をして黙り込む。

そんな面子を見回しながら、その後も鍋島長官は話を続ける。

「だが、彼女の話では付喪神は四人のみであり、サネホーンの政治の中枢を担っているそうだ。もちろん、他にいる事も考えてみたが付喪神が政治に深く関わっている政治体制のサネホーンならば、もし他にいれば間違いなく政治に関わっているはずだ。しかし、その四人以外で政治に関わっている付喪神はいない。それに、儀式を行った巫女が亡くなって以降、長く儀式が行われなかったということもあり、当面は付喪神付きの艦船はこの四隻のみと考えて動いていいと思う。また、三島さんの話では、この儀式を行うにはかなりの準備と時間がかかり、簡単に出来る事ではないらしい。そんな事をフソウ連合が出来たのは、百年に続くマシナガ本島の魔術的、呪術的な霊脈の改造と長年蓄積してきたマナのおかげであり、そう言った条件のないサネホーンではそうそう簡単に付喪神のついている艦船やそれに準ずる艦船を簡単に増やす事は出来ないだろうという話だ。だから少しは安心していいと思う」

その話を聞き、やっとその場にいた者達の顔から険しさが薄れ、少しほっとしたものになる。

だが、油断は禁物だ。

一応、情報収集は密に行わなければならないか。

そうなるとリンダの紹介する人物との接触も急ぐ必要がある。

そう判断した鍋島長官は、諜報部の川見大佐に視線を向けた。

その視線を待っていましたとばかりに真正面で受け止め、ニタリと笑う川見大佐。

その頼りがいある様子に、鍋島長官はニタリと笑う。

「川見大佐、すぐにでも提供された情報にあったダミー会社の方に接触してくれ。その際は、リンダ女史と詳しく情報交換をして万全の態勢で頼むぞ」

「了解しました。直ぐに打ち合わせを行い、期待通り以上のものを報告できるよう善処します」

敬礼しそう答える川見大佐に鍋島長官は大きく頷いて見せた後は、今度は新見中将に視線を向ける。

「先行して送り出した艦隊は今どのあたりだ?」

「はっ。第一艦隊、第二艦隊とも問題なく進んでおります。明日には、キナリア列島を通過。二日後にはアルンカス王国に到着の予定です」

「順調だな。現地に着いたら、第二外洋艦隊の顔合わせや指揮統一などをすぐに済ませて備えてくれ。それと飛行部隊の派遣はどうなっている?」

「現在、軽空母大鷹、雲鷹の二隻が護衛と共に二個飛行大隊をアルンカス王国に輸送中です」

「そうか……。あとは連中がどう動くかだな……」

ともかく、時間との勝負だ。

サネホーンは、恐らく万全な準備を整えて動いたはずだ。

だからこそ、対応が遅れれば致命傷になりかねない。

その危機感は、その場にいた全員が持っていた。

だからこそ、誰もが表情を引き締める。

「各自最善を尽くせ。最初の一手でどう戦いに勝つか。恐らくそれで今後の流れは決まるぞ」

「「「はっ」」」

その言葉に、申し合わせたわけではなかったがその場にいた全員が立ち上がって敬礼する。

その士気の高さに鍋島長官は身震いし、立ち上がると返礼した。

彼らに報いる為に自分も最善を尽くそうという決心を心に秘めながら……。

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